竹内理緒

【お】


“おやすみ”と言える相手がいるのは、良い事だと思う。
だって“おやすみ”って言えるということは、寝る直前まで、誰かと一緒にいられるってコトでしょう?

メールの文末に。
手紙の結びに。

“おやすみなさい”と書く。

今は離れているけれど、遠い故郷の地で、これを読んでくれる人へ。
私は眠りに付く直前まで、貴方の事を想っている、という、あまりにもささやかな意思表示。

「リオ!珍しく手紙が来てるよ」
「わ、ありがとう!」

手紙を出す頻度は、明らかに私の方が多かった。
いそいそと開くと、いつもと変わらぬ素っ気ない文章。
何を期待している訳でもないんだけど、思わず苦笑してしまう。

でも、やがて最後の一文から目が離せなくなってしまった。
それは、たった一言。

――おやすみ。よい夢を。

願わくば、貴方と共にいられる夢を。



『おやすみ』
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