竹内理緒

【ち】


「ねぇ、亮子ちゃん!一緒にチョコレート作ろうよ!」

2月の寒空の下。
彼女は私の台詞に、ぱっと顔を赤くした。
この分かりやすさが、いっそ羨ましい。

「…で、これを流して固めればokだって」
「はわ~、さすがだね~」
「案外、簡単なもんだね」

とろとろのチョコレート。
甘くて苦い、特別なお菓子に、特別な意味を込めて。

「ところで理緒、何かやたら多くないかい?」
「え?だって、皆にもおすそ分けしたいし」
「おすそ分けって言うか…全部同じに見えるけど」

苦笑する彼女は、ストレートに本命がひとつだけ。

「亮子ちゃんの分もあるからね~」

だって私は、受け取って貰えれば充分で。
本命だと分かったら、優しいあの人はきっと困ってしまうから。
木を隠すには森の中。
沢山の“好き”の中に、本当の想いを隠して。



『ちょこれーと』
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