鳴海歩

【み】


「あんた、何でそんな風にゆるく編んでるんだ?」
「だって、きつく編んだらクセついちゃうじゃないですか」

目の前で手際よく編み直されていく三つ編みを見て、ふと疑問に思った。

「だったら最初から、そんな髪型にしなけりゃいいだろう」
「何言ってるんですか。ひよのちゃんのトレードマークなんですよ?」

なくなったら困るじゃないですか、と口を尖らせているうちに、いつも通りのゆるいおさげが完成した。

「急にどうしたんです?髪型変えて欲しいんですか?」
「それはない」
「即答ですね」

むぅ、と眉を寄せる様子が、やたら子どもっぽいのは、きっと無自覚なんだろう。
思わず緩みかけた頬を隠すために、わざとゆっくり喋る。

「そりゃ、あんたが“おさげ”じゃなくなったら、火澄があんたのこと呼べなくなって困るからな」
「あぁ、なるほど」
「何?俺がどうかしたん?」

タイミング良く、火澄が入ってきた。
にこにこと俺たちを交互に見てくる。

「ひみつ、だよ」
「ひみつ、です」

「なっ…ハモんなくてもえぇやんかー!」

火澄の叫びに、堪らず吹き出す。
そのタイミングまで同じで、何だかとても、平和なひととき。



『みつあみ』
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