アイズ・ラザフォード

【い】


「まったく、もしアイズとはぐれでもしたら僕、命が幾つあっても足りないよ!」

腰に手をやり、俺より幾分高い身長を誇示するように、胸を反らす。

「ちょっと聞いてるの?アイズ!」
「あぁ、ちゃんと聞いている」
「もぅ!無茶しないでよね?」

何てことはない。
ただ、敵の視線を彼から逸らそうとしただけだ。
なのに、当のカノンが飛び出してきて、敵を一掃してしまった。

「すまない」
「それは、何に対する謝罪なの?」
「俺が強くないから、心配させていることへの謝罪だ」
「アイズは強いよ?」

意外なお墨付きが出た。

「でも、君は優しいから。他人のコトより、自分の命が最優先だからね」
「…お前は、他人ではないだろう」

俺の呟きに、驚いた顔をした兄は、ひとつ息を吐いて笑った。

「うん。でも、アイズの方が最優先」

それが分かっているから、俺はお前が最優先なんだ。
俺の命など、お前の為なら、いくらでもくれてやる。



『いのち』
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