ミズシロ火澄

【ず】


「具合でも悪いんですか?」

急に話し掛けられて、条件反射で笑顔を貼り付けた。

「あぁ、おさげさん。うん、ちょっとだけ頭痛いねん」
「そうですか。火澄さんでも、体調壊したりするんですね」

お大事に、と全然心が込もってない口調で言う。

「社交辞令なら、いらんよ」
「なら、何も言うコトはありません」
「うわ。病人に対して、それはヒドすぎへん?」

力なく笑うと、彼女はふぅ、と大きな溜め息をついた。
何か、呆れられてる気がするんやけど。

思わず視線を逸らした瞬間、額にひやりとした感触。

「わ、何?」
「…ちょっと、熱いですよ?良いからとっとと帰って寝て下さい」

突き放すように言うと、あっさりと手を離した。

「鳴海さんには、言っといてあげますから」

歩の名前が出たとき、一瞬だけ声が柔らかくなる。
こんな事、気付かなければ良かったのに。

…この痛みは、頭じゃない。
今の一瞬だけは、確実に、胸の痛み。



『ずつう』
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