結崎ひよの

【の】


ノートに走り書きした、彼の名前。
経歴、趣味、嗜好、癖。
女性の好み。

全てはただのデータとして処理しているつもりだった。
いつもと変わらず、仕事として扱っているつもりだった。
それなのに。

生身の相手と接するのは、危険だ。
入り込んでしまう。

近付きすぎるのは、危険だ。
情が移ってしまう。

好意を持つのも、持たれるのも危険だ。
…終わらせたくなくなってしまう。

いつかは、終わりがくるのに。
終わらないことなど、この世にはひとつもないのに。

新しいノートを開く。
まっさらなページに、彼に関する記録を付ける。
情報でなく、想い出としての彼を。



『のーと』
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