結崎ひよの
【き】
決して目には見えないのに、いつの間にか、しっとりと濡れてしまう。
気付かないうちに降り積もる。
想いはまるで、霧雨のように。
「結構、降ってるぞ」
「あれ、鳴海さん?」
ひょい、と差しかけられた傘の持ち主を見て、驚いた。
ぼんやり歩いていたから、尚更である。
「あれ?じゃないだろう。あんた、自分が濡れてるって自覚、ちゃんとあるか?」
「え、そんなに降ってませんよね?」
「でも、それなりには降ってるぞ。ずっと傘もなしに歩いてたら、濡れるのは当たり前だろ」
「はぁ、それもそうですねぇ」
学校を出たときは、殆ど降っていないと思ったんだけど。
それだって実は、見えていなかっただけかもしれない。
鞄から取り出したハンカチで簡単に顔や制服の雫を払うと、自分が実は、かなり濡れていた事に気付く。
ふと、隣を歩く彼を見上げてみた。
「…何、笑ってるんだ?」
「ふふ、笑ってなんかいませんよ」
「笑ってるだろうが」
呆れた視線を寄越しながら、私が濡れないように、歩くペースを落としてくれる。
普段は頼んだって、傘になんて入れてくれないだろうに。
…って、頼んだことがないから、本当はわからないのだけど。
今度、わざと頼んでみようかな。
決して目には見えないのに、いつの間にか、しっとりと濡れてしまう。
気付かないうちに降り積もる。
想いはまるで、霧雨のように。
「結構、降ってるぞ」
「あれ、鳴海さん?」
ひょい、と差しかけられた傘の持ち主を見て、驚いた。
ぼんやり歩いていたから、尚更である。
「あれ?じゃないだろう。あんた、自分が濡れてるって自覚、ちゃんとあるか?」
「え、そんなに降ってませんよね?」
「でも、それなりには降ってるぞ。ずっと傘もなしに歩いてたら、濡れるのは当たり前だろ」
「はぁ、それもそうですねぇ」
学校を出たときは、殆ど降っていないと思ったんだけど。
それだって実は、見えていなかっただけかもしれない。
鞄から取り出したハンカチで簡単に顔や制服の雫を払うと、自分が実は、かなり濡れていた事に気付く。
ふと、隣を歩く彼を見上げてみた。
「…何、笑ってるんだ?」
「ふふ、笑ってなんかいませんよ」
「笑ってるだろうが」
呆れた視線を寄越しながら、私が濡れないように、歩くペースを落としてくれる。
普段は頼んだって、傘になんて入れてくれないだろうに。
…って、頼んだことがないから、本当はわからないのだけど。
今度、わざと頼んでみようかな。
『きりさめ』