結崎ひよの

【い】


「色鉛筆になるなら、何色が良いですか?」
「…何だ、その質問」
「何でも良いですから、何色にします?」

別に深い意味はなかった。
ただ、自己紹介の項目にあったのを見て、ふと聞いてみたくなっただけで。
けれど、そんな理由を言ったら、ちゃんと考えてもらえなくなりそうだったので、黙っていたのである。
彼は少し考えるように、目を泳がせてから言った。

「白」
「どうしてですか?」
「1番長生きできそうだから」

面倒臭そうに吐き捨てられた台詞が、一瞬やけに重く響く。
そんな空気を振り払うように、わざと明るめの声を出した。

「なら、私は赤か、肌色あたりですかね」
「赤か、肌色?」
「1番早く、短くなりません?」

にこ、と笑ってみせると、驚いたように見開いていた瞳が、やがて呆れたように細められる。
それが何だか、笑っているようにも見えて、そっと胸を撫でおろした。

「皆に必要とされて、どーんと使って、ぱっと短くなる。命短し、恋せよ乙女です」
「最後、ちょっと違わないか?」
「気にした方が負けですよ」

ふふ、と笑うと、彼も笑顔を見せる。

「あ。やっぱり、赤にします」
「何でだ?」
「だって、紅白で並んだら、縁起が良いじゃないですか」

正反対だからこそ、互いが必要。
きっと、相性が良いからでしょう?



『いろえんぴつ』
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