children's party

ぴんぽーん

タイミングよく響いたチャイムに、火澄の肩が跳ねた。

「火澄、頼む」
「あ、あぁ。了解~」

丸めたシーツを部屋の隅に落として、インターホンを確認しようとする火澄を、歩の声が遮る。

「多分もう、玄関だよ」
「…は?」

オートロックのマンションで、玄関まで上がってきているという事は、ココの鍵を持っているという事か。
だが、もう1人の同居人である歩の義姉は、未だ病院のベッドの中である。
と、いうことは。

「まさか、清隆が帰って来るん?」

可能性の高い人物の名を挙げると、歩は露骨に不快そうな顔をした。

「そら、ちゃうわな。…じゃあ、誰?」
「ごちゃごちゃ言ってないで、とっとと入れて下さいよ」

ふいに近くで聞こえた第3者の声に、火澄が慌てて振り向く。
歩は呆れ顔で、やっぱりあんたか、と零しただけだった。

「やっぱりって事は、待っててくれてたんですか?」
「その前向き思考に感心するよ」
「あら、鳴海さんが後ろ向き過ぎるんですよ」

ふふ、と強気な笑みを見せる侵入者の隣から、静かに移動した火澄がカウンター越しに、歩に耳打ちする。

「なぁ、おさげさんて、ココの合鍵持っとんの?」
「知らないぞ、そんなこと」
「歩があげたんやなかったら、何で入って来てんねや」

むぅ、と顔をしかめる歩を、ひよのが目敏く指摘した。

「鳴海さん、何イヤそうな顔してるんですか」
「あんたが不法侵入してるからだろっ」
「何を今更」

あっさりと自分の犯罪行為を認めたひよのを、男2人がぽかん、と見つめる。
きょと、と首を傾げた少女は、2人に構うことなく、自分の鞄を探り始めた。

だが歩は、すぐに我に返ると、また台所に向き直る。

「あ、火澄さん」
「え、何?」
「ちょっとかがんで下さい」

いつの間にか至近距離に立っていた少女に覗き込まれて、火澄が慌てて頭を下げた。
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