7月の約束

「年に1度の再会、ねぇ」

先程の自分の台詞を繰り返す。
以前、香介と半年ほど離れただけで、随分と変化を感じてしまったものだが。
あれを毎度味わうというのは、結構こたえるんじゃないだろうか。
…我ながら、余計な心配だとは思うけれど。

「運命って感じだな」

冗談めかした口調で、香介が言う。
はぁ?と呆れた声が出たが、彼と視線が合う事はなかった。

「1年に1度しか会えない運命じゃね」
「でも、1年に1度は必ず会えるわけだろ?」

例え、残りの364日は会えなかったとしても。

「それはそれで、良い気もするよな」

約束の夜だけは、確実に会えると保障されている。
それをもう、何十年、何百年と繰り返している2人。
きっと彼らにとって、その1夜だけが、確かな1日なのだろう。
ならば、365年かけて、ようやく1年分。
七夕の風習が何年前からあるのかは知らないが、まだまだ足りないハズである。

「…私は嫌だな」

ぽつり、と亮子が呟いた。

「大体、364日も離れてる間に、何してるか分かったもんじゃないんだろ?」
「いや、それはマジメに働いてるんじゃないのか?」

ムスッとしながら吐き捨てる様子に、香介が思わず苦笑する。

「そりゃそうだけど。働くったって、具体的にどんなコトしてるか、とか気になるじゃないか」
「…そーか?」

ひたすら機を織る姫と、牛飼いの青年ではなかったか。

「今なら、電話も手紙も、メールもあるのにな」

すると亮子が、ふ、と吹き出した。

「あぁ、TV電話だってある時代だよ」
「文明の利器に感謝ってか」
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