彼方なる星合い

「確かに、火澄の言うことにも一理あるな」
「わ、何ですか鳴海さんまで!そうやって私を除け者にしたいんですか!?」
「誰もそんな事、言ってないだろ」

うざったそうな表情を作って、歩が視線を外す。
何気ない動作で、TVの電源を入れた。
どことなく軽い音楽とともに、キャスターの声が喋り出す。

「だから今年も、雲で隠すんじゃないのか?」
「…え?」
「雲?」

流れてきた週間予報によれば、7月7日は全国的に曇りか雨。
『今年の七夕も、残念ながら天の川は見えないようです―――』

「神様の力、ってヤツですか?」

頬が緩むのを懸命に堪えて、出来るだけ平坦な声を出した。
それに気付いたのか、歩はひょい、と肩を上下させただけで視線をTVに向けたままである。

「天の神様は結構、粋なコトするんだよ」

冗談めかした口調で一言。
地上の“神様”に指名された少年は、そう言うと、ふわりと微笑んだ。

「地上の神様は、随分ロマンチストやな」

からかうように笑う火澄を小突いて、窓の外に目をやる。
とうとう我慢できなくなって吹き出したひよのを見て、額を押さえていた火澄も満足気に笑った。
窓の向こうに広がる空は、梅雨明け前だというのが嘘のように明るく、晴れ渡っている。


 ≪fin.≫
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