CANDY DAY

ひよのが箱をしまったのに気付いて、火澄がきょとん、とする。

「あれ、おさげさん開けへんの?」
「食べ物でしたら、こんな所で歩きながらは開けませんよ。部室ででも、ゆっくり開けさせて頂きます」

当然、という顔で彼女が言うと、火澄はちぇ、と舌を見せた。

「なーんや。開けてびっくりした顔見るの、楽しみにしとったのに」
「それは残念でしたね」
「うー、俺も今日の昼は、新聞部にお邪魔しよかなぁ」
「それ、ホントに邪魔です」
「うわ、ヒドいで、おさげさん!言葉の暴力や!」

やっと会話の外に出られた歩は、ぼんやりと2人の背後から彼らのやりとりを眺めていた。
やがて、何気なくぽつり、と呟く。

「あんた達、割と仲良いんだな」

ただ、思ったことが口から出ただけで、深い意味は全くなかったのだが、前方の2人は同時に勢いよく振り向いた。

「わ、歩、ほんま!?」
「な、鳴海さん…っ、何てことを!?良いんですか、良いんですかそれで!!」

ぱっと花が咲いた火澄と、さぁっと青ざめたひよの。
わかりやすく対称的で、歩は思わず吹き出した。

「わわ、笑うなんてっ笑い事じゃありませんよ鳴海さんっ!?」
「うわー、じゃ、これをきっかけに仲良ぅしよな、おさげさんっ」
「あぁっ火澄さんは、ちょっと黙ってて下さいーっ」

例えば、磁石の同じ極同士なら、いつでも反発し合っている。
小学校の理科でやる磁力実験を見て、いつでもとは忙しいな、と思っていたけれど。
案外、こういうモノなのかもしれない。

道理で、自分の周りはいつだって騒がしい訳だ。
歩と火澄が同じ極で、火澄とひよのも同じ極なら、3人の向きが揃うハズなのだから。

そこまで考えて、でもこの2人と同じ極だというのも何だかな、と気付いた歩は、妙な考えを振り払うように歩く速度を上げた。

「あ、おいて行かないで下さいよ鳴海さんっ!」
「あんたは名前を連呼するなっ」
「待ってーな、歩っ!」
「…お前も声がでかいぞ、火澄」

振り向くと、へらっと笑う2人と目が合う。
…絶対に、確信犯だった。
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