CANDY DAY
「あ、そしたら忘れんうちに、渡しとこ」
ふいに火澄が、ごそごそと鞄を探って、真っ白な箱を取り出した。
それをひよのの前に、ずい、と差し出す。
「えーっと、こういう時って、何て言って渡すんやっけ?」
「さぁ。別に何も言わなくて良いんじゃないか?」
「えー。何か言いたいやん」
むぅ、と口を尖らせるが結局、何も思い付かなかったらしい。
誤魔化すように笑うと、ひよのが訝しげな顔をした。
「何なんです?一体」
「これ、おさげさんにホワイトデーのお返し。俺と歩からな」
「鳴海さんと…火澄さんから?」
ホワイトデー、という言葉を聞いて一瞬喜んだが、続く2人から、という言葉に首をかしげる。
バレンタインデーにチョコを渡したのは、歩に対してだけだったハズだが。
「こないだ、一緒に食べてん」
「…私が差し上げたの、先月なんですけど」
「うん。でも残ってたんやなー。あ、めっちゃ美味しかったで」
「それはどーも」
ギッとキツイ視線を送ると、火澄の背後で、歩が肩をすくめた。
「で、2人で食べたから、2人からのお返し」
「…なるほど。そういうコトなら、ありがたく頂きますね」
ようやく箱を受け取って貰えて、火澄が嬉しそうに笑う。
素直な笑顔が出来る人だな、と思いながら、シンプルな箱を眺めた。
「これ、食べ物ですか?」
「うん。今日のおやつにでもして」
「一応、日持ちもするけどな」
さらっと言った歩の口調に、おや、と思う。
「…もしかして、お2人で作ったんですか?」
「そうやねん!自信作やで!」
「お前は粉混ぜてただけだろ」
「何でや!他にも色々したやんけ!」
あれを準備したし、これは俺が全部やったし…と指を折る仕種が、小さな子どものようだった。
ひとつ息を吐いた歩が、わかったよ、と面倒臭そうに言うと満足気に頷く。
いつの間にか学校に近付き、周りを歩く生徒が増えてきた事に気付いて、ひよのは箱を開けるのを諦め、鞄にそっとしまった。
ふいに火澄が、ごそごそと鞄を探って、真っ白な箱を取り出した。
それをひよのの前に、ずい、と差し出す。
「えーっと、こういう時って、何て言って渡すんやっけ?」
「さぁ。別に何も言わなくて良いんじゃないか?」
「えー。何か言いたいやん」
むぅ、と口を尖らせるが結局、何も思い付かなかったらしい。
誤魔化すように笑うと、ひよのが訝しげな顔をした。
「何なんです?一体」
「これ、おさげさんにホワイトデーのお返し。俺と歩からな」
「鳴海さんと…火澄さんから?」
ホワイトデー、という言葉を聞いて一瞬喜んだが、続く2人から、という言葉に首をかしげる。
バレンタインデーにチョコを渡したのは、歩に対してだけだったハズだが。
「こないだ、一緒に食べてん」
「…私が差し上げたの、先月なんですけど」
「うん。でも残ってたんやなー。あ、めっちゃ美味しかったで」
「それはどーも」
ギッとキツイ視線を送ると、火澄の背後で、歩が肩をすくめた。
「で、2人で食べたから、2人からのお返し」
「…なるほど。そういうコトなら、ありがたく頂きますね」
ようやく箱を受け取って貰えて、火澄が嬉しそうに笑う。
素直な笑顔が出来る人だな、と思いながら、シンプルな箱を眺めた。
「これ、食べ物ですか?」
「うん。今日のおやつにでもして」
「一応、日持ちもするけどな」
さらっと言った歩の口調に、おや、と思う。
「…もしかして、お2人で作ったんですか?」
「そうやねん!自信作やで!」
「お前は粉混ぜてただけだろ」
「何でや!他にも色々したやんけ!」
あれを準備したし、これは俺が全部やったし…と指を折る仕種が、小さな子どものようだった。
ひとつ息を吐いた歩が、わかったよ、と面倒臭そうに言うと満足気に頷く。
いつの間にか学校に近付き、周りを歩く生徒が増えてきた事に気付いて、ひよのは箱を開けるのを諦め、鞄にそっとしまった。