CANDY DAY
「おっさげさーん!おっはよーう!!」
「おはようございます…毎朝、元気ですね」
朝からテンションの高い火澄に呼ばれ、おさげ髪の少女は、ややぐったりした視線を送る。
機嫌がいいのは良い事だが、今日は特別、声が大きいようだった。
「なぁ、今日は何の日か覚えとる?」
「3月14日、聖なるホワイトデーです。もちろん忘れてませんよね、鳴海さん?」
仔犬のようにまとわり付いてくる火澄を無視して、ひよのは背後を振り返る。
急に名前を呼ばれた歩は、話を聞いていなかったらしく、きょとん、とした視線を返してきた。
「あ、何の話だ?」
「ホワイトデーですよ、ホ、ワ、イ、ト、デー!1ヶ月前、心の込もったチョコレートを差し上げたでしょう?そのお返しをする日ですっ」
「そんなもん、貰ったっけか」
「ひゃっ、な、何て事を…っ!?乙女の気持ちを踏みにじる気ですね鳴海さんっ!!」
道の真ん中で、くるり、と1回転すると、芝居がかった動作で泣き崩れて見せる。
しかし、歩は足を止めずに、素知らぬ顔で通り過ぎようとした。
もちろん、そんな事をひよのがさせるハズもなく。
「うわ、ズボンを掴むな!」
「他人の振りをしないで下さいよっ」
「あんたは真っ赤な他人だろうが」
「何言ってるんですか!人間、ご先祖様を辿ってみれば、どこかで繋がってるに決まってるんです!人類皆兄弟ですっ!!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ2人を、大きく避けるように歩いていく通行人1人1人に、火澄が苦笑しながら会釈する。
この恥ずかしさは保護者の感覚だろうか、とふいによぎった考えに、顔が緩んで仕方なかった。
「あー、はいはい。歩とおさげさんが姉弟でもイトコでもなんでもえーやんか」
「さすがに、そこまで近くはありませんよ」
「だから、そこまでも何も、あんたとは何の繋がりもない!」
これでは堂々巡りだ。
このままだと、永遠に学校に辿り着けない。
火澄が、わざとらしく歩の腕時計を確認すると、ひよのも顔を寄せてきた。
頬に柔らかい髪の毛が触れて、慌てて身体を離す。
「わ、早く行かないと、遅刻しちゃうじゃないですか!」
「そもそも、あんたがこんなトコで小芝居始めるからだろうが」
「責任転嫁ですか、大人気ない」
「あんたにだけは言われたくないな」
「もぅえーから、はよ行こうな。俺、先行くで?」
ひょい、と身軽に立ち上がると、歩とひよのも後に続く。
口では言ってみたものの、本気で2人を置いていくつもりなど全くなかった火澄は、そっと安堵の笑みを零した。
「おはようございます…毎朝、元気ですね」
朝からテンションの高い火澄に呼ばれ、おさげ髪の少女は、ややぐったりした視線を送る。
機嫌がいいのは良い事だが、今日は特別、声が大きいようだった。
「なぁ、今日は何の日か覚えとる?」
「3月14日、聖なるホワイトデーです。もちろん忘れてませんよね、鳴海さん?」
仔犬のようにまとわり付いてくる火澄を無視して、ひよのは背後を振り返る。
急に名前を呼ばれた歩は、話を聞いていなかったらしく、きょとん、とした視線を返してきた。
「あ、何の話だ?」
「ホワイトデーですよ、ホ、ワ、イ、ト、デー!1ヶ月前、心の込もったチョコレートを差し上げたでしょう?そのお返しをする日ですっ」
「そんなもん、貰ったっけか」
「ひゃっ、な、何て事を…っ!?乙女の気持ちを踏みにじる気ですね鳴海さんっ!!」
道の真ん中で、くるり、と1回転すると、芝居がかった動作で泣き崩れて見せる。
しかし、歩は足を止めずに、素知らぬ顔で通り過ぎようとした。
もちろん、そんな事をひよのがさせるハズもなく。
「うわ、ズボンを掴むな!」
「他人の振りをしないで下さいよっ」
「あんたは真っ赤な他人だろうが」
「何言ってるんですか!人間、ご先祖様を辿ってみれば、どこかで繋がってるに決まってるんです!人類皆兄弟ですっ!!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ2人を、大きく避けるように歩いていく通行人1人1人に、火澄が苦笑しながら会釈する。
この恥ずかしさは保護者の感覚だろうか、とふいによぎった考えに、顔が緩んで仕方なかった。
「あー、はいはい。歩とおさげさんが姉弟でもイトコでもなんでもえーやんか」
「さすがに、そこまで近くはありませんよ」
「だから、そこまでも何も、あんたとは何の繋がりもない!」
これでは堂々巡りだ。
このままだと、永遠に学校に辿り着けない。
火澄が、わざとらしく歩の腕時計を確認すると、ひよのも顔を寄せてきた。
頬に柔らかい髪の毛が触れて、慌てて身体を離す。
「わ、早く行かないと、遅刻しちゃうじゃないですか!」
「そもそも、あんたがこんなトコで小芝居始めるからだろうが」
「責任転嫁ですか、大人気ない」
「あんたにだけは言われたくないな」
「もぅえーから、はよ行こうな。俺、先行くで?」
ひょい、と身軽に立ち上がると、歩とひよのも後に続く。
口では言ってみたものの、本気で2人を置いていくつもりなど全くなかった火澄は、そっと安堵の笑みを零した。