かくれんぼ

「授業が終わって、ココに来たら鍵が開いてるのに、あんたがいなくて」

放課後は私が探しに行かないと、滅多に真っ直ぐ来てくれないくせに。

「何気なく覗いたら、あんたが寝てた」
「そんなすぐですか!?」
「…悪いのか?」

それでは、全然隠れられていなかった訳だ。
到底、願いなど叶うハズもない。

…もともと、叶えようだなんて、思っていなかったのだけど。

「おい、もう帰るぞ。いい加減、夕飯の支度しないと」
「あ、はい。私も帰ります」

でも、これも良いかな、と思う。
素っ気ない態度を取るクセに、迷うコトなく見付けてくれるなら。


―――この時間(しあわせ)が少しでも長くありますように。


真っ赤に染まる部屋で、私を見付けてくれた人を想う。
溜め息をついて、上着を脱ぐ様子が目に浮かんだ。


―――隣を歩く人に、ひとつでも多くの幸せを。


叶えてくれるのなら、神サマでも何でも良かった。



 ≪fin.≫
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