かくれんぼ

陽が暮れるまで隠れていられれば願いが叶う、なんて。
嘘くさい話を聞いてしまった。
まさか信じている訳もないのだが。
それでも、太陽が西に傾くのを、ぼんやりと眺めていたら、ほんの少しだけ期待してしまう自分に驚く。

…こんなところまできて、私はまだ夢を見ようというのだろうか。

少し開いた窓から、夕方の優しい風が前髪を揺らす。
その風に、ひやりとするものを感じて、静かに窓を閉じた。


ふと気付いたら、すっかり陽が落ちていた。
ソファーの裏側で、一瞬自分が何故こんなところに丸くなっているのか分からなくて、すぐに隠れていたんだ、と思い出す。
彼は結局、部室に来ないで帰ったのだろうか。
暗い部屋に1人、眠り込んでいた自分を思うと、何だか馬鹿馬鹿しくなってくる。
ふぅ、と息をひとつ。

勢いをつけて立ち上がろうとして、ふいに自分に何か掛けてある事に気付いた。
…そんな準備はしていなかったハズだが。

「やっとお目覚めか?」
「ひゃっ!?」

急に頭上から声が降ってきた。
立ち上がりかけた姿勢から、思わず尻餅をつく。
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