Halloween Night

「大体、おさげ髪のバンパイアなんているかよ」
「あら、いるかもしれませんよ?」
「あーはいはい、そうかもな」
「嫌ですね、鳴海さん。そうやって、難癖ばっかりつけて」
「うるさい。俺は夕飯の支度で忙しいんだ」
「そういえば、キッチンから出てきてましたっけ」

少女を適当にあしらって、キッチンに戻る。
夕飯の支度は、あと少しだった。
オーブンから、ちょうど良い匂いがし始めている。



「良い匂いですね~。今日の献立は何です?」
「あんたには関係ないだろ」

ひょい、とキッチンを覗き込む気配を感じて、何気なく振り向く。
そこでは、ひよのがいつの間にか髪を下ろしていた。

「…あんた、髪」
「鳴海さんが文句言うから、解いちゃいましたよ。これで良いですよね?」
「良いも何も…」

思わず言葉を失う歩を、気にも留めずに少女が笑う。



「trick or treat!お菓子くれなきゃ、悪戯しちゃいますよ?」



「…勘弁してくれ」

呟いた歩の真意は、彼女に届けるつもりもないけれど。
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