trick and treat
「ただいまー」
どさ、と派手な音を立てて、亮子が帰宅した。
相変わらず、毎日練習で帰りが遅い。
その割に、けろっとした顔で帰ってくるのだから、彼女の体力は信じられないものがある。
「trick or treat?」
「…は?」
おかえりの代わりに、今日だけの特別な挨拶で迎えた香介を見て、亮子は眉をひそめた。
「香介…何だい、その頭」
「理緒の置き土産。忘れたのか?」
「いや、覚えてるけど。そうじゃなくて」
何のつもりだい、と睨みつける先には、噂のネコ耳ヘアバンド。
この家にある仮装グッズなんて、コレくらいしかなかったのである。
「確か、にくきゅう手袋もあったハズだよなぁ。一緒に置いてなかったぞ、アイツ」
「そういう問題じゃないだろ」
心なしか、疲れの増したような顔をしつつ、ツッコんでくる。
香介だって、相当恥ずかしいのだが。
「で、どっちだよ」
「何が?」
「だーかーらぁ。とりっく、おあ、とりーと?」
わざとらしく、はっきりと日本語で発音してやる。
それでも、きょとん、としている亮子に、日本語訳を付け加えてみる。
「お菓子くれなきゃ、悪戯するぞ?ってな」
「…は?」
最初に英語で言ったときと、全く同じ反応が返ってきた。
どさ、と派手な音を立てて、亮子が帰宅した。
相変わらず、毎日練習で帰りが遅い。
その割に、けろっとした顔で帰ってくるのだから、彼女の体力は信じられないものがある。
「trick or treat?」
「…は?」
おかえりの代わりに、今日だけの特別な挨拶で迎えた香介を見て、亮子は眉をひそめた。
「香介…何だい、その頭」
「理緒の置き土産。忘れたのか?」
「いや、覚えてるけど。そうじゃなくて」
何のつもりだい、と睨みつける先には、噂のネコ耳ヘアバンド。
この家にある仮装グッズなんて、コレくらいしかなかったのである。
「確か、にくきゅう手袋もあったハズだよなぁ。一緒に置いてなかったぞ、アイツ」
「そういう問題じゃないだろ」
心なしか、疲れの増したような顔をしつつ、ツッコんでくる。
香介だって、相当恥ずかしいのだが。
「で、どっちだよ」
「何が?」
「だーかーらぁ。とりっく、おあ、とりーと?」
わざとらしく、はっきりと日本語で発音してやる。
それでも、きょとん、としている亮子に、日本語訳を付け加えてみる。
「お菓子くれなきゃ、悪戯するぞ?ってな」
「…は?」
最初に英語で言ったときと、全く同じ反応が返ってきた。