NON DATA
―――がたがたっ
「!!…大丈夫ですか、鳴海さん!?」
「び、びっくりした…」
「それはこっちの台詞ですよっ」
落ちかけた椅子から、必死の生還。
我ながら派手なリアクションをしたものだと、一瞬真っ白になった頭で、微かに悔いる。
「何です?鳴海さんてば、やって下さるんですか?」
悪戯っぽく笑いながら、上目遣いのひよのが聞く。
冗談の空気を感じて、歩も一応、聞いてみる。
「やって欲しいのか?」
………
………
………
「あの」
真剣に考え込んでいたひよのが、顔をあげた。
「想像できないんで、やってもらっても良いですか?」
「!!…ふざけんなっ」
思わず立ち上がった歩を見て、堪らずひよのが吹き出した。
「あははっ、冗談に決まってるじゃないですかー。嫌ですよ、そんな鳴海さんは」
あまりに大笑いされては、面白くない。
とっとと話題を変えようとして歩は、ふと気が付いた。
「そういえば、あんたはいつなんだ?」
「ふふっ、何がです?」
「誕生日」
さりげなく聞かれた言葉。
別に隠す事でもないのだが、脊髄反射で言葉が滑り出た。
「企業秘密です」
「あっそ」
大して興味もないように、それ以上聞いてこない歩を見て、一瞬、顔が強張る。
幸い、彼は気付いていないようだが。
「むしろトップシークレット!国家機密です!!」
「なんだそれ」
呆れたようないつもの口調に安堵して、顔が自然と綻ぶ。
「でも、お祝いは年中無休で受付中ですから!」
ぱっ、と花が咲いたように、少女が笑う。
「何なら、鳴海さんが決めて下さっても構いませんよ」
「…何をだ?」
「だから、誕生日です」
誕生日というのは、生誕記念日なんだから、他人が勝手に決められるものではないだろう。
だが、歩はその言葉を飲み込んだ。
決められるなら、決めてやろう。
ふと、そんな思いがよぎったのだ。
「おめでとう」
「何がです?」
「誕生日、今日にしよう」
「……はい!?なんで…っ」
『晴れたから』
だって、あんたには明るい日差しが似合うだろう?
窓の外。
雲の切れ間からは、太陽の光が細く、白く輝いていた。
≪fin.≫