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NON DATA

「ねぇ、鳴海さん」

ここは月臣学園新聞部室。
外は冷たい雨。
鳴海歩は、夕方には晴れるという天気予報を信じて、部員でもない部室で、放課後の時間を潰していた。

「鳴海さん?」

いや、理由などなくとも、ここには連れて来られるのだが。

「鳴海さんてば」

この、おさげ髪の部長(一応年上)に。

「ちょっと聞いてるんですか!なーるーみーさーー「聞こえてるよ。耳元で大声出すな、うるさい」


ばっさり切って捨てる歩の言い方に、部屋の主人であるひよのが、黙っている筈もない。
お決まりの説教を始めたひよのを見て、追い出されるにはまだ早いと考えた歩は、彼女を宥めにかかった。

といっても、会話をする意思を見せるだけなのだが。

「なんだ。人の名前連呼してたって事は、何か用だったんじゃないのか?」

すると、ひよのの猛攻撃がぴたり、と止まった。

「…あ、あの」
珍しく、歯切れが悪い。

「鳴海さんは明日、何かされるんですか?」



「…ナニカ?」

はぐらかそうとしたが、真剣な表情のひよのを見て、思い留まる。きっとこの娘の事だから、全てを知った上で聞いているのだ。

「とりあえず、夕飯のリクエストでも叶えてやるかな」
できるだけ、素っ気なく言ってみる。
「ねーさんの誕生日だし」

「それだけ、ですか?」

ひよのの眼差しは歩を捕らえたままだ。
大きな瞳でじっと見つめられると、さすがに居心地が良いものではない。
歩はさりげなく、視線をずらした。

「だけって…他に何しろって言うんだ?」
「そりゃあ、誕生日ついでに告白してみたりとか、プレゼントは僕だよ☆とか言っちゃって、おねーさんを押し倒してみるとか…ひゃあぁっ鳴海さんてば、何て事をーっ!?」
一人芝居をしながら、妄想で話が進んでいく。
歩にしてみれば、聞いているだけで体力を削られる気がした。

「あんたが勝手に言ってるだけだろ。そんな恥ずかしい事、誰がするか!」
「あら、世の恋人たちは、結構やってるかもしれませんよ?」

さらり、と言ってのける。
この少女の言う事は、現実味が高そうで恐い。

「なら、あんたもやるのか?」
「やりませんよ、そんな事」

ばっさり。

この娘は、たまにひどくドライだと思うのは、自分だけなんだろうか。
はぁ、と息をついた歩を横目に、ひよのはぼそり、と呟いた。



「でも、やって貰えたら楽しいかもしれませんねー」


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