小ネタまとめ
ラピスラズリの天泣(復活山本夢)
2024/08/10 23:45復活山本夢
ネタで書いていたものを少しだけ真面目に文にしてみました。
翻訳家な彼女のお話です。
「あれ、雨。」
ベランダで煙草を吸っていたら、急に雨が降りだした。
慌てて洗濯物を取り込みながら、不思議に思って空を見上げる。
「晴れてんのに、雨が降ってきた。」
こんな天気を、なんて呼ぶのだったか。
……狐の嫁入り、だったかな。
天気の名前に動物が出てくるなんて、日本人の発想は豊かだ。
日に照らされて、雨粒の一つ一つが宝石のように輝きを放つ。
宮沢賢治の小説に、十力の金剛石、なんて話があったっけ。
あの話のなかでは、森に降る露が金剛石……ダイヤに例えられていたけれども、今の景色はまるで空一面にダイヤが散りばめられているようだった。
「こんな日には、まるで何か夢のようなことが……って、ヤニ吸いながら言うことじゃねーか。」
洗濯物を取り込み終わり、煙草をふかしながら、のんびりと空を見上げた。
仕事は一段落着いた。
後は特にやることもないから、のんびりと雨でも眺めながら、酒を飲もうか。
丁度良い酒をもらったんだったな。
私はキッチンに行くために立ち上がった。
だがその瞬間、凄まじい立ち眩みに襲われ、私は床の上に崩れ落ちた。
目の前が見えない。
景色が歪み、鮮やかな原色が点滅する。
徐々に、視界の端から黒に侵され、私は意識を失った。
「ん……、今、のは?」
意識が戻ったとき、窓からは明るい光が射し込んできていた。
朝?
……倒れたまま朝になってたっての?
慌てて起き上がる。
さっき感じた目眩が嘘のように体は軽くて、駆け出した私は勢い余って階段で転けそうになる。
その時になってようやく気が付いた。
「……あれ?」
私は、いつの間にスカートを履いていたんだろう。
しかもスカートはスカートでも、プリーツのついていて、灰色のカッチリとした……高校生の制服みたいなスカート。
さっきまではスウェットを着ていたはずなのに。
良く見れば、よれよれのTシャツも、糊の掛かった真っ白なブラウスに変わっていた。
「え、なんで……?」
宙に問えども、答える者はなく(独り暮らしだからね)私はとにかく自分の姿を見なければ、と、姿見を探そうとした。
だが、その行動は突然掛けられた声に中断させられる。
「ちょっと悠ー?
あんたどたばたと五月蝿いわよー!」
「なっ!だれ!?」
「あんたね、実の親に誰はないでしょ、誰は!」
私に話し掛けてきたのは、『顔も見たことがない女の人』で、しかし彼女の発した『悠』という名前は、確かに私の名前だった。
知らない人、なのに、彼女は自身を、私の親だと言う。
やっと見付けた姿見に全身を写す。
そこにいたのは25歳の私ではなく、中学生くらいの私だった。
「悠ー、遅刻するわよー!」
「はーい。」
階下から怒鳴る、『母』の声に、私は無意識に返事を返す。
一体これは、どういうこと?
訳がわからない。
でも体は勝手に動いて、勝手に階下に降りて、身支度をし、食事を取り、気付けば学校への通学路を、歩いていた。
はい!と言うわけでネタに書いてた山本落ち復活夢です。
不幸とはいつも突然に、理由もなくやって来るんです。
別に彼女がトリップした理由が考え付かなかったからたまたまで良いかなんて思ってないですよ。
天泣、てんきゅう、と読みますが、これは狐の嫁入り、つまりお天気雨の別称のことなんだそうです。
天が泣く、ってお洒落な言い回しですね。
日本語のこんなところが好きです。
翻訳家な彼女のお話です。
「あれ、雨。」
ベランダで煙草を吸っていたら、急に雨が降りだした。
慌てて洗濯物を取り込みながら、不思議に思って空を見上げる。
「晴れてんのに、雨が降ってきた。」
こんな天気を、なんて呼ぶのだったか。
……狐の嫁入り、だったかな。
天気の名前に動物が出てくるなんて、日本人の発想は豊かだ。
日に照らされて、雨粒の一つ一つが宝石のように輝きを放つ。
宮沢賢治の小説に、十力の金剛石、なんて話があったっけ。
あの話のなかでは、森に降る露が金剛石……ダイヤに例えられていたけれども、今の景色はまるで空一面にダイヤが散りばめられているようだった。
「こんな日には、まるで何か夢のようなことが……って、ヤニ吸いながら言うことじゃねーか。」
洗濯物を取り込み終わり、煙草をふかしながら、のんびりと空を見上げた。
仕事は一段落着いた。
後は特にやることもないから、のんびりと雨でも眺めながら、酒を飲もうか。
丁度良い酒をもらったんだったな。
私はキッチンに行くために立ち上がった。
だがその瞬間、凄まじい立ち眩みに襲われ、私は床の上に崩れ落ちた。
目の前が見えない。
景色が歪み、鮮やかな原色が点滅する。
徐々に、視界の端から黒に侵され、私は意識を失った。
「ん……、今、のは?」
意識が戻ったとき、窓からは明るい光が射し込んできていた。
朝?
……倒れたまま朝になってたっての?
慌てて起き上がる。
さっき感じた目眩が嘘のように体は軽くて、駆け出した私は勢い余って階段で転けそうになる。
その時になってようやく気が付いた。
「……あれ?」
私は、いつの間にスカートを履いていたんだろう。
しかもスカートはスカートでも、プリーツのついていて、灰色のカッチリとした……高校生の制服みたいなスカート。
さっきまではスウェットを着ていたはずなのに。
良く見れば、よれよれのTシャツも、糊の掛かった真っ白なブラウスに変わっていた。
「え、なんで……?」
宙に問えども、答える者はなく(独り暮らしだからね)私はとにかく自分の姿を見なければ、と、姿見を探そうとした。
だが、その行動は突然掛けられた声に中断させられる。
「ちょっと悠ー?
あんたどたばたと五月蝿いわよー!」
「なっ!だれ!?」
「あんたね、実の親に誰はないでしょ、誰は!」
私に話し掛けてきたのは、『顔も見たことがない女の人』で、しかし彼女の発した『悠』という名前は、確かに私の名前だった。
知らない人、なのに、彼女は自身を、私の親だと言う。
やっと見付けた姿見に全身を写す。
そこにいたのは25歳の私ではなく、中学生くらいの私だった。
「悠ー、遅刻するわよー!」
「はーい。」
階下から怒鳴る、『母』の声に、私は無意識に返事を返す。
一体これは、どういうこと?
訳がわからない。
でも体は勝手に動いて、勝手に階下に降りて、身支度をし、食事を取り、気付けば学校への通学路を、歩いていた。
はい!と言うわけでネタに書いてた山本落ち復活夢です。
不幸とはいつも突然に、理由もなくやって来るんです。
別に彼女がトリップした理由が考え付かなかったからたまたまで良いかなんて思ってないですよ。
天泣、てんきゅう、と読みますが、これは狐の嫁入り、つまりお天気雨の別称のことなんだそうです。
天が泣く、ってお洒落な言い回しですね。
日本語のこんなところが好きです。