小ネタまとめ

群青×泥棒⑦

2024/08/21 22:10
群青の鮫派生ネタ
【前回までのあらすじ】

ゴエモン は ギンパツ剣士 を 拾った !

どうする ?
→持って帰る
 放置する
 トドメを刺す
 人質にする
 美味しくいただく


どうする五ェ門、どうなるスクアーロ。
そしてXANXUSの夜食の行く末は……。




【↓↓↓ここから本編↓↓↓】




「……どういう、ことなのだ。」

呆然と呟く五ェ門の腕の中にいるのは、荒く息を吐き、腹から血を垂れ流すスペルビ・スクアーロである。
二人の勝負が決した、そう思った瞬間の、突然の闖入者。
一体何者なのか……そんな疑問よりもまず五ェ門の頭を過ったのは、目の前で倒れる男をどうするのか、という問題だった。
怪我の様子を見るに、弾は貫通しているようであるが、当たった場所が悪い。
見た目はそれほど血が出ているようには見えないが、それはつまり中に溜まっている可能性があるということでもある。
このまま放り出して、とっとと逃げ去ることは容易い。
容易いが……しかし、13代目石川五ェ門ともあろうものが、真剣勝負に横槍を入れられたまま、しかも瀕死の相手を置いて逃げ出すなど、矜持に反する。

「……仕方がない。」

ルパンや次元ならば、引き際は心得ているだろう。
こんなところで、殺られることはない……はず。
何より相手には殺す気がないようだった。
まあ、そこは仲間と、目の前の男を信じるより他ないわけだが、今、目の前にいる重傷者と、信じる仲間が殺されるかもしれない僅かな可能性とを比べれば、天秤にかけるまでもなく、答えは出た。
服の上から布を当て、服の袖を裂いて作った紐で手早く縛る。

「ぅぐ……なに、を……」
「お主を安全なところへ連れていく。
暫しの間、大人しくしていろ。」
「ざけ……んな……」

僅かに示す抵抗も、拍子抜けするほどに力なく、スクアーロを担ぎ上げた五ェ門は予想よりも軽い体に眉を動かす。
羽のように軽い、何てことはないが、そんなことは全くないのだが、しかし体型と比べると明らかに体重が足りてない。
戦っている最中に、大量に投げつけられた刃物の重さを合わせれば、成人男性としては十分な重さに足りるのだろうが、ほとんどを投げきってしまったのであろう今のスクアーロは、心配になるほど軽かった。

「お主、ちゃんと飯を食っているのか?」
「……」
「……落ちたか。」

背中に掛かる重さが増す。
ついに気を失ったらしい。
急がなければまずいかもしれない。
慎重に、しかし出せる限りのスピードを出して、五ェ門は地下通路を通り、夜のイタリアへと踏み出したのだった。


 * * *


「あ"~~~……マジだる……。」
「ほんとっ、今回は特別疲れたわねぇ。」
「王子うっかり本気だしちゃった、しし。
あー体だるー。」

ボンゴレ本部、地下の隠し部屋。
ソファーに寝そべり、頬に大きな絆創膏を貼ったベルは、目の前に縛られた男二人を見てにったりと笑みを浮かべる。

「ししし、でもま、そのお陰でこそ泥は捕まえたわけだし、ボンゴレも満足すんだろ。」
「ほーんと、最近負け続きだった気がするけど……今回は大成功ねん!」
「負けはお前らだけだろ。
王子のこと一緒にすんなし。」
「やだぁん、つれないんだからっ♥」

ベルとルッスーリアの掛け合いに、男達は反応もしない。
というより、出来なかった。
手足には縄をかけられ、口には固く猿轡を噛まされている。
恨みがましい目が向けられているのを感じながら、ベルはニタニタとした笑みを絶やさずに続ける。

「しし、このチョーシならスクアーロの方も楽勝だな。」
「そうねぇ、あのスクちゃんが負けるとは思えないけれど……、にしては、遅いわねぇ。」
「うっかり殺しちゃって顔出しづらいんじゃねーの?」
「それはないんじゃないかしらねぇ。」

ルパン三世一味の中でも一番の武闘派である、石川五ェ門。
そうは言っても、最強とまで称されるヴァリアーで作戦隊長を任されるスクアーロが簡単に負ける相手ではないはずだ。
だがしかし……、ルッスーリアの言う通り、少しばかり、遅い。
ベルはごそごそと胸元を探り、無線に連絡を取ろうと試みる。
しかしイヤホンの向こうからは雑音が流れてくるばかりで、一向に繋がる様子はない。
当たり前だが、スクアーロが普段持っているケータイにも繋がらなかった。

「……繋がんねー。」
「やだ、死んでないでしょうね、あの子。」

ルッスーリアの心配する通り、スクアーロはその時ちょうど死にかけていたわけだが、そんなこととは知らない二人は、ルパン三世、及びその仲間である次元大介へと、視線を向ける。
しばし考え込んだベル。
チラリとルッスーリアへ視線を送れば、同じことを考えていたのか、サングラス越しに視線があった。
徐に立ち上がった二人は、目の前の男達から猿轡を外す。

「「ぶはっ!」」
「ししし、気分はどーよ、どーろぼっ♪」
「最悪だな!」
「あら~!私は最高よぉん♥」
「王子くんよぉ、ありゃズルだろぉ。」
「ししし、しょうがねーじゃん。
王子だってガチでやる気なかったのに、あんたが王子に血ぃ流させるんだもん。」

近付いてきたルッスーリアから距離を取ろうと、次元大介はずるずると体を引きずる。
……無駄な抵抗ではあるが。
そしてハートを飛ばしまくるルッスーリアの横で、ベルは頬の絆創膏をするりと撫でた。
どうやら怪我をして暴走したらしい。
そのお陰でルパン三世には勝てたのだが、下手をすれば相手を殺していたかも知れないことを考えれば、本気を出したくなかったというベルの主張も納得がいく。

「で?な~んでオレ達の猿轡を外したんだ?」
「しし、話聞いてたならわかんだろ?
石川五ェ門とか言う奴のこと喋ってもらうぜ。」
「一応こっちでも調べてたんだけどぉ……、やっぱり仲間に聞いた方が、より詳しい情報が得られるからね~。」
「そんなことオレ達が喋るとでも?」
「しゃべんねーなら、しゃべりたくなるようにさせるまでだね。」

しぱっと、ベルの手の中でナイフが回される。
流石に、ルパン三世も命運尽きたかと思った、その直後、二人が見たのは己の血でも、仲間の血でもなく、バラバラに切り裂かれた縄……。
二人は、彼らを捕まえた者自身の手によって、自由にされたのである。

「……こりゃどういう風の吹き回しだぁ?」
「しし、オレ達の質問に答えんなら、あんたらをボンゴレの手が届かないところで、匿ってやってもいいぜ。」
「はあ?」
「もし石川ってのと連絡が取れて、スクアーロが生きて見つかったなら、そのまま逃がしてやっても良いわよん♥」
「……そーんなこと言っちゃって、後々オレ達を売るなんてことは……」
「元々ヴァリアーはアンタ達に恨みなんてねーし、こっちとしては情報しゃべってもらえれば後はどーなろーと関係ねーと思ってたし。
……それに、こんなことでスクアーロが死んだなんてなったら洒落になんねーしな。」

ベルフェゴールの言葉に、ルパンは怪訝そうな視線を送る。
ヴァリアーと言うのはボンゴレを親とする下部組織だったはずだ。
だが実際は、そう簡単なものではないらしい。
隣で戸惑う次元とアイコンタクトを交わし、天下の大泥棒は大きく頷いたのだった。

「五ェ門の情報喋れってのは無理だが、五ェ門と連絡を取ることはできると思うぜ。」
「んま~!決断の早い男って、す・き♥
そうと決まったら、早速こんな陰気なところ抜け出しちゃいましょ!」

ルッスーリアが動き出す。
どうにも、おかしなことになった。
しかしこれはこれで面白い。
愉快そうに笑うルパン達と、ヴァリアーとの間に、無事取引が結ばれる。
そしてその頃、取引のことなどまるで知らずに、偽のボンゴレリングが安置されている部屋で、銭形が苛立ちを露に『ルパンはまだか!?』と騒ぎ立てていたのだった。

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