小ネタまとめ

群青×泥棒⑥

2024/08/21 22:09
群青の鮫派生ネタ
ルパン三世新シリーズ始まりましたね!
折角なので×泥棒を書いてみました!
……こちらにはルパン出てませんけど。





もしも、世が世ならば、この男は素晴らしい使い手として、名を馳せていた事だろう。
そう、思わされるほどに、相手は強かった。
二の腕を切り裂かれた今の状態では、斬鉄剣を存分に振るうことは出来ない。
何より、相手は自分の間合いまで中々近付いてこない。
投擲されたナイフを弾いた。
ついでに、そのナイフにくくりつけられたワイヤーを斬る。
事前に得た情報では、剣士だと思われていたその男は、しかし実際に戦ってみれば、その本質は手数の多さにこそあるのだと気付く。
剣士ではなく、暗殺者。
なるほど、面白い。
五ェ門の唇は、本人も気付かぬ内に、自然と弧を描いていた。

「ぜやぁ!」
「くっ!?」

敵に届かないのならば、まずは隙を作らなければならない。
五ェ門は素早く剣を振るい、脆い石壁を崩す。
腕を切られたといえども、両手を使えば、何とか崩せる。
土煙が舞い上がり、視界が塞がれる。
落ちてきた瓦礫を、敵のいた方へと蹴り飛ばす。

「ぐっ……!」

小さな呻き声が聞こえ、僅かながらダメージを与えられた事がわかった。
だが恐らく、傷は浅い。
風の流れる方へと飛び出した五ェ門を追って、鋭いナイフの群れが宙を走ってくる。
それを斬鉄剣で弾き、煙が晴れた視界に、不機嫌そうに立つ男と、再び対峙した。

「……チッ、あそこん中で終わらすつもりだったのによぉ……。」

辺りに目を向ける。
どうやら、地下通路からボンゴレ本部に入ってしまったらしい。
ただ、人払いをしてあるのか、周囲に警官やマフィアの影は見当たらない。

「主ら、何が目的だ?」
「あ"あ?」
「先程から戦っていて、主に殺気を感じないことくらい分かっている。
何が目的で拙者達の邪魔をする。」
「……。」

五ェ門の指摘に、スクアーロは一瞬驚いたように目を見開いた後、意外そうな声をあげた。

「なんだ、ただ無闇に強盗するだけの集団、って訳でもねぇみてぇだなぁ。」
「拙者は侍だ。
そしてルパンは怪盗……。
そこらのこそ泥と同じにされるのは心外だ。」
「侍に、怪盗、ね。
どっちにしろ、テメーら捕まえて、じっくり話聞かせてもらうことに変わりはねぇよ。
……だから黙って、お縄に掛かりなぁ!」

答えは得られず、再び戦いが始まる。
このままでは、いずれ警官達に見付かる。
お互いに、もう猶予はないことがわかっていた。
斬鉄剣が空を閃き、極細のワイヤーや小さなナイフの束が獰猛に輝く。
そして勝利の女神は……、スクアーロへと微笑んだのだった。

「……っ、残念、だったなぁ。」
「貴様……わざとっ!」

ワイヤーやナイフで軌道をずらされた剣は、スクアーロの肩を深く裂いていた。
だが、スクアーロはそれを避けることもせず、そのまま五ェ門の首へとナイフを押し付けた。
怪我はスクアーロの方がずっと深い。
だが、この状況は明らかに五ェ門の敗北であった。
悔しげに顔を歪めた五ェ門に対して、スクアーロはにたりと歯を見せる。

「っは、オレの勝ちだぁ……!」
「くっ……!」
「さあ、大人しく捕まってもらうぜぇ。」

ぐっと喉にナイフを押し付けられ、五ェ門は渋々と剣を手放す。
少し、喉元に突き付けられたナイフの力が、緩んだと思った。
その、瞬間の事だった。

「う"っ……!ぁ……ぐ……。」

パシュッと、空気の抜けるような小さな音が響いた。
直後に、スクアーロは呻き声を上げて、五ェ門の上へと崩れ落ちた。

「な……何者だ!?」

倒れたスクアーロを受け止めながら、五ェ門は気配のする方へと怒鳴った。
戦いに夢中になるあまり、隠れた気配に気付けなかった。
逃げていく男の背中を追うことも出来ず、苦しそうに呻く男を抱えて、五ェ門は途方に暮れるのだった。

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