小ネタまとめ

炊飯器と呼ばないで(WTエネドラトリップ)①

2024/08/21 21:52
その他
誰に頼まれたわけでもありませんがエネドラちゃん好きすぎて辛いので前に書いたネタの冒頭を書いてしまった次第。
副題は『ドラと一緒』
トロと一緒みたいなゲームあったなーと思って調べてみたら、どこでもいっしょシリーズというのが正しいタイトルらしいです。
知らなかった……(やったことないので)。
エネドラちゃんは不器用に見えてド不器用だと嬉しいです。
炊飯器と呼ばないで、というタイトルはまあ、そのままです。






気付けばオレは、見知らぬ森の中にいた。
しとしとと柔らかな雨が降っている。
ここは、いったいどこだ?
青々と茂る木々の葉、香り立つ土の匂い。
アフトクラトルにこんなところはない。
自分達が降り立った玄界の地域は、石が街を覆っていて、こんなに深い緑はなかったはずだ。
何より気になるのは、何故、自分が生きているのか。
へまをした。
そのせいで……いや、それだけが理由ではないのだろうが、自分はミラの黒トリガーで殺されたはずだ。
体に痛みはない。
力は入らないが、傷はたぶんない。
首を動かすことも出来ないから、たぶんとしか言えないが。
もしかして、自分はもう死んでいるのだろうか。
そうと気付いていないだけで、雨に感じる冷たさは錯覚で、土の匂いは幻覚で、もうこの命は、尽きてしまっているのだろうか。

『クソ……どういう…………ぁあ?』

何とか絞り出した声は、まるで自分の声ではないようで、機械を通しているかのように、変に響いて、ハッキリとしない。

『何が……』

訳がわからないまま、体を引きずって這う。
腕が動かない……いや、腕などどこにもないような感じだ。
脚も、ない、気がする。
何とか、ゆっくり、ゆっくりと動いて、オレが見付けたのは小さな水溜まり。
覗き込んだオレは、しばらくの沈黙のあと、絶叫した。

『な、何だっ……これぇぇえ!!!??』

そこに映っていたのは、上から下まで真っ黒なボディーを持った丸っこい機械の顔。
2本の角の代わりに生えているのは、細長い動物の耳のようなもの。
目や口の部分だけは、赤くぼんやりと光っている。
オレの記憶に間違いがないなら、自分は正真正銘の人間だったはずだ。
それが何故、こんな、小型のトリオン兵のような機械チックな姿になっているのか。
その原因を考えるよりも早く、絶叫によって残った体力を使い果たしたオレは力尽き、その場に倒れたのだった。


 * * *


雨が弱まった、日本のとある森の中。
一人の女が、傘を差し、合羽を着て長靴を履いて、何かを探すようにうろうろと歩いていた。

「うぅん……確かこの辺で人の声が聞こえた気が……」

この山は自殺の名所というわけでも、特別地盤が緩いわけでもないが、人の叫び声が聞こえた以上、この山の一角を管理する者としては、無視することは出来ない。
しばらく木々の間を探していた彼女は、少し開けた場所に何かが落ちていることに気が付いた。

「うん?これは……おもちゃ、かな?」

真っ黒なつるりとした体、丸くて愛らしいライン、愛嬌のある目や口。
おもちゃにしては、少し大きめである気がするが、しかしおもちゃ以外の何かには見えない。

「汚れてる……。壊れちゃってるかな」

意外と重量のあるそれを拾い上げて、触ってみる。
ツンツン、と突付くと、ウサギのような長い耳が、ピクッと動いた。
まだ壊れてはいないらしい。

「これの持ち主の声だったのかなぁ?」

近くを探してみるが、人がいた痕跡はどこにもない。
このおもちゃの回りには、何かを引きずったような跡があるだけで、人の足跡もなかったし……、この周囲には誰もいないようだ。

「気のせいだったのかなぁ……?と言うか、このおもちゃ炊飯器みたいな形してるなぁ」

首を傾げながら、彼女は元来た道を歩いて戻る。
手に、彼女がおもちゃだと思い込んでいる、真っ黒なその体を抱えて……。




ありがとうございました!
炊飯器先生……もとい、レプリカ先生の復帰と風間さんによる『諏訪の使い方ガイドブック』の発売心よりお待ちしております。
風間さんの下り本誌派の方ならわかってくださるかと……!!

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