小ネタまとめ

ラピスラズリの天泣⑥

2024/08/21 21:51
復活山本夢
「何でかなぁ!?
何であーゆー無茶なことするのかなぁ!!?
無茶っていうか馬鹿?
馬鹿だよね馬鹿じゃないの馬鹿なの馬鹿って言うかウマとシカだよもうばかばかばかばかーーっ!!」
「「ご、ごめんなさい……。」」
「そもそもなんで沢田君はパンイチだったの!?」
「そこはもう突っ込まないでください!!」

皆さん聞いてください。
先程私の目の前で、奇跡が起こりました。
自殺騒ぎを起こしていた山本君、そしてその場に野次馬しにきていたらしい沢田君が、揃って屋上から落ちてきた。
しかし!なんと!奇跡的に!彼らは4階分を落下してきたにも関わらず、私の目の前に無傷で立っていたのだ。
むしろ私の方が尻餅ついて手のひら擦りむいたよ!こんなの絶対おかしいよ!
そして今、私は保健室にて、二人を説教しているのである。

「なんであんな危険なことしたのよ本当に!」
「その……オレ、野球が出来なくなるって思ったら、つい……。」
「オレは山本に襟引っ張られて……。」
「よし、山本君に有罪判決!」
「ほ、本当にごめん!!」
「ごめんで済むなら裁判いらない!」

本当に、死ぬかと思った。
信じられないような奇跡だけど、二人とも生きてる。
散々怒鳴って、叱って、その後に私はゆっくりと息を吐き出した。

「はぁー……、でも、二人が無事で、良かった、です、はい。」
「あ……。」

まさに奇跡としか言いようがないし、ちょっと信じられないくらいピンピンしているけど、本当に良かった。
申し訳なさそうな顔で頭を垂れる彼らを、少し笑って見詰めた。

「もう……本当に恐かったんだから……。」
「本当に、心配かけてごめんなさい、烏丸さん……。」
「……烏丸、ごめん。
もう絶対!こんなことしない!」
「こんなことしないのは当たり前!」
「う゛……わかってるのなー……。」

しょぼーんと項垂れて、十分反省した様子の二人。
これだけ反省してくれてるなら、もう怒る必要はないだろう。
もう一回息を吐き出した。

「反省してくれてるみたいだから、もう正座、しなくて良いよ。」
「た、助かったのなー。」
「あとね、クラスの皆もきっと心配してたはずだから、ちゃんと謝るんだよ?」
「うん!」
「それと、心配してくれたことに、お礼もちゃんと言うこと!」
「わかったのな!」
「うん、じゃあ教室に帰ろう!」
「おー!」

元気よく返事して笑った山本君は、もう吹っ切れたみたいだった。
心配したけど、元気になってくれたなら、良かったな。
沢田君は、元気な山本君に気圧されてるけど、でも山本君と仲良く笑いあっている。
あー、青春っぽいなー。
若いって良いですねー。
おばさ……お姉さんにはちょっと眩しい。
まあ眺めるだけならタダなので、私は端から存分に眺めさせて頂こう。
うむ、眼福眼福。

「あ、チャイム鳴ってる!」
「一時間目始まっちまったな。
急ごうぜ!ツナ、烏丸!!」
「うん!」
「あ、うん……え!?」

廊下に響いたチャイムの音。
山本君の声に頷いて、脚を動かした途端、手を握られて、思いっきり引っ張られた。
隣で沢田君の手も引っ張られている。
どうやら二人で山本君に手を取られて引っ張られ……というより引き摺られているらしい。
いや、なんで!?
と言うか私、今、山本君に、手を握られてる……!
でもそんなことよりも私達には大事なことがあった。

「ちょっ……ま……早い早い早い早い早い!!」
「まままままってややや山本ぉぉお!!!」

背の高い山本君と、チビ……もとい、背があまり高くない私達ではコンパスの長さが違うのだ。
そもそも彼と私達では運動能力がまるで違う。
絡まる脚を必死に動かして、教室まで辿り着いた頃には、私達は息も絶え絶えとなってしまっていたのだった。
あれ?どうしたのな?じゃないよ!
パンピーは普通、あんなスピードで動けないんだよ山本君!!

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