白金の福音
人は、これを修羅場と呼ぶのだろうか。
「誰だてめぇコルァ!ヨシ先輩に何の用だゴルァ!」
片や、自分と仲良くしている後輩(不良)。
「お前こそ誰だ、あ゛あ?こっちは仕事だ。邪魔すんなよクソガキ」
片や、自分を護衛に来たと言う、完全アウトな職業の幼馴染み。
「ちょっ、まっ……オレの為に喧嘩するのはやめてー!」
まさかこのオレが、少女漫画のような台詞を使うことになるとは、今まで生きてて夢にも思わなかった。
* * *
「良い、鷹人?この人はオレの幼馴染みで、今はえっと……オレの面倒を見てくれてるんだ。だから、喧嘩は売っちゃダメ。良いね?」
「でもヨシ先輩、こいつ絶対悪いやつですよ!目付きがもう悪人って感じじゃないっすか!」
「あはは、否定はしないけど……。でもダメ!良いね?」
「うぅ……はい」
今まで真面目で通してきたオレだけど、今回ばかりは授業をサボって近くの公園に来ていた。
ベンチに座って、いつも喧嘩っ早い後輩にしっかりと言い聞かせる。
彼はオレの父さんの部下の子ども……らしくて、オレとは全然性格が違うのに、昔から何故かオレによくなついてくれてる。
昨日はどうやら学校をサボってたみたいで、アル兄ともかち合わなかったんだけど、今日はちょうど校門の前でかち合ってしまった。
人の多い学校で騒動を起こすのは嫌だし、生徒会あたりに目をつけられるのも困る。
オレは渋々学校を抜け出して、二人に事情を説明することになったのだ。
「アル兄、ごめん、お待たせ。こっちは後輩の獄寺鷹人君。鷹人、この人はオレの幼馴染みのアレッシオ・キャバッローネさん」
「……よろしく」
「チッ」
「たーかーひーとー?」
「……すんません」
後輩が渋々アル兄と握手したのを見て、ようやくひと安心した。
根は良い子なんだけど、どうにも周りの人に対して威嚇する癖があるらしく、いつもこうしてオレが宥めている。
しかし、タイミングが良かった。
彼は、父さんの部下の子ども。
ってことは、今回の事でなにか知ってる可能性がある。
ベンチの側に立っているアル兄に聞こえないように、少し屈んで鷹人に耳打ちをする。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「はい!ヨシ先輩からのご相談なら、喜んで!」
鷹人はいつも通りの元気の良い返事をくれる。
彼の明るさには救われる。
オレ以外の人にもこの調子なら、きっと誤解も生まないんだろうけどなぁ。
「鷹人は……お父さんの仕事って、知ってる?」
「……」
オレの質問に、ピタッと彼の口が止まった。
目線を上げると、少し色素の薄い瞳が、まっすぐオレを見ている。
えと、これは、どういう感情なんだろう。
「それは、えーと、どういう意味ですか?」
「え、いや、単純に気になってさ」
「ヨシ先輩は、知ってるんすか?」
「それは……」
この聞き方は、彼も知っているのだろうか。
でも、鷹人はほとんどいつも、オレの後ろにくっついて歩いてるし、不良ではあるけれど、マフィアとか、ヤバい事はしてない、はずだ。
「……もしかして、マフィアの話、聞いたんすか?」
「!?」
躊躇った末に、彼が放った言葉に、知っていたんだと衝撃を受ける。
オレも慣れてきたのかな。
衝撃とは言え、前ほどの重いショックではない。
「その、オレも一ヶ月くらい前に聞いて。でも、親父にも親父なりの考えあってその仕事してるみてーだし、それに親父達は、どっちかっつーとマフィアを取り締まる側って言ってたんで、まあそういうのもありなんだなー程度にしか思ってなかったんすけど。オレに後を継げみたいなことも言ってなかったし……」
鷹人は一ヶ月も前から知ってた?
それに、意外と肯定的に父親の仕事を見ているみたいでぎょっとした。
というかちょっと待って、マフィアを取り締まる……って?
「なんか、オレらも狙われるかもしんねーとは聞きましたけど、特に何もないっすよね?」
「……そ、それは」
何もなくない。
がっつり襲われたわけで、だからこそ、アル兄が護衛してくれてるわけで。
でも、この後輩は襲われてなさそうで、ちょっと安心した。
「その、オレ、ヤバいのに襲われたんだ」
「……ま、マジっすか!?」
「うん、それでその、アル兄は、オレを護るための護衛、なんだって」
「そ、そういう……そう、すか」
二人揃って、ちらっとアル兄を見上げる。
アル兄とバッチリ視線があった。
「相手はまだ、お前達の詳しい情報は知らねぇぜ」
「っ!え、聞いてた?」
「ばっちり」
地獄耳め……。
恨めしげに見たって、彼はまるで気にしてないみたいだ。
「敵はボンゴレのボス及び幹部の子供の情報をかき集めてる。お前が襲われたのも、その情報収集の為だ」
「ヨシ先輩、襲ってきたのってどんな奴だったんすか?」
「人じゃない。なんか、色んな動物を継ぎ足した、……化け物、妖怪……そうだ、鵺、みたいな」
「鵺?」
「あ、えと、日本の妖怪で、頭は猿、手足が虎、体が……狸?あと尻尾が蛇っていう怪物。くっついてた動物は違ったけれど、そんな感じのだった」
恐ろしい体験だった。
その癖、あの怪物の仔細をちゃっかり観察していた自分に驚く。
手足は猪、頭は虎、体は固い鱗に覆われてて……たぶん蜥蜴か何か。
尻尾までは位置的に見えなかったけれど、長い毛のように見えたから、馬、かもしれない。
炎を吐いてた。
まるでドラゴンみたいに。
「でも、そんな強そうな奴からよく逃げ切れましたね!流石はヨシ先輩っす!」
「あ、いや、父さんに助けられて。オレは何にも出来なかったよ……」
ふと疑問を抱いた。
オレをピンポイントで襲ったんじゃなくて、情報収集の為に襲った?
「まさかだけど、あの化け物……。オレを探して無差別に人を襲ってたなんて、言わない、よね?」
「そ、そういえば、最近並盛や黒曜の辺りで、通り魔が出てるって話を聞きました。通り魔にあった奴は確か……」
「記憶が混濁してた。化け物に襲われたって事と、炎に囲まれたって話を……炎!?」
「なるほど、そこまで知ってたか」
無差別連続通り魔事件は、昨今の並盛(それから黒曜)を騒がせている大事件だ。
被害者には関係性がなく、その中で唯一共通しているのは、年齢層。
襲われたのは皆、小学校高学年から中学生までの子どもである。
相手はきっと、父さん達の年齢から、子どもであるオレ達の、大体の歳を割り出すことまでは出来た。
けれど、名前や、家、容姿等の情報までは手に入らなかった。
だから無差別に、当たりが出るまで子どもを襲っていた。
「オレ達の組織で、お前らが襲われないように情報を隠してきた。だが、流石に限界がある」
オレ達から視線を外して、アル兄は静かな声で話始めた。
目を細めて辺りを見回す様子に、どうやら周囲を警戒しているんだとわかった。
生唾を飲む。
「お前がヌエと呼んだあの怪物を、オレ達はキメラと呼んでいる。あれはかつて裏社会で暗躍していたクソマフィアが、ひでぇ実験を繰り返した末に生まれた怪物だ。敵は怪物を使って、お前達を殺し、もしくは捕らえて、ボンゴレを潰そうと企んでいる」
「オレ達を……って、幹部の子どもってことは、オレら以外にも狙われてる人がいる……?」
幹部と呼ばれる人達が、オレや彼の父親だけとは思えない。
他にもいるはずだ。
父さんの仕事仲間は誰?
「お前の他にターゲットとなっているのは、そこにいる獄寺鷹人」
アル兄の人差し指が鷹人に向けられる。
その手が今度は空に向けられて、次に親指が立てられる。
「そして、ボンゴレ警備部門を預かる笹川了平の息子、慎平」
笹川先輩。
合気道の有段者だってことで、地方紙に取り上げられたって聞いた。
オレも昔からよく面倒を見てもらってて、……ただ、鷹人はとても一方的に彼のことを煙たがってる。
そしてまた、アル兄の指が一本増える。
「風紀財団のトップとして並盛を牛耳り、ボンゴレとも深い関係を築いている男、雲雀恭也の息子、純也」
生徒会長の名前だ。
喧嘩を売ったり、規範を侵すような真似をすれば、彼らにとっちめられる。
ただ、普段は比較的穏やかでしっかりした人だと聞いてる。
関わりはあまりないけど、彼は有名人だ。
指は四本に増えた。
「ボンゴレの根本を支える技術部門の責任者、入江正一の娘、夢華」
その子は、名前だけは知ってた。
隣のクラスの、変わり者ってので有名な女の子だ。
パソコンとか、ロボットとか、そういったものが好きらしくて、常に何かしらの工具を持ち歩いてるらしい。
5本目の指が上げられる。
「最後に、ボンゴレと協力関係にある最強の幻術士、六道骸の息子、八雲。こいつは小学生だから、お前らは知らねぇだろうが」
確かに、その子だけは知らない。
六道という名前も聞いたことがないけれど、ムクロって名前は、いつか父さんが口にしていたような気がする。
にしても、幻術士……とは?
狙われてるのはその5人と、オレを含めた全部で6人。
「その人達の護衛は!?」
「勿論、全員に護衛が付いてる。オレも隠れて付く予定だったが、先にお前が襲われたからな。相手への牽制も含めて、姿を見せて護衛することになった」
「……敵って、何者なの?」
そこまでして、父さん達を倒したいと思うのは、一体何でなんだ?
「敵の名はフレネシアファミリー。目的は、裏社会を監視・監督するボンゴレを倒し、ブラッド・オブ・ボンゴレ、及びトゥリニセッテの一角であるボンゴレリングを手に入れること。そしてそれを使って、人類を新たな次元へと押し上げる……。ま、マフィアっつーよりは、カルト集団って奴だな」
「誰だてめぇコルァ!ヨシ先輩に何の用だゴルァ!」
片や、自分と仲良くしている後輩(不良)。
「お前こそ誰だ、あ゛あ?こっちは仕事だ。邪魔すんなよクソガキ」
片や、自分を護衛に来たと言う、完全アウトな職業の幼馴染み。
「ちょっ、まっ……オレの為に喧嘩するのはやめてー!」
まさかこのオレが、少女漫画のような台詞を使うことになるとは、今まで生きてて夢にも思わなかった。
* * *
「良い、鷹人?この人はオレの幼馴染みで、今はえっと……オレの面倒を見てくれてるんだ。だから、喧嘩は売っちゃダメ。良いね?」
「でもヨシ先輩、こいつ絶対悪いやつですよ!目付きがもう悪人って感じじゃないっすか!」
「あはは、否定はしないけど……。でもダメ!良いね?」
「うぅ……はい」
今まで真面目で通してきたオレだけど、今回ばかりは授業をサボって近くの公園に来ていた。
ベンチに座って、いつも喧嘩っ早い後輩にしっかりと言い聞かせる。
彼はオレの父さんの部下の子ども……らしくて、オレとは全然性格が違うのに、昔から何故かオレによくなついてくれてる。
昨日はどうやら学校をサボってたみたいで、アル兄ともかち合わなかったんだけど、今日はちょうど校門の前でかち合ってしまった。
人の多い学校で騒動を起こすのは嫌だし、生徒会あたりに目をつけられるのも困る。
オレは渋々学校を抜け出して、二人に事情を説明することになったのだ。
「アル兄、ごめん、お待たせ。こっちは後輩の獄寺鷹人君。鷹人、この人はオレの幼馴染みのアレッシオ・キャバッローネさん」
「……よろしく」
「チッ」
「たーかーひーとー?」
「……すんません」
後輩が渋々アル兄と握手したのを見て、ようやくひと安心した。
根は良い子なんだけど、どうにも周りの人に対して威嚇する癖があるらしく、いつもこうしてオレが宥めている。
しかし、タイミングが良かった。
彼は、父さんの部下の子ども。
ってことは、今回の事でなにか知ってる可能性がある。
ベンチの側に立っているアル兄に聞こえないように、少し屈んで鷹人に耳打ちをする。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「はい!ヨシ先輩からのご相談なら、喜んで!」
鷹人はいつも通りの元気の良い返事をくれる。
彼の明るさには救われる。
オレ以外の人にもこの調子なら、きっと誤解も生まないんだろうけどなぁ。
「鷹人は……お父さんの仕事って、知ってる?」
「……」
オレの質問に、ピタッと彼の口が止まった。
目線を上げると、少し色素の薄い瞳が、まっすぐオレを見ている。
えと、これは、どういう感情なんだろう。
「それは、えーと、どういう意味ですか?」
「え、いや、単純に気になってさ」
「ヨシ先輩は、知ってるんすか?」
「それは……」
この聞き方は、彼も知っているのだろうか。
でも、鷹人はほとんどいつも、オレの後ろにくっついて歩いてるし、不良ではあるけれど、マフィアとか、ヤバい事はしてない、はずだ。
「……もしかして、マフィアの話、聞いたんすか?」
「!?」
躊躇った末に、彼が放った言葉に、知っていたんだと衝撃を受ける。
オレも慣れてきたのかな。
衝撃とは言え、前ほどの重いショックではない。
「その、オレも一ヶ月くらい前に聞いて。でも、親父にも親父なりの考えあってその仕事してるみてーだし、それに親父達は、どっちかっつーとマフィアを取り締まる側って言ってたんで、まあそういうのもありなんだなー程度にしか思ってなかったんすけど。オレに後を継げみたいなことも言ってなかったし……」
鷹人は一ヶ月も前から知ってた?
それに、意外と肯定的に父親の仕事を見ているみたいでぎょっとした。
というかちょっと待って、マフィアを取り締まる……って?
「なんか、オレらも狙われるかもしんねーとは聞きましたけど、特に何もないっすよね?」
「……そ、それは」
何もなくない。
がっつり襲われたわけで、だからこそ、アル兄が護衛してくれてるわけで。
でも、この後輩は襲われてなさそうで、ちょっと安心した。
「その、オレ、ヤバいのに襲われたんだ」
「……ま、マジっすか!?」
「うん、それでその、アル兄は、オレを護るための護衛、なんだって」
「そ、そういう……そう、すか」
二人揃って、ちらっとアル兄を見上げる。
アル兄とバッチリ視線があった。
「相手はまだ、お前達の詳しい情報は知らねぇぜ」
「っ!え、聞いてた?」
「ばっちり」
地獄耳め……。
恨めしげに見たって、彼はまるで気にしてないみたいだ。
「敵はボンゴレのボス及び幹部の子供の情報をかき集めてる。お前が襲われたのも、その情報収集の為だ」
「ヨシ先輩、襲ってきたのってどんな奴だったんすか?」
「人じゃない。なんか、色んな動物を継ぎ足した、……化け物、妖怪……そうだ、鵺、みたいな」
「鵺?」
「あ、えと、日本の妖怪で、頭は猿、手足が虎、体が……狸?あと尻尾が蛇っていう怪物。くっついてた動物は違ったけれど、そんな感じのだった」
恐ろしい体験だった。
その癖、あの怪物の仔細をちゃっかり観察していた自分に驚く。
手足は猪、頭は虎、体は固い鱗に覆われてて……たぶん蜥蜴か何か。
尻尾までは位置的に見えなかったけれど、長い毛のように見えたから、馬、かもしれない。
炎を吐いてた。
まるでドラゴンみたいに。
「でも、そんな強そうな奴からよく逃げ切れましたね!流石はヨシ先輩っす!」
「あ、いや、父さんに助けられて。オレは何にも出来なかったよ……」
ふと疑問を抱いた。
オレをピンポイントで襲ったんじゃなくて、情報収集の為に襲った?
「まさかだけど、あの化け物……。オレを探して無差別に人を襲ってたなんて、言わない、よね?」
「そ、そういえば、最近並盛や黒曜の辺りで、通り魔が出てるって話を聞きました。通り魔にあった奴は確か……」
「記憶が混濁してた。化け物に襲われたって事と、炎に囲まれたって話を……炎!?」
「なるほど、そこまで知ってたか」
無差別連続通り魔事件は、昨今の並盛(それから黒曜)を騒がせている大事件だ。
被害者には関係性がなく、その中で唯一共通しているのは、年齢層。
襲われたのは皆、小学校高学年から中学生までの子どもである。
相手はきっと、父さん達の年齢から、子どもであるオレ達の、大体の歳を割り出すことまでは出来た。
けれど、名前や、家、容姿等の情報までは手に入らなかった。
だから無差別に、当たりが出るまで子どもを襲っていた。
「オレ達の組織で、お前らが襲われないように情報を隠してきた。だが、流石に限界がある」
オレ達から視線を外して、アル兄は静かな声で話始めた。
目を細めて辺りを見回す様子に、どうやら周囲を警戒しているんだとわかった。
生唾を飲む。
「お前がヌエと呼んだあの怪物を、オレ達はキメラと呼んでいる。あれはかつて裏社会で暗躍していたクソマフィアが、ひでぇ実験を繰り返した末に生まれた怪物だ。敵は怪物を使って、お前達を殺し、もしくは捕らえて、ボンゴレを潰そうと企んでいる」
「オレ達を……って、幹部の子どもってことは、オレら以外にも狙われてる人がいる……?」
幹部と呼ばれる人達が、オレや彼の父親だけとは思えない。
他にもいるはずだ。
父さんの仕事仲間は誰?
「お前の他にターゲットとなっているのは、そこにいる獄寺鷹人」
アル兄の人差し指が鷹人に向けられる。
その手が今度は空に向けられて、次に親指が立てられる。
「そして、ボンゴレ警備部門を預かる笹川了平の息子、慎平」
笹川先輩。
合気道の有段者だってことで、地方紙に取り上げられたって聞いた。
オレも昔からよく面倒を見てもらってて、……ただ、鷹人はとても一方的に彼のことを煙たがってる。
そしてまた、アル兄の指が一本増える。
「風紀財団のトップとして並盛を牛耳り、ボンゴレとも深い関係を築いている男、雲雀恭也の息子、純也」
生徒会長の名前だ。
喧嘩を売ったり、規範を侵すような真似をすれば、彼らにとっちめられる。
ただ、普段は比較的穏やかでしっかりした人だと聞いてる。
関わりはあまりないけど、彼は有名人だ。
指は四本に増えた。
「ボンゴレの根本を支える技術部門の責任者、入江正一の娘、夢華」
その子は、名前だけは知ってた。
隣のクラスの、変わり者ってので有名な女の子だ。
パソコンとか、ロボットとか、そういったものが好きらしくて、常に何かしらの工具を持ち歩いてるらしい。
5本目の指が上げられる。
「最後に、ボンゴレと協力関係にある最強の幻術士、六道骸の息子、八雲。こいつは小学生だから、お前らは知らねぇだろうが」
確かに、その子だけは知らない。
六道という名前も聞いたことがないけれど、ムクロって名前は、いつか父さんが口にしていたような気がする。
にしても、幻術士……とは?
狙われてるのはその5人と、オレを含めた全部で6人。
「その人達の護衛は!?」
「勿論、全員に護衛が付いてる。オレも隠れて付く予定だったが、先にお前が襲われたからな。相手への牽制も含めて、姿を見せて護衛することになった」
「……敵って、何者なの?」
そこまでして、父さん達を倒したいと思うのは、一体何でなんだ?
「敵の名はフレネシアファミリー。目的は、裏社会を監視・監督するボンゴレを倒し、ブラッド・オブ・ボンゴレ、及びトゥリニセッテの一角であるボンゴレリングを手に入れること。そしてそれを使って、人類を新たな次元へと押し上げる……。ま、マフィアっつーよりは、カルト集団って奴だな」