白金の福音

子どもが産まれると言うのは、まさしく奇跡なのだと、日々大きくなっていく腹に思う。
……だけどまさか、子どもを産むのがここまで痛いだなんて、思わなかった……!
「ぐ、うあああ!!無理!!死ぬ!!!いっ~~~つぁあ!!!」
「シャマルこれ大丈夫なのか!?なあ!?こいつがここまで痛がるとか初めて見たんだけど!!?」
「大丈夫大丈夫。お前なら痛みで死ぬけど大丈夫だ~っての」
「ああああむりぃいい!!!」
「無理じゃない無理じゃない。ほらもう頭見えてるぞ~」
あまりの痛みで、何も考えられない。
痛い、ただただ痛い。
本当に痛みで死ぬんじゃないかと思う。
あらゆる傷を経験してきたオレだが、これは本当に未知の痛みで、涙とか鼻水とかで顔がぐしゃぐしゃになる。
自分の母も、こんな風に子どもを産んだのだろうか。
兄は、そうだったかもしれない。
自分の時は、手術だったと聞いた。
母は自分を産んで死んだけれど、自分は、自分はまだ、死にたくない。
死ぬわけには、いかない。
左手はずっとベッドの柵を掴んでたけれど、右手はディーノに握ってもらってて、その存在を頼りに、必死で意識を保つ。
息を吸って、吐いて、力を込めて、踏ん張って。
「──っよし!出た!出たぞスクアーロ!元気な男の子だ!」
「う、産まれた……産まれたぞ!スペルビ、オレ達の子、産まれたぞ!」
シャマルの声や、ディーノの声に混ざって、赤子の泣き声が響いている。
ああ、本当に産まれたんだ。
自分の子。
二人の、子ども。
「さあ、赤ちゃんですよ」
背を支えられて、少しだけ体を起こし、助産師から赤子を受けとる。
腕の中の小さな命。
わんわん泣いて、くしゃくしゃで、ちょっと突けば死んでしまいそうな、赤子。
「あか、ちゃん……おれ、の……?」
「そうだぞ、お前が頑張って産んでくれた、オレ達の子どもだ」
ああ、良かった。
ちゃんと産めた。
ちゃんと、ちゃんと……。
子どもをディーノに託して、そのまま意識を手放した。
ああ、本当に、良かった。
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