ボンゴレ的クリスマス!?

世間はクリスマスイヴ、街を行く人々はみな、楽しげに笑い合いながら愛しい者達と大切な日を過ごしている。
だがヴァリアー近くの森で、愛しい者と共にいるにも関わらず、頭を抱えてため息を吐いている人物がいた。

「何なんだよアイツら!
クリスマスまでヴァリアー無事でいられるのかぁ……?」
「ま、まあまあ……。」

無事でいられるかどうかで言えば確実に無事にクリスマスを迎えることは出来ないだろうが、今回のリボーンは本気だった。
ヴァリアー邸の周囲には何故か大量のトラップが、そして何故か部下達まで揃ってスクアーロが屋敷に入ろうとするのを邪魔してくる。
ここまでされては流石のスクアーロにもお手上げで、現在近くの森の開けた場所に座り込んで、文句を羅列しながら目の前の木を切り刻んでいるのであった。
ディーノはそれを落ち着かせようと必死で止めている。

「リボーンは何考えてるのかわかんねー……つかたぶん自分が楽しむことしか考えてねぇだろうけどさ!お前の部下はお前にしっかり休んでほしかっただけなんじゃねーのか!?
最近また忙しくしてたんだろ?
どうせ戻れないんだったら、そんなことしてねーでどっかでしっかり休もう、な?」
「……でも、オレが休んだせいでザンザスに何かあったら……。」
「オレの予想としては、ザンザスの安全よりツナや隊員達の事を心配した方が良いんじゃないのか……?」
「……。」

確かにディーノの言う通りなのだが、その心配する相手達が、スクアーロがヴァリアーを出入りすることを禁じているのだ。
どうしよう、と言った様子でディーノを見上げたスクアーロに、彼は朗らかな笑みを浮かべて言ったのだった。

「お前の部下が折角プレゼントしてくれた休暇だろ?
思いっきり楽しまなきゃ、悪いんじゃねーのか?」
「……そう、かぁ?」
「そーそー。」
「……じゃあ、」

買い物、行かないか?
スクアーロのその一言により、2人の今日のスケジュールは決まったのであった。


 * * *


「跳ね馬……、キャバッローネに戻らないで良いのか?」
「え?」

クリスマスイブの商店街。
多くの家族や恋人達が行き交う賑やかな道。
その中で、クリスマスに不釣り合いな会話を切り出したのはスクアーロだった。

「お前は別に出入り禁止にされてるわけじゃねぇんだろぉ?」
「そりゃそうだけど、オレも部下達に『クリスマスくらい仕事忘れて楽しんでこい』って言われてな……。」

ちなみにそのあと、『1日くらいボスがいなくても仕事は回る』と言われたのだが、それはまた余談である。
照れたように頬を掻いて言うディーノに、スクアーロは幾分か安心した様子だった。

「じゃあ……今日はずっと、一緒にいられるんだな……。」
「ん?何か言ったか?」
「!な、何でもない!」

何言ってるんだオレは、と自分にツッコんで、スクアーロはディーノから顔を背けて歩く脚を早める。
もう12月も終わりだと言うのに、赤く頬を上気させたスクアーロに、内心小さく笑いながら、ディーノはその背を追い掛けた。
本当は聞こえていた、なんて、言ったら怒られるだろうなぁ。
後ろから彼女の腕を掴まえて、自分の腕を絡ませた。
ディーノはその時、とても幸せだったと言う。
そう、その時は、まだ……。
突然、スクアーロの脚が止まったかと思うと、ディーノの腕をぐいぐいと引いて走り出す。
驚いてよろけるディーノを引き摺るようにしながら、スクアーロはとても嬉しそうに叫んだ。

「なあ!ザンザスに上げるクリスマスプレゼント、やっぱり酒が良いよな!なぁ!?」
「は……はぁ!?」

彼女が指を差していたのは、高そうなボトルが並ぶ小綺麗な酒屋。
スクアーロが買い物に誘った意味を、ディーノはこの時になってようやく気付いたのだった。
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