群青の犬!?

「犬……耳?」
「尻尾もある……何でなんだろうな……。」
「理由なんてどうでも良い。
オレはとても好きだぞそれ。」
「お前の好みの方がどうでも良い!」

その日、スクアーロは朝目覚めた瞬間から、体に違和感を感じていた。
よく分からないままベッドから降りて鏡の前に立ったとき、彼女の頭には三角の犬耳が、そして腰からはふさふさの尻尾が生えていたのである。
どうすれば良いのか、思案した結果、部屋に閉じ籠った彼女を引きずり出すために連れてこられたのがディーノだった。
しかし何故か、部屋の前に着くなり突然中に引きずり込まれたディーノは、こうして項垂れているスクアーロにこれまでの経緯を説明されていたのである。

「オレ……どうすれば良いんだろう……。」
「このままでも良いじゃねーか。」
「やだ!こんなんでザンザスの前に出れるわけねーだろぉカス!」
「でも可愛いぜ?
三角耳がピンって立っててさ、尻尾ゆらゆらしてて。」
「耳はまだしも尻尾とか邪魔でしかねーだろ。」
「な……邪魔だって!?
獣耳尻尾は男の夢なのに!!」
「知るかぁ!」

スクアーロが怒って声を荒げる度に、背中で揺れる尻尾が逆立っている。
物欲しそうな目でそれを追いながら、ディーノは落ち着かなさげに言う。

「昨日とか……なんか心当たりのあることなかったのか?」
「思い出そうとしているんだが……何故か夜の記憶がスッポリなくて……。」
「おお!スゴく原因っぽい!」

十中八九そこで何かがあったはず!
そう思ってぽんっと手を打ったときだった。
ばんっとドアが開き、外から入ってきた者がいた。
鍵が掛かっていることなどモノともしない豪腕を誇る、それはルッスーリアであった。

「昨日何があったか!説明させてもらうわよん!!」
「ふぎゃぁぁあ!
何勝手に入ってきてんだバカぁぁあ!!」
「やだスクちゃんったら……昨日はベッドの上であんなに可愛らしく鳴いてたって言うのに……////」
「なんだとっ……ぷぎゅう!?」
「オレそれ知らねぇんだけど!?」

入ってきて早々の問題発言。
ルッスーリアから隠れるようにディーノの背中に隠れたスクアーロは、その言葉に驚いて立ち上がる。
直前に立ち上がろうとしていたディーノは、奇しくもスクアーロの腕によって潰され、ベッドに埋まってしまっている。

「昨日あなた、ボスにぶつけられたウォッカのせいで酔い潰れた挙げ句に試作品の薬もボスにぶつけられて飲んじゃったのよぉ?
覚えてないの?」
「し、知らない!!」
「まあ幸い幹部しか居なかったから、部下に醜態見せる羽目にはならなかったんだけど……散々絡んだ上にベッドまで連れていってあげた私にワンワンワンワン鳴いて甘えてきて本当に大変だったんだからぁ!!」
「なんだよそれ!
スペルビオレにも!
オレにも甘えてきて良いんだぞ!!」
「誰が甘えるかバカ!!」

どうやら原因はXANXUSだったらしく、そしてルッスーリアが言うには解毒薬もあるらしい。
安心するスクアーロだったが、ディーノは不満げにしていた。

「じゃあさっさとその薬渡せ。」
「なんだよ、折角だから今日1日それでいようぜ!
オレにもふもふさせてくれよ!」
「絶対やだ。」

もふもふと言いながらスクアーロの尻尾を追い掛けるディーノ。
何故か目が虚ろになっている。

「うわっ!引っ張るなよ!!
つぅかお前目が怖いぞお゛い!?」
「だってもふもふだぞ?
可愛い彼女ともふもふが合わさったらもう最高なんだぞ?
でもあれだな……尻尾掴まれて『やらぁ!感じちゃうのぉ!!』ってなるのはエロゲの世界だけなんだな……。」
「はあ?」

現実とは常にして残酷なモノである。
ゆらゆらと揺れる尻尾を追い掛けるディーノと逃げるスクアーロ。
そして二人が遊んでいる間に、ルッスーリアが解毒薬を持って戻ってきた。

「お薬持ってきたわよ~ん♡」
「おう、助かる……」
「させるかー!」
「なにっ!?」

だがその薬がスクアーロに渡るより早く、ディーノがルッスーリアの手を弾いた。
宙を舞う薬、それを掴もうとするスクアーロの指が再び薬を弾き、そして薬は……

「っんぐ!!」
「アホ馬てめぇぇぇええ!!!」
「やだぁ!それ一個しかないのよ!?」
「なにぃぃい!?」
「てへっ☆」

うっかり薬を飲み込んでもなお、反省の色のないディーノにスクアーロの鉄拳が落ちる。
……結果、1日中スクアーロは犬耳尻尾姿で過ごすはめになったのであるが、ディーノが反省をすることはなく、その日、ルッスーリアの手によって木の枝に吊るされた彼が目撃されたとかされなかったとか……。
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