外待雨(ほまちあめ)
甲高い金属音が、だだっ広い部屋に絶え間なく響き続けている。
先代ヴァリアーボスである剣帝テュールと、スクアーロとの激しい戦い。
オレは手を出すことも出来ずに、ただ、呆気にとられていた。
剣帝の攻撃は、早く、重く、スクアーロのはらわたを抉らんと繰り出される。
その全てを間一髪で避けながら、スクアーロもまた、速く、鋭く、テュールを攻め立てていく。
「スクアーロ……!」
「黙ってろガキがぁ!!」
何とかかんとか、必死に声を振り絞り、スクアーロの名を呼ぶ。
だがスクアーロは、ぞんざいに返事を返すだけで、戦いの手を止めようとはしない。
酷く体が重たく感じる。
これも、敵の能力なのか?
「スクアーロ!!これは夢なんだろ!?なら!スクアーロが無理して戦わないでも、オレが……!!」
「黙れ……!!」
「っ……!」
これはきっと、スクアーロの悪夢なんだ。
忌まわしき記憶。
思い出したくないこと。
なら、思い出さなくたって良い。
向き合わなくって良い。
スクアーロは今、一人で戦ってる訳じゃないんだから。
オレはそう思って叫ぶ。
でも、スクアーロはそれに対して、痛いくらいの殺気を飛ばしてくる。
敵の術中にはまってしまってる。
ヤバい、かもしんねぇ。
「いい加減に……正気に戻るのなっ!!」
「ゔお!?」
次郎が助走をつけてスクアーロに突進する。
オレは剣帝の背後まで近寄って、雨の炎で出来た小刀を振るった。
『がはっ……き、さまぁ……!!』
「人の夢を弄んで……調子のってんじゃねーのな……」
『ぐぅ……!!』
雨の炎は、敵の動きを絡め取って、徐々に、徐々に、力を奪っていく。
だが無力化するよりも早く、敵はオレの小刀を振り払って逃げた。
やっぱ、時雨金時がねぇと全力は出せねぇか……!
「スクアーロ!大丈夫か!?」
「……」
敵がオレ達から距離を取った隙に、スクアーロの側によって肩を叩く。
次郎の突進で倒れてから、立ち上がることもしないで呆然としているスクアーロは、ゆっくりとオレを見上げて、口を開いた。
「どうして……邪魔しやがった……」
「な……」
まだそんなことを言うのか……!?
一瞬頭に血が上って、スクアーロのことを殴ってやろうかと、拳を振り上げた。
「……一瞬、そう言おうかと思った。わりぃなぁ、助かった」
「た……え?」
「ありがとなぁ」
「……もう、平気なのな?」
「あ゙あ」
とん、と。
お礼と一緒に胸の中心辺りを、拳で柔らかく叩かれた。
スクアーロは、ちょっとだけ微笑んでから、キリッと表情を引き締めて敵を見据えた。
「支配されそうになっていたみてぇだなぁ。だが、お前のお陰で逃れることが出来たぁ。敵は支配権を奪われたことで弱っているはずだぁ」
「……うん」
「こっから追い詰める。手伝え」
「……うん!」
ありがとな、とか、助かった、とか。
そんな風に言われたのが、酷く嬉しかった。
少しは信頼されてる、のかな。
胸がホカホカと暖かくなるような感じ。
「行くぞぉ、山本」
「おう!」
さあ、反撃なのな。
スクアーロは剣を、オレは小刀を構えて、敵を睨み付ける。
肩を並べて、二人一緒に飛び出した。
先代ヴァリアーボスである剣帝テュールと、スクアーロとの激しい戦い。
オレは手を出すことも出来ずに、ただ、呆気にとられていた。
剣帝の攻撃は、早く、重く、スクアーロのはらわたを抉らんと繰り出される。
その全てを間一髪で避けながら、スクアーロもまた、速く、鋭く、テュールを攻め立てていく。
「スクアーロ……!」
「黙ってろガキがぁ!!」
何とかかんとか、必死に声を振り絞り、スクアーロの名を呼ぶ。
だがスクアーロは、ぞんざいに返事を返すだけで、戦いの手を止めようとはしない。
酷く体が重たく感じる。
これも、敵の能力なのか?
「スクアーロ!!これは夢なんだろ!?なら!スクアーロが無理して戦わないでも、オレが……!!」
「黙れ……!!」
「っ……!」
これはきっと、スクアーロの悪夢なんだ。
忌まわしき記憶。
思い出したくないこと。
なら、思い出さなくたって良い。
向き合わなくって良い。
スクアーロは今、一人で戦ってる訳じゃないんだから。
オレはそう思って叫ぶ。
でも、スクアーロはそれに対して、痛いくらいの殺気を飛ばしてくる。
敵の術中にはまってしまってる。
ヤバい、かもしんねぇ。
「いい加減に……正気に戻るのなっ!!」
「ゔお!?」
次郎が助走をつけてスクアーロに突進する。
オレは剣帝の背後まで近寄って、雨の炎で出来た小刀を振るった。
『がはっ……き、さまぁ……!!』
「人の夢を弄んで……調子のってんじゃねーのな……」
『ぐぅ……!!』
雨の炎は、敵の動きを絡め取って、徐々に、徐々に、力を奪っていく。
だが無力化するよりも早く、敵はオレの小刀を振り払って逃げた。
やっぱ、時雨金時がねぇと全力は出せねぇか……!
「スクアーロ!大丈夫か!?」
「……」
敵がオレ達から距離を取った隙に、スクアーロの側によって肩を叩く。
次郎の突進で倒れてから、立ち上がることもしないで呆然としているスクアーロは、ゆっくりとオレを見上げて、口を開いた。
「どうして……邪魔しやがった……」
「な……」
まだそんなことを言うのか……!?
一瞬頭に血が上って、スクアーロのことを殴ってやろうかと、拳を振り上げた。
「……一瞬、そう言おうかと思った。わりぃなぁ、助かった」
「た……え?」
「ありがとなぁ」
「……もう、平気なのな?」
「あ゙あ」
とん、と。
お礼と一緒に胸の中心辺りを、拳で柔らかく叩かれた。
スクアーロは、ちょっとだけ微笑んでから、キリッと表情を引き締めて敵を見据えた。
「支配されそうになっていたみてぇだなぁ。だが、お前のお陰で逃れることが出来たぁ。敵は支配権を奪われたことで弱っているはずだぁ」
「……うん」
「こっから追い詰める。手伝え」
「……うん!」
ありがとな、とか、助かった、とか。
そんな風に言われたのが、酷く嬉しかった。
少しは信頼されてる、のかな。
胸がホカホカと暖かくなるような感じ。
「行くぞぉ、山本」
「おう!」
さあ、反撃なのな。
スクアーロは剣を、オレは小刀を構えて、敵を睨み付ける。
肩を並べて、二人一緒に飛び出した。