パロシリーズ
ざりっと、砂利が音を立てます。
スクアーロは人力車から降り立つと、仁王立ちをして道の先を睨みます。
「……はっ、ここが野獣の住処だなぁ?」
「そうだけど……、スクアーロマジで行くのか?」
目の前に立つ巨大なお城を見上げて、スクアーロはにたりと笑います。
悪役も真っ青な悪人面です。
跳ね馬ディーノは近くの木の下に車を停めると、恐々とお城を見上げ、スクアーロに擦り寄りました。
ディーノはとても不安そうな表情をしています。
「ったり前だぁ。
ここでオレが行かなくて、他の誰かが犠牲になったりしたら、寝覚めが悪いだろうがぁ。
お゙ら、さっさと行くぞぉ。」
「そ、そうだな……。
スクアーロ、オレの後ろにしっかり着いてこいよ!
ちゃんと護ってやるかるな!」
「よし、ちゃんと盾になれよ。」
「おう!……え?」
どうやらスクアーロが、今後ディーノを頼もしく思うことはなさそうです。
盾呼ばわりされて凹むディーノを連れて、彼女は堂々と大きな玄関扉を叩きました。
「ゔお゙ぉい!出てきやがれ野獣!!
テメーのネジ曲がった根性、このオレが叩き直してやる!」
「ちょーっ!!初対面なんだからもうちょっと柔らかくいこうぜ!?」
「どうせぶちのめすんだから、その必要はねぇだろぉ?」
「どんだけ強気なの!?」
男らしく正々堂々と、これもまた、彼女のモットーなのです。
お城のドアの向こうからは、ガシャンドゴンと、何やら物騒な音が聞こえてきています。
震えそうになる脚を叱咤して、ディーノは彼女を護ろうと、腕で自分の背中に庇って、ドアを睨み付けました。
そうです、彼はやれば出来る子なのです。
「く……来るぞ……!」
ついに、一際大きな音を立ててドアが揺れました。
ギギ……と軋みながら、樫の木のドアがゆっくりと開きます。
中から出てきたのは……、カラフルな髪の毛をモヒカンにした男の人でした。
「あ、あら……もしかして新しく来てくれた子かしら……?」
どうやら、オカマさんのようです。
何故かボロボロになっている彼(彼女?)の言葉に二人は首を傾げます。
「うちの館の主人が、新しく女の子を呼んだって聞いてたんだけどぉ……。
私、聞き間違えちゃったのかしら。
男の子だったのねん。
それに二人もっ!
助かるわぁ~♪」
「お、男の子……。」
「お、女の子です!
こいつはれっきとした女の子です!」
「え?……あら!」
どうやらオカマさんは、スクアーロを男の子と間違えてしまったようです。
ひっそりと落ち込むスクアーロに気付いたディーノは、慌てて訂正します。
オカマさんも気付いたようで、慌てて謝りました。
「ご、ごめんなさいね!
あら本当、可愛い子じゃないの~!
ボスったらツイてるわねぇ♪」
「ボス……?」
「もしかして獣みたいな顔した……?」
「それは禁句よぉ!
でもその人で合ってるわ!
もうさっきから機嫌悪くて困ってたのよね!
レヴィもマモちゃんもベルちゃんも逃げちゃって……ガフゥ!?」
「ギャー!!オカマさーん!!」
グチグチと口を尖らせて文句を言っていたオカマさんが、突然ガクリと崩れ落ちます。
その後頭部には、何故か凹んだ鍋が張り付いています。
一体どうしたのでしょう?
「な、なんだぁ!?」
「……カスが、仕事をサボって何油売ってやがる。」
「あ……で、出た……!!」
オカマさんの死体……ではなく、気絶した体を乗り越えて現れたのは、ディーノや家光お父さんの言っていた通り、野獣のような恐ろしい顔をした大男でした。
赤い瞳がギラギラと輝き、鋭い牙を口から覗かせています。
なんと恐ろしい男でしょう。
ディーノはびくりと跳ね上がりましたが、それでも必死に彼女を護ろうと男に向き合います。
しかし肝心のスクアーロは、男を見てキラキラと顔を輝かせていました。
「つ、強そう……!」
「え……え?
それは、そうかもだけど、あのスクアーロさん、なんでそんなに嬉しそうなの!?」
「……テメー、この間の男の娘か。
さっさと中に入れ。
カスどもが逃げたせいで、使用人が足りてねぇんだ。」
「働く!楽しそう!強そう!!」
「どうしたんだよスクアーロ!
コメントが小学生みたいになってるぞ!?」
スクアーロはどうやら、強そうな野獣のことが気に入ってしまったようです。
嬉しそうにルンルンと中に入っていく彼女を追って、ディーノも慌てて中に入ります。
オカマさんは置き去りです。
「まずは酒とつまみを持ってこい。」
「わかったぁ!」
スクアーロはとても楽しそうに働きます。
元々家事が得意な彼女には、うってつけの仕事だったようです。
そうして3人は愉快に楽しく幸せに、大きなお城で一緒に暮らしましたと……
「ちょっと待て!
めでたしめでたし、で終われるか!」
「あ゙あ?なんだよディーノ。
突然叫びだして。」
「良いかスクアーロ!これを見ろ!」
「あ?んだこれ?」
「これは遠くの景色が見られる鏡だ!
これで家の様子を見てみるぜ。」
だんっとディーノが鏡を置きます。
大人しく座ってその鏡を見ていたスクアーロは、はっと目を見開きました。
鏡の中には、自分の実家と、家族達が映っている。
『おいツナ!見ろ!
父さんこれでも料理できるんだぞ!』
『え……予想を外れて美味しそう……。』
『わー、夜御飯豪勢だねー♪
いただきまーす!』
『よーし!食え食え!』
『うん!いただきます!』
なかなか美味しそうな御飯が並ぶ食卓、暖かな灯りに照らされて、楽しそうに御飯を食べる家族達。
「……楽しそう、だなぁ。」
「……思ってた以上に。」
ここは家族が寂しがっているところが映されるべきなのでしょうが、残念ながら、家族は逞しく生活しているようです。
「オレが居なくても……元気そうだなぁ。」
「スクアーロ……。」
そう呟くスクアーロの顔は、ディーノには少し寂しそうに見えました。
慰めなくては!
そう思ったディーノでしたが、どうすればスクアーロが元気を出してくれるのか、すぐに答えを出すことは出来ません。
一生懸命に考えて、とりあえず彼女を力一杯抱き締めてあげることにしました。
「スクアーロ!」
「えっ……うぉ!?」
「オレは!オレは、スクアーロが居てくれないと寂しい!
元気じゃなくなる!」
「はあ?」
ぎゅうっと強く抱き締めるディーノに、スクアーロは驚いて体を固まらせました。
必死に訴える彼の叫びは、確かにスクアーロの耳に届いているのに、驚いたせいか、上手く内容が飲み込めません。
「だ、だから……、そんな寂しい顔するなよ……な!?」
「し、してねぇよ!!」
「してるって!
オレ、スクアーロのこと、家族よりも、野獣よりもずっとずっと大事にする!
だから……だから!」
「うるせぇ、ドカス。」
「え゙……へぶっ!」
「っと……!?」
突然、ディーノの背後から現れた野獣が、彼の後頭部を思いっきり蹴りつけました。
ディーノは思わぬ攻撃に、スクアーロの方へとつんのめっていきます。
転んできたディーノをスクアーロは危なげなく受け止めました。
男らしいですね。
「ス、スクアーロ!ごめん!大丈夫か!?」
「あ、あ……平気だ……。」
「もう!何すんだよお前!」
「テメーらが五月蝿いのが悪い。」
「あっ!おいどこに行くんだよ!?」
「ディーノ……。」
「え?」
蹴るだけ蹴って、勝手に部屋を出ていった野獣に叫んだディーノの手を、スクアーロは唐突に掴みます。
振り向いたディーノの肩を、スクアーロは強く掴んで、近くの壁に押さえ付けました。
「うわっ!?」
「ディーノ……その、本当か?」
「へ?」
「本当に、オレが居ないと寂しいって、思うのか?」
「?えーっと、本当だぜ?
スクアーロが傍に居てくれないと、すっげー寂しい……。」
「……ん。」
ディーノの言葉に満足げに笑って、スクアーロはぽふんと彼の胸元に顔を埋めました。
「嬉しい……。」
「え?何て言った?」
「何でもねぇ、バカ。」
「えー!教えてくれたって良いだろ!?」
「言わねー。」
クスクスとスクアーロが笑います。
不満げだったディーノも、それを見て幸せそうに笑います。
スクアーロ達や野獣達が、これからどうなるのかは、誰にもわかりません。
ですが、幸せそうに笑う二人に対しては、この言葉がぴったり似合うでしょう。
――めでたし、めでたし。
きっと彼らは、この先も、明るく楽しく、幸せに暮らしていくことでしょう。
スクアーロは人力車から降り立つと、仁王立ちをして道の先を睨みます。
「……はっ、ここが野獣の住処だなぁ?」
「そうだけど……、スクアーロマジで行くのか?」
目の前に立つ巨大なお城を見上げて、スクアーロはにたりと笑います。
悪役も真っ青な悪人面です。
跳ね馬ディーノは近くの木の下に車を停めると、恐々とお城を見上げ、スクアーロに擦り寄りました。
ディーノはとても不安そうな表情をしています。
「ったり前だぁ。
ここでオレが行かなくて、他の誰かが犠牲になったりしたら、寝覚めが悪いだろうがぁ。
お゙ら、さっさと行くぞぉ。」
「そ、そうだな……。
スクアーロ、オレの後ろにしっかり着いてこいよ!
ちゃんと護ってやるかるな!」
「よし、ちゃんと盾になれよ。」
「おう!……え?」
どうやらスクアーロが、今後ディーノを頼もしく思うことはなさそうです。
盾呼ばわりされて凹むディーノを連れて、彼女は堂々と大きな玄関扉を叩きました。
「ゔお゙ぉい!出てきやがれ野獣!!
テメーのネジ曲がった根性、このオレが叩き直してやる!」
「ちょーっ!!初対面なんだからもうちょっと柔らかくいこうぜ!?」
「どうせぶちのめすんだから、その必要はねぇだろぉ?」
「どんだけ強気なの!?」
男らしく正々堂々と、これもまた、彼女のモットーなのです。
お城のドアの向こうからは、ガシャンドゴンと、何やら物騒な音が聞こえてきています。
震えそうになる脚を叱咤して、ディーノは彼女を護ろうと、腕で自分の背中に庇って、ドアを睨み付けました。
そうです、彼はやれば出来る子なのです。
「く……来るぞ……!」
ついに、一際大きな音を立ててドアが揺れました。
ギギ……と軋みながら、樫の木のドアがゆっくりと開きます。
中から出てきたのは……、カラフルな髪の毛をモヒカンにした男の人でした。
「あ、あら……もしかして新しく来てくれた子かしら……?」
どうやら、オカマさんのようです。
何故かボロボロになっている彼(彼女?)の言葉に二人は首を傾げます。
「うちの館の主人が、新しく女の子を呼んだって聞いてたんだけどぉ……。
私、聞き間違えちゃったのかしら。
男の子だったのねん。
それに二人もっ!
助かるわぁ~♪」
「お、男の子……。」
「お、女の子です!
こいつはれっきとした女の子です!」
「え?……あら!」
どうやらオカマさんは、スクアーロを男の子と間違えてしまったようです。
ひっそりと落ち込むスクアーロに気付いたディーノは、慌てて訂正します。
オカマさんも気付いたようで、慌てて謝りました。
「ご、ごめんなさいね!
あら本当、可愛い子じゃないの~!
ボスったらツイてるわねぇ♪」
「ボス……?」
「もしかして獣みたいな顔した……?」
「それは禁句よぉ!
でもその人で合ってるわ!
もうさっきから機嫌悪くて困ってたのよね!
レヴィもマモちゃんもベルちゃんも逃げちゃって……ガフゥ!?」
「ギャー!!オカマさーん!!」
グチグチと口を尖らせて文句を言っていたオカマさんが、突然ガクリと崩れ落ちます。
その後頭部には、何故か凹んだ鍋が張り付いています。
一体どうしたのでしょう?
「な、なんだぁ!?」
「……カスが、仕事をサボって何油売ってやがる。」
「あ……で、出た……!!」
オカマさんの死体……ではなく、気絶した体を乗り越えて現れたのは、ディーノや家光お父さんの言っていた通り、野獣のような恐ろしい顔をした大男でした。
赤い瞳がギラギラと輝き、鋭い牙を口から覗かせています。
なんと恐ろしい男でしょう。
ディーノはびくりと跳ね上がりましたが、それでも必死に彼女を護ろうと男に向き合います。
しかし肝心のスクアーロは、男を見てキラキラと顔を輝かせていました。
「つ、強そう……!」
「え……え?
それは、そうかもだけど、あのスクアーロさん、なんでそんなに嬉しそうなの!?」
「……テメー、この間の男の娘か。
さっさと中に入れ。
カスどもが逃げたせいで、使用人が足りてねぇんだ。」
「働く!楽しそう!強そう!!」
「どうしたんだよスクアーロ!
コメントが小学生みたいになってるぞ!?」
スクアーロはどうやら、強そうな野獣のことが気に入ってしまったようです。
嬉しそうにルンルンと中に入っていく彼女を追って、ディーノも慌てて中に入ります。
オカマさんは置き去りです。
「まずは酒とつまみを持ってこい。」
「わかったぁ!」
スクアーロはとても楽しそうに働きます。
元々家事が得意な彼女には、うってつけの仕事だったようです。
そうして3人は愉快に楽しく幸せに、大きなお城で一緒に暮らしましたと……
「ちょっと待て!
めでたしめでたし、で終われるか!」
「あ゙あ?なんだよディーノ。
突然叫びだして。」
「良いかスクアーロ!これを見ろ!」
「あ?んだこれ?」
「これは遠くの景色が見られる鏡だ!
これで家の様子を見てみるぜ。」
だんっとディーノが鏡を置きます。
大人しく座ってその鏡を見ていたスクアーロは、はっと目を見開きました。
鏡の中には、自分の実家と、家族達が映っている。
『おいツナ!見ろ!
父さんこれでも料理できるんだぞ!』
『え……予想を外れて美味しそう……。』
『わー、夜御飯豪勢だねー♪
いただきまーす!』
『よーし!食え食え!』
『うん!いただきます!』
なかなか美味しそうな御飯が並ぶ食卓、暖かな灯りに照らされて、楽しそうに御飯を食べる家族達。
「……楽しそう、だなぁ。」
「……思ってた以上に。」
ここは家族が寂しがっているところが映されるべきなのでしょうが、残念ながら、家族は逞しく生活しているようです。
「オレが居なくても……元気そうだなぁ。」
「スクアーロ……。」
そう呟くスクアーロの顔は、ディーノには少し寂しそうに見えました。
慰めなくては!
そう思ったディーノでしたが、どうすればスクアーロが元気を出してくれるのか、すぐに答えを出すことは出来ません。
一生懸命に考えて、とりあえず彼女を力一杯抱き締めてあげることにしました。
「スクアーロ!」
「えっ……うぉ!?」
「オレは!オレは、スクアーロが居てくれないと寂しい!
元気じゃなくなる!」
「はあ?」
ぎゅうっと強く抱き締めるディーノに、スクアーロは驚いて体を固まらせました。
必死に訴える彼の叫びは、確かにスクアーロの耳に届いているのに、驚いたせいか、上手く内容が飲み込めません。
「だ、だから……、そんな寂しい顔するなよ……な!?」
「し、してねぇよ!!」
「してるって!
オレ、スクアーロのこと、家族よりも、野獣よりもずっとずっと大事にする!
だから……だから!」
「うるせぇ、ドカス。」
「え゙……へぶっ!」
「っと……!?」
突然、ディーノの背後から現れた野獣が、彼の後頭部を思いっきり蹴りつけました。
ディーノは思わぬ攻撃に、スクアーロの方へとつんのめっていきます。
転んできたディーノをスクアーロは危なげなく受け止めました。
男らしいですね。
「ス、スクアーロ!ごめん!大丈夫か!?」
「あ、あ……平気だ……。」
「もう!何すんだよお前!」
「テメーらが五月蝿いのが悪い。」
「あっ!おいどこに行くんだよ!?」
「ディーノ……。」
「え?」
蹴るだけ蹴って、勝手に部屋を出ていった野獣に叫んだディーノの手を、スクアーロは唐突に掴みます。
振り向いたディーノの肩を、スクアーロは強く掴んで、近くの壁に押さえ付けました。
「うわっ!?」
「ディーノ……その、本当か?」
「へ?」
「本当に、オレが居ないと寂しいって、思うのか?」
「?えーっと、本当だぜ?
スクアーロが傍に居てくれないと、すっげー寂しい……。」
「……ん。」
ディーノの言葉に満足げに笑って、スクアーロはぽふんと彼の胸元に顔を埋めました。
「嬉しい……。」
「え?何て言った?」
「何でもねぇ、バカ。」
「えー!教えてくれたって良いだろ!?」
「言わねー。」
クスクスとスクアーロが笑います。
不満げだったディーノも、それを見て幸せそうに笑います。
スクアーロ達や野獣達が、これからどうなるのかは、誰にもわかりません。
ですが、幸せそうに笑う二人に対しては、この言葉がぴったり似合うでしょう。
――めでたし、めでたし。
きっと彼らは、この先も、明るく楽しく、幸せに暮らしていくことでしょう。