隣には君
「……ったく、可愛いんだから。」
腕の中で寝息を立てるスクアーロの頭を撫でて、オレはそんなことを呟いていた。
窓からコイツが入ってきた時はビックリしたけど、まさか誕生日を祝うためだけに、自分の元へと訪れてくれたなんて、ちょっとどころか凄く嬉しい。
寝惚けた振りしてキスを求めた事を、彼女は気付いているのだろうか。
オレがこんなに嬉しかったんだってことを、コイツはわかってくれるだろうか。
屋敷の人間を起こさないようにか、いつもよりずっと声を抑えて、オレの肩をぐいぐい押して、なんとか抜け出そうともがいている様子が楽しくて、ついつい悪乗りした挙げ句に、スクアーロを抱えたまま寝た振りをしてしまった。
途中鳴った彼女の部下からの電話に、今日彼女を帰さないことを宣言して切ったりもした。
仕事人間の彼女には悪いけれど、折角の誕生日なんだ。
今日くらい、一緒に居させてくれたって良いだろう?
相当疲れているのか、抜け出すのを諦めたスクアーロは、オレの腕の中でぐっすりと寝ている。
今日はいつもと比べて随分軽装だけど、それでもだいぶ中に着込んでいる彼女の抱き心地はあんまり良くない。
「……脱がしちゃえ。」
身体中に仕込んでる武器と防具を外して、ベッドの隅に放り投げる。
サラシは……流石に外したら怒られそうだ。
上着を脱がせて、シャツの首元を緩めてやったところで、オレは手を止めた。
だいぶ細くなった……つーかいつも着込みすぎなんだよコイツは……。
「それにしても、起きねぇな……。」
結構動かしたと思うんだけど、スクアーロは少し呻き声をあげるくらいで、起きる気配すらない。
「……そーだ。」
眠る彼女を見ていて思い付いた。
もそもそとサイドテーブルにまで手を伸ばして、自分のケータイを取る。
とある人物にメールで頼み事をしてみる。
起きているだろうか、心配だったのだが、幸いメールの返信はすぐに来た。
了解の文字に、オレは心を踊らせる。
メールで感謝を伝えてから、また彼女の体を腕の中に閉じ込めて目を閉じた。
髪の毛に顔を埋めると、いつもと同じ、微かに感じる花のような甘い香り。
「おやすみ、スクアーロ。」
その日はとても、よく眠ることが出来た。
そして翌朝、オレの部屋にはスクアーロの悲鳴が響き渡っていた。
* * *
朝、目を覚ました瞬間に、オレは違和感を覚える。
自分の使っているベッドとは違うベッドの上、ディーノの腕の中で、目覚める。
自分の記憶を探って、夜にあったことを思い出す。
ディーノに捕まって、抜け出すことが出来なくてそのまま寝てしまったんだったか。
腹に掛かるディーノの腕をそろそろと退かして、体を起こす。
……起こそうと、した。
「スクアーロ、なーに勝手に帰ろうとしてんだよ?」
「ディーノ……起きてたのか?」
「うん、30分くらい前から。
起きてスクアーロの寝顔見てた。」
「は……?趣味悪いなお前。」
「いやいや、結構可愛かったぜ?」
起きるより早く、退かしたハズの腕が脇腹に回って、強く引き倒される。
再びベッドに寝転ぶ羽目になったオレを、楽しそうに笑いながら見ているのは、寝ていると思っていたディーノだった。
「夜、ゴメンな……?
無理なこと言って、仕事の邪魔しちまってさ。」
「……寝惚けてたんだろぉ。
別に良い。」
「さんきゅ。
んじゃ、夕方までもヨロシク頼むぜ!」
「あぁ……あ゙?」
「ミーナ~!スクアーロ起きたぜー!」
「良し来た任せなさい!」
「はあ!?」
それは余りにも唐突だった。
ディーノの言葉が上手く飲み込めなくて、首を傾げる。
その直後に、部屋のドアがけたたましい音を立てて開き、何故かその向こうから旧友が入ってくる。
その後に続くようにして入ってきた数人の女性に腕を掴まれて、あれよあれよと言う間に、オレは大量のドレスが並ぶ個室へと連れていかれる。
「ちょっ!ま……どう言うことだよディーノぉぉおおお!!!」
「オレも準備して待ってるからな~!」
オレの叫びは無視されて、ミーナ達にズルズルと引き摺られていったのであった。
腕の中で寝息を立てるスクアーロの頭を撫でて、オレはそんなことを呟いていた。
窓からコイツが入ってきた時はビックリしたけど、まさか誕生日を祝うためだけに、自分の元へと訪れてくれたなんて、ちょっとどころか凄く嬉しい。
寝惚けた振りしてキスを求めた事を、彼女は気付いているのだろうか。
オレがこんなに嬉しかったんだってことを、コイツはわかってくれるだろうか。
屋敷の人間を起こさないようにか、いつもよりずっと声を抑えて、オレの肩をぐいぐい押して、なんとか抜け出そうともがいている様子が楽しくて、ついつい悪乗りした挙げ句に、スクアーロを抱えたまま寝た振りをしてしまった。
途中鳴った彼女の部下からの電話に、今日彼女を帰さないことを宣言して切ったりもした。
仕事人間の彼女には悪いけれど、折角の誕生日なんだ。
今日くらい、一緒に居させてくれたって良いだろう?
相当疲れているのか、抜け出すのを諦めたスクアーロは、オレの腕の中でぐっすりと寝ている。
今日はいつもと比べて随分軽装だけど、それでもだいぶ中に着込んでいる彼女の抱き心地はあんまり良くない。
「……脱がしちゃえ。」
身体中に仕込んでる武器と防具を外して、ベッドの隅に放り投げる。
サラシは……流石に外したら怒られそうだ。
上着を脱がせて、シャツの首元を緩めてやったところで、オレは手を止めた。
だいぶ細くなった……つーかいつも着込みすぎなんだよコイツは……。
「それにしても、起きねぇな……。」
結構動かしたと思うんだけど、スクアーロは少し呻き声をあげるくらいで、起きる気配すらない。
「……そーだ。」
眠る彼女を見ていて思い付いた。
もそもそとサイドテーブルにまで手を伸ばして、自分のケータイを取る。
とある人物にメールで頼み事をしてみる。
起きているだろうか、心配だったのだが、幸いメールの返信はすぐに来た。
了解の文字に、オレは心を踊らせる。
メールで感謝を伝えてから、また彼女の体を腕の中に閉じ込めて目を閉じた。
髪の毛に顔を埋めると、いつもと同じ、微かに感じる花のような甘い香り。
「おやすみ、スクアーロ。」
その日はとても、よく眠ることが出来た。
そして翌朝、オレの部屋にはスクアーロの悲鳴が響き渡っていた。
* * *
朝、目を覚ました瞬間に、オレは違和感を覚える。
自分の使っているベッドとは違うベッドの上、ディーノの腕の中で、目覚める。
自分の記憶を探って、夜にあったことを思い出す。
ディーノに捕まって、抜け出すことが出来なくてそのまま寝てしまったんだったか。
腹に掛かるディーノの腕をそろそろと退かして、体を起こす。
……起こそうと、した。
「スクアーロ、なーに勝手に帰ろうとしてんだよ?」
「ディーノ……起きてたのか?」
「うん、30分くらい前から。
起きてスクアーロの寝顔見てた。」
「は……?趣味悪いなお前。」
「いやいや、結構可愛かったぜ?」
起きるより早く、退かしたハズの腕が脇腹に回って、強く引き倒される。
再びベッドに寝転ぶ羽目になったオレを、楽しそうに笑いながら見ているのは、寝ていると思っていたディーノだった。
「夜、ゴメンな……?
無理なこと言って、仕事の邪魔しちまってさ。」
「……寝惚けてたんだろぉ。
別に良い。」
「さんきゅ。
んじゃ、夕方までもヨロシク頼むぜ!」
「あぁ……あ゙?」
「ミーナ~!スクアーロ起きたぜー!」
「良し来た任せなさい!」
「はあ!?」
それは余りにも唐突だった。
ディーノの言葉が上手く飲み込めなくて、首を傾げる。
その直後に、部屋のドアがけたたましい音を立てて開き、何故かその向こうから旧友が入ってくる。
その後に続くようにして入ってきた数人の女性に腕を掴まれて、あれよあれよと言う間に、オレは大量のドレスが並ぶ個室へと連れていかれる。
「ちょっ!ま……どう言うことだよディーノぉぉおおお!!!」
「オレも準備して待ってるからな~!」
オレの叫びは無視されて、ミーナ達にズルズルと引き摺られていったのであった。