年明けの鮫!

冬の日射しが射し込む河原、銀髪ロン毛の外国人、もとい、スペルビ・スクアーロは何故か袴姿で綺麗な座礼を披露していた。

「明けましておめでとうございます。」
「明けましておめでとうございます!」

スクアーロの声に応える他の者達。
彼らもまた皆一様に和服を身に付けている。

「年が明けて2015年……物語の中のオレ達は年を取らずとも管理人は年を取る……。
時が止まってくれないだろうか……。
しかし、願いは虚しく時が止まることはありません。
ならば虚しく過ごすより、精一杯楽しんでしまいましょう。
新春ボンゴレクイズ大会、ここに開催だ野郎共ぉ!!」
「うおおおお!!!」

元日の並盛町。
何故かやたらとテンションの高いヴァリアーの隊員達とスクアーロ、そして何となく一緒に「おー……!」と言った並盛3人衆達の前には派手な色のクイズ番組でよく見るような台が置いてある。

「え……いやいやいや!これ何!?
どういう状況なの!?」
「日本の古くからの伝統行事として、正月には和服でクイズ大会を催すと聞いてなぁ。」
「それ間違ってるよー!!?
って言うかさっき言ってた前置きみたいなの何!?管理人って誰!!?」

今年初ツッコミを披露する綱吉の横では、キャバッローネの組員達が解答ボタンを勢いよく叩きながら「正解は!?」「エチゴセイカ!!」などと言って遊んでいる。
正月には必ず流れるCMという意味ではもう伝統と言っても過言ではないような気もするが、それは断じて日本古来の伝統行事などではない。

「正月はほら……初詣とか餅つきとか凧上げとかだよ!」
「オレ達は仏教徒じゃねぇし餅つきは正月じゃなくて年末だろぉ。
それに凧上げはガキの遊びだぁ。」
「余計なところの知識は豊富!」

イタリア人の彼らは初詣には特に興味はないらしく、子供の遊びもする気はないようだ。
ちなみに餅つきは年末に新年に備えて行い、そこで鏡餅などを作ったりするわけである。
正月にやっていたら遅いのだ。
スクアーロは懐から取り出した扇子を台に打ち付け、騒ぐ参加者達の注意を引く。

「ゔお゙ぉい、いいかテメーらぁ。
これからオレが問題出してやるから適当に答えやがれぇ。
一番正解が多かったチームには賞品が出るそうだぜぇ。
ちなみに今回のクイズ大会の監修はリボーンだぁ。」
「聞くまでもないよ!
て言うかオレ達もこれ参加するの!!?」
「当たり前だぞアホツナめ。
ここで10代目ファミリーの優位を示さねぇとこれからドンドン他の奴らにデカイ顔されちまうからな。」
「ぶふっ!!知らないよそんなこと!」

綱吉の言う通り、聞くまでもなく今回の首謀者もまた、あのリボーンで、綱吉の頭を蹴ってから台の上に着地した彼は、当然と言うような顔で言った。

「折角の正月なんだからオレの事を楽しませろよ。」

とんでもなく自己中心的な主張である。
しかし何故かその主張に乗っかって来た者がいた。

「そうだぜツナ、折角の正月だ。
楽しんで損はねーだろ?」
「え……ディーノさん!?」

ツナの横からそう声を掛けてニカリと笑ったのは、彼の兄弟子であるディーノだ。

「こんな機会でもないと、全員集まることなんてないだろ?
親睦を深めるのも良いじゃねぇか、ツナ。」
「ディーノさん……!」

流石兄弟子、言うことが違う……!
密かに心の中で感動する綱吉。
そんな彼の横で、ディーノは出題者席に向かって手を振り叫ぶ。

「そんなわけだからスクアーロー!
オレが勝ったら振り袖着てくれ!」
「下心しか見えませんよディーノさん!!」

流石兄弟子、などと思った数秒前の自分を殴りたい、そう思いながら渾身のツッコミをする綱吉だったが、ディーノの視線を追って出題者席に目を向けた瞬間、衝撃の光景が見えてあんぐりと口を開けた。

「よぉ家光このゴリラ野郎新年から何薄汚ねぇ顔を晒していやがるんだぁ?あ゙あん!!?」
「そっちこそ新年早々から何似合わねぇコスプレしていやがるんだスクアーロてめぇさっさと祖国に帰りやがれコラァ!奈々が食事に呼んでるんだよ畜生が!!」
「喜んでお伺いさせてもらうぞゴルァ!!」
「お待ちしといてやるぞゴルァ!!」
「それは果たして喧嘩なのーっ!!?」

一体いつ現れたのか、スクアーロ同様袴姿の家光と彼女が、額をぶつけ合うようにしてヤンキーも裸足で逃げ出しそうなドスの効いた声で喧嘩をしている。
喧嘩と言うか途中お誘いもあったのだが雰囲気だけで言えば一触即発だ。

「盛り上がってきたのな!」
「これは盛り上がるって言わないよ!!」
「10代目の晴れ舞台を邪魔しやがって……!
例え10代目のお父様と言えども許せません!!
オレちょっと果たしてきます10代目!!」
「獄寺君もじっとしててーーーっ!!!」

カオスと言う言葉がピッタリの光景に、綱吉は頭を抱える。
新年初っぱなからこれって……!

「もういい加減にしてよ!!……って、あれ?」

気付けば綱吉は、パジャマ姿で布団から起き上がり叫んでいた。
これは……夢?
安心した綱吉を階下から奈々が呼ぶ。

「ツっくーん!お友達来てるわよー!」
「え……!」

時計を確認するともう10時を過ぎている。
慌てて着替えて階段を降りると、待っていた山本と獄寺が暖かく出迎えた。

「明けましておめでとうっす!10代目!!」
「おめでとうなのなツナ!」
「うん!明けましておめでとう!!」
「ところでリボーンさんから河原に呼び出されているんですが……」
「絶対に行かないからね!?」

幸いにも、無理矢理連れていかれた先でクイズ大会が行われることはなかったが、代わりに盛大な凧上げ大会が開かれたのだった。
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