XANXUSハピバ2014

「さて、そろそろ『あの日』が近付いてきたぁ……。
テメーら、わかってんな?」
「勿論よスクちゃん。
私達が忘れるわけないでしょ?」
「当たり前だ!
こんな大切な日を、このオレが忘れると思ったのか!?」
「……しし、何の日だっけ?」
「ム……、何の日だったかな……。」
「ちょっと二人とも、忘れちゃったの!?
10月と言えば!ボスの誕生日じゃないのぉ!」
「……あぁ、そっか。
そうだったね。」

通りで、この3人に気合いが入っているわけだ。
XANXUSが封印されている間は、彼らも取り立てて騒ぐことは無かったが、その分、今年こそはと意気込んでいるらしい。

「まあ、この8年間一度もお祝いできてないんだし、僕もちょっとくらいなら手伝ってあげても良いよ。」
「……ん?いや、これまでも個人的には色々してたぜ?」
「え?」

マーモンはまあ無料で手伝うつもりなんて微塵もなかったのだが、彼の言葉よりもまず、幹部達はスクアーロの言葉に食い付いた。

「何してたの?」
「ああ?……毎年花束添えたりとか。」
「それって命日にすることじゃないかしら……。」
「アイツが好きだった酒を置いたりとか。」
「スクアーロ貴様……一人でそんなことをしていたのか!?」
「そうだよ。それ誕生日にすることと違う……」
「何故オレを誘わなかった!!」
「しし、怒るとこ違くね?」

コイツらの行動はおかしい。
そう考えたマーモンだが、彼らは異常が正常である。
気にするだけ無駄なのだ。

「まあ、今までの話は置いといて、ザンザスの誕生日、どうやって祝う?」
「そうねぇ~、普通なら、美味しいものを食べるとか、特別な場所に出掛けるとか、パーティを開くとか……。」
「因みにザンザスは毎日高級な食材を食べ、美味い酒を飲み、誕生日当日はボンゴレがパーティを開くらしいなぁ。」
「出掛けるのもお好きではないからな……。」
「しし、思ってたより難易度たっけーな。」
「た、確かに……。」

考えてみれば、XANXUSという男は食や酒、そしてボンゴレボスの座以外には、驚くほどに興味がない。
普段やることと言えば、仕事か、飲みか、食事か、然もなくばトレーニングである。
プレゼントをしようにも、並み大抵のものでは彼のお眼鏡には叶わないし、下手をすればその場でプレゼントを贈った本人ごとカッ消されるだけである。
「と言うわけで、それぞれ何が良いか意見を聞きてぇと思う。
テメーら、それぞれプレゼントの案を出していけぇ。」
「しし、酒?」
「女だ!」
「金だね。」
「それぞれの個性がとてもよく出ている答えだと思うがまるまる全てことごとく端から端まで却下だぁ!!」
「みんな甘いわね。
ボスへのプレゼントは勿論『愛』よぉ!!
私の愛を捧げ……」
「よぉし、カッ消されてこぉい!」

スクアーロは直感する。
コイツらじゃマトモな意見が出ない。

「ム、そういうスクアーロは何か案ないのかい?」
「はっ、ザンザスが欲しているモノなんざ1つしかねぇだろぉ。
ボンゴレボスの座だぁ!!」
「誕生日プレゼントにしては重すぎるよ!!」
「そうなんだよな……。
だからここで他の案が出なかったら取りに行こうかと……」
「そんなちょっと予約してたDVD取りに行くみたいなノリで!?」

訂正である。
スクアーロが居たってマトモな意見は出そうにない。
マトモな意見は出そうにないが、彼らは彼らなりにXANXUSに喜んでもらうために額を突き合わせて必死に考える。
それから数時間、色んな意見が出た。
元気を出してもらうために薬膳料理のプレゼント(食べないだろう)、下の意味で元気を出してもらうためにスッポン料理のプレゼント(尚更食べないだろう、というか必要がない)、普段はなかなか行けないような……そう、例えば北極なんてどうかしら♪という意見は、北極がカッ消されるとして即刻却下されたし、ならば日々の勤めで疲れた体を温泉で癒してもらおうという案はその案を出した時点で殺されると言うことで却下された。
そして様々な提案がなされ、その後の誕生日当日、10月10日、彼らを代表して、スクアーロがXANXUSの前に立ってこう言った。

「誕生日プレゼントの代わりに今日は何しても良いぜ!
オレ殴られても文句言わないからなぁ!」
「は?死ね。」
「ごふっ!よ、避けたりもしねぇぜ!」
「っ!?気持ちわりぃ。」
「がはっ!!やっぱりお前のストレートはレベルがちげぇな!」
「っ!!?」

その年の誕生日は決して忘れることはないだろう。
後にXANXUSはそう語ったという。
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