夢主のお名前設定
復讐は七味唐辛子味
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
バスケ部はまだ、朝練の途中だったらしい。
ボールの跳ねる音、部員の走る震動が伝わってくる。
だがその音は、いつもよりもずっと大人しいように思う。
理由はすぐに想像がついた。
勢いよく体育館の扉を開ける。
近くにいた女マネが、ぎょっとした顔でこちらを見て固まった。
練習中の部員も一瞬硬直していたけれど、すぐに復活して詰め寄ってくる。
「て、てめー……!!」
「うるさい。」
肩を怒らせて迫ってきた男子の脇を早足で通り抜けて、唖然とする人びとの間を抜けていく。
奥の方には、小さな人だかりが出来ている。
私の目的はそこにある。
「だっておかしいじゃない!
蛍ちゃんはそんなことしない!」
「昨日襲われたのは多々良さんなんです。
僕も確認してます。」
「それに蛍ちゃんはそんな回りくどいことしないよ!
嫌いな人には正々堂々真っ正面から嫌いって言うタイプだもん!」
「あの女が何だとか知らないっスけど、二人とも騙されてるんスよ!!
ルリっちが何されたのか、聞いてたでしょ!?
それがあの女の本質なんス!!」
「瑠璃、もう心配しなくていいからな。
今日からは行き帰り、オレ達がずっと守ってやる。」
「ありがとぉ……、みんな……。」
「桃井、黒子、お前達が信じている女はただのまやかしなのだよ。
現実に傷付いているのは、瑠璃子だ。
それが何よりの証拠なのだよ。」
「……二人の言うことを完全に否定する気はないが、被害が出ているのは確かなんだ。
あまり、多々良蛍に関わらないようにした方が良い。」
「あ、赤司君まで……何言ってるの!?」
中心からは、言い争う声が聞こえている。
庇ってくれるのは嬉しいけれども、桃井さんの私へのイメージはちょっとおかしくないかしらね……。
「蛍ちゃんは他人を使って襲うくらいなら喜んでキャットファイトするくらいの……」
「桃井さん、流石に私、そこまで血気盛んじゃないわ。」
「……え?蛍ちゃん!?」
「な……多々良さん、何で……!」
更に言い募る桃井さんの言葉を遮って、輪の中に割って入った。
瑠璃色の髪がさらりと揺れる。
強ばった顔が一瞬睨み付けてきたけれど、蘇芳はすぐに怯える演技をしながら青峰の影に隠れた。
「テメー……!
よくもノコノコと出てこれたな!!」
「黄瀬君!!」
「その化けの皮、今ここで剥がしてやる!」
「やめてよだいちゃん!!」
変わりに怒りの形相をして近寄ってきたのは、見るからに気の短そうな黄瀬と青峰。
私は二人に、にこりと笑いかけた。
「殴るの?良いわよ。ほら、どうぞ。」
「……は?」
「……反省してる、って面じゃあ、ねぇな。
何企んでやがる。」
「別に?
ただ、暴力沙汰を起こしたら、損をするのはあなた達だってことは、しっかりとその足りない脳ミソに入れておいた方が良いわよ。」
「……っ!!」
二人の額に青筋が浮かんでいるのをしっかりと視界に収めて、笑みを一段と深める。
「お早う、蘇芳瑠璃子。」
「な……なんの、用ぉ?
また、私に酷いことするのぉ……?」
「酷いこと?
あなたが、私にしようとしたような事、かしら?」
「!」
「……何の話だ、瑠璃子?」
部長の赤司君が視線を鋭くして、蘇芳に問い掛ける。
彼はまだ、正気の範疇にいるらしい。
問い掛けられた蘇芳は、怯える素振りを続けながら、わからないとばかりに首を左右に振っている。
「あら……昨日はあんなに怖い顔をしていたのに、まるで別人みたいね。
アカデミー賞並みの演技って、誉めてあげた方が良いのかしら。」
「な……なんのこと……?
わたし、怖いよぉ……!」
「大丈夫なのだよ、瑠璃子。
こいつ、正気とは思えない。」
それはこっちの台詞だわ、なのだよ電波男。
というか、それ口癖?
ダサいったらない。
頭に浮かぶ罵詈雑言。
無理矢理飲み込んで、緑頭の言葉は無視をしてやり過ごした。
「覚えてないのね?
残念……だけど、ちゃんと思い出させてあげるわ、蘇芳さん。」
「……え?」
「だから、あなたのしたこと、あなたの言葉、ここで一言漏らさず、思い出させてあげるって、そう言っているのよ。」
「な、何を……言って……!」
「ボイスレコーダー、私、いつも持ち歩いているから、ね。」
ポケットから、レコーダーを取り出す。
蘇芳の顔色が変わったのを見ながら、スイッチを押した。
『――「……ん、起きなさい。」
「っ……蛍さ……すいま、せん。」
「……ま、何があったかは後で聞いてあげるわ。
それより、これが何をしていたのか、気になると言ったわね。」
「そうだよぉ。」
「私は知らないわよ。
何故、私が知っていると思ったのかしら。」――』
流れてきた音声に、ざわりと人垣が揺れる。
その声は、明らかに瑠璃色の彼女のモノなのに、どうにも様子がおかしく聞こえる。
「こ、これは……?」
「黙って聞いてなさい、黄瀬涼太。」
動揺したような黄瀬に、ピシャリと一言叩き付けて黙らせる。
『――「っ!だってぇ、その人最近、地味で冴えない女に入れ込んでるって噂で有名なんだってよぉ?」
「それで、私がこれに命令して動かしてる、と、思ったの。
確かに、私は『地味』で『冴えない』かもしれないけれど……酷いわ、それだけで私を疑ったの?」
「あらぁ?でもぉ、私の周りを嗅ぎ回るような人ってぇ、あなた達くらいしか思い付かないんだもぉん。」
「ふぅん、短慮ね。
まあ、結果これが私のだと正しい結論が出されてしまったのだし、私も言い返せないわねぇ?
困ったわぁ。」
「っ!う、ふふ……、で、ホントに知らないのぉ?」
「残念ながら、知らないわね。
それより、そういうあなたは……そんなにたくさん男の人を連れて何をするのかしら?」
「あらぁ、わからないのぉ?
この人達ぃ、みぃんな、あなたと遊びたいって言っててぇ……だから、遊んであげてくれないかしらぁ?」
「……まどろっこしいわね、はっきり言いなさいよ。
その猿どもに、『私が二度と立ち直れなくなるようにしろ』って、言ったんでしょう?」
「……いやねぇ、もっと……直接的に命令したわよ?」――』
緊迫したやり取りを聞いて、バスケ部の面々の顔からは、血の気が引いていく。
『――「ふぅん、そうね。
直接的に言わなきゃ、その人達には理解できそうもないものね。
……ねぇ、蘇芳さん?最後に、1つ聞かせてもらえないかしら?」
「何かしらぁ、多々良さん?」
「あなたの後ろの通りを歩いているの、黄瀬君じゃあないかしら?」
「え……!?
いないじゃない!
って逃げ……早く追って!」――』
叫ぶ蘇芳の声を最後に、再生が終わった。
蘇芳は俯いたまま、何も言わない。
青ざめた顔の黄瀬が、今度は彼女に詰め寄っていく。
「ねぇ、ルリっち!
今の、何なんスか!?
どういう……オレ達を、騙してたんスか!?」
「瑠璃子……お前が、お前が全部やってたのか!?」
「そんな……まさか……!」
動揺も露に、部員達は縋るような顔をして彼女を見詰める。
ようやく顔を上げた蘇芳は……何故だろう、満面の笑みを、浮かべていた。
『――何でもないよぉ?
そうでしょ、みんなぁ。』
「……は?」
『瑠璃子が、全部正しいの。
瑠璃子は、何も悪いことしてないわぁ。
みんなのこと、信じてる。
だからみんなも、瑠璃子のこと、信じてくれる、よねぇ?』
その言葉に、部員達の首ががくりと落ちた。
ボールの跳ねる音、部員の走る震動が伝わってくる。
だがその音は、いつもよりもずっと大人しいように思う。
理由はすぐに想像がついた。
勢いよく体育館の扉を開ける。
近くにいた女マネが、ぎょっとした顔でこちらを見て固まった。
練習中の部員も一瞬硬直していたけれど、すぐに復活して詰め寄ってくる。
「て、てめー……!!」
「うるさい。」
肩を怒らせて迫ってきた男子の脇を早足で通り抜けて、唖然とする人びとの間を抜けていく。
奥の方には、小さな人だかりが出来ている。
私の目的はそこにある。
「だっておかしいじゃない!
蛍ちゃんはそんなことしない!」
「昨日襲われたのは多々良さんなんです。
僕も確認してます。」
「それに蛍ちゃんはそんな回りくどいことしないよ!
嫌いな人には正々堂々真っ正面から嫌いって言うタイプだもん!」
「あの女が何だとか知らないっスけど、二人とも騙されてるんスよ!!
ルリっちが何されたのか、聞いてたでしょ!?
それがあの女の本質なんス!!」
「瑠璃、もう心配しなくていいからな。
今日からは行き帰り、オレ達がずっと守ってやる。」
「ありがとぉ……、みんな……。」
「桃井、黒子、お前達が信じている女はただのまやかしなのだよ。
現実に傷付いているのは、瑠璃子だ。
それが何よりの証拠なのだよ。」
「……二人の言うことを完全に否定する気はないが、被害が出ているのは確かなんだ。
あまり、多々良蛍に関わらないようにした方が良い。」
「あ、赤司君まで……何言ってるの!?」
中心からは、言い争う声が聞こえている。
庇ってくれるのは嬉しいけれども、桃井さんの私へのイメージはちょっとおかしくないかしらね……。
「蛍ちゃんは他人を使って襲うくらいなら喜んでキャットファイトするくらいの……」
「桃井さん、流石に私、そこまで血気盛んじゃないわ。」
「……え?蛍ちゃん!?」
「な……多々良さん、何で……!」
更に言い募る桃井さんの言葉を遮って、輪の中に割って入った。
瑠璃色の髪がさらりと揺れる。
強ばった顔が一瞬睨み付けてきたけれど、蘇芳はすぐに怯える演技をしながら青峰の影に隠れた。
「テメー……!
よくもノコノコと出てこれたな!!」
「黄瀬君!!」
「その化けの皮、今ここで剥がしてやる!」
「やめてよだいちゃん!!」
変わりに怒りの形相をして近寄ってきたのは、見るからに気の短そうな黄瀬と青峰。
私は二人に、にこりと笑いかけた。
「殴るの?良いわよ。ほら、どうぞ。」
「……は?」
「……反省してる、って面じゃあ、ねぇな。
何企んでやがる。」
「別に?
ただ、暴力沙汰を起こしたら、損をするのはあなた達だってことは、しっかりとその足りない脳ミソに入れておいた方が良いわよ。」
「……っ!!」
二人の額に青筋が浮かんでいるのをしっかりと視界に収めて、笑みを一段と深める。
「お早う、蘇芳瑠璃子。」
「な……なんの、用ぉ?
また、私に酷いことするのぉ……?」
「酷いこと?
あなたが、私にしようとしたような事、かしら?」
「!」
「……何の話だ、瑠璃子?」
部長の赤司君が視線を鋭くして、蘇芳に問い掛ける。
彼はまだ、正気の範疇にいるらしい。
問い掛けられた蘇芳は、怯える素振りを続けながら、わからないとばかりに首を左右に振っている。
「あら……昨日はあんなに怖い顔をしていたのに、まるで別人みたいね。
アカデミー賞並みの演技って、誉めてあげた方が良いのかしら。」
「な……なんのこと……?
わたし、怖いよぉ……!」
「大丈夫なのだよ、瑠璃子。
こいつ、正気とは思えない。」
それはこっちの台詞だわ、なのだよ電波男。
というか、それ口癖?
ダサいったらない。
頭に浮かぶ罵詈雑言。
無理矢理飲み込んで、緑頭の言葉は無視をしてやり過ごした。
「覚えてないのね?
残念……だけど、ちゃんと思い出させてあげるわ、蘇芳さん。」
「……え?」
「だから、あなたのしたこと、あなたの言葉、ここで一言漏らさず、思い出させてあげるって、そう言っているのよ。」
「な、何を……言って……!」
「ボイスレコーダー、私、いつも持ち歩いているから、ね。」
ポケットから、レコーダーを取り出す。
蘇芳の顔色が変わったのを見ながら、スイッチを押した。
『――「……ん、起きなさい。」
「っ……蛍さ……すいま、せん。」
「……ま、何があったかは後で聞いてあげるわ。
それより、これが何をしていたのか、気になると言ったわね。」
「そうだよぉ。」
「私は知らないわよ。
何故、私が知っていると思ったのかしら。」――』
流れてきた音声に、ざわりと人垣が揺れる。
その声は、明らかに瑠璃色の彼女のモノなのに、どうにも様子がおかしく聞こえる。
「こ、これは……?」
「黙って聞いてなさい、黄瀬涼太。」
動揺したような黄瀬に、ピシャリと一言叩き付けて黙らせる。
『――「っ!だってぇ、その人最近、地味で冴えない女に入れ込んでるって噂で有名なんだってよぉ?」
「それで、私がこれに命令して動かしてる、と、思ったの。
確かに、私は『地味』で『冴えない』かもしれないけれど……酷いわ、それだけで私を疑ったの?」
「あらぁ?でもぉ、私の周りを嗅ぎ回るような人ってぇ、あなた達くらいしか思い付かないんだもぉん。」
「ふぅん、短慮ね。
まあ、結果これが私のだと正しい結論が出されてしまったのだし、私も言い返せないわねぇ?
困ったわぁ。」
「っ!う、ふふ……、で、ホントに知らないのぉ?」
「残念ながら、知らないわね。
それより、そういうあなたは……そんなにたくさん男の人を連れて何をするのかしら?」
「あらぁ、わからないのぉ?
この人達ぃ、みぃんな、あなたと遊びたいって言っててぇ……だから、遊んであげてくれないかしらぁ?」
「……まどろっこしいわね、はっきり言いなさいよ。
その猿どもに、『私が二度と立ち直れなくなるようにしろ』って、言ったんでしょう?」
「……いやねぇ、もっと……直接的に命令したわよ?」――』
緊迫したやり取りを聞いて、バスケ部の面々の顔からは、血の気が引いていく。
『――「ふぅん、そうね。
直接的に言わなきゃ、その人達には理解できそうもないものね。
……ねぇ、蘇芳さん?最後に、1つ聞かせてもらえないかしら?」
「何かしらぁ、多々良さん?」
「あなたの後ろの通りを歩いているの、黄瀬君じゃあないかしら?」
「え……!?
いないじゃない!
って逃げ……早く追って!」――』
叫ぶ蘇芳の声を最後に、再生が終わった。
蘇芳は俯いたまま、何も言わない。
青ざめた顔の黄瀬が、今度は彼女に詰め寄っていく。
「ねぇ、ルリっち!
今の、何なんスか!?
どういう……オレ達を、騙してたんスか!?」
「瑠璃子……お前が、お前が全部やってたのか!?」
「そんな……まさか……!」
動揺も露に、部員達は縋るような顔をして彼女を見詰める。
ようやく顔を上げた蘇芳は……何故だろう、満面の笑みを、浮かべていた。
『――何でもないよぉ?
そうでしょ、みんなぁ。』
「……は?」
『瑠璃子が、全部正しいの。
瑠璃子は、何も悪いことしてないわぁ。
みんなのこと、信じてる。
だからみんなも、瑠璃子のこと、信じてくれる、よねぇ?』
その言葉に、部員達の首ががくりと落ちた。