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恥の多い人生を……送っていません。
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「バスケは小学校のころから始めたんです。
あまり上手なわけでもなかったんですけど……、僕なりに、楽しくやっていました。」
二人で本を棚に戻しながら、彼の話を聞く。
「この学校に入ってからもバスケ部に入って……。
ですが僕はどれだけ努力しても二軍にも上がれないままです。
人よりも努力している自信があります。
でも、周りの人たちはどんどん僕を追い抜いて先に進んでいってしまう。
……先日は、三軍のコーチに退部を進められましたし。
これ以上、周りの人に迷惑をかけるくらいなら、僕は退部してしまった方が、良いのかもしれません。」
話を聞いて、私は大きく眉をしかめた。
コーチが部員に退部を進めたことに不満がある……訳ではない。
この学校……帝光のバスケ部といえば超強豪として広く知られている。
勿論、コーチ陣も優秀なはず。
そのコーチが退部を進めたのだ。
つまりそれは……
「これ以上は限界であると、言うことかしら?」
「そう、なりますね……。」
人として、生まれつきの才能としての限界だった。
反論の余地は今のところないのだろう。
そう、今のところは。
「黒子君、人には誰でも、何かしらの特技があると言うわ。
少なくとも私は、それは正しいと思っているわ。」
「はあ……。」
「でも、その特技が見つけづらい人がたくさんいる。
きっと、あなたもそう。」
「僕の、特技ですか……?」
「そう、特技。
それがバスケに活かせるかどうかはわからないけれど、あなたがその特技をちゃんと見つけられるまでは、諦めてはいけないと思う。」
「……ですが、」
「ですが、も何もないわ。
だってあなた、顔に書いてあるじゃない。
『まだまだバスケを続けたい』って。
そう思えるなら、まだ続けるべきよ。
……私の、個人的な意見だけれどもね。」
「……。」
………………。
…………ああっ!?
またやってしまった!!
私は一体何を偉そうにこんな上から目線で説教なんてしているの!?
他の人間……いいえ、雑草たちに説教して、偉そうだの何様だのと罵られても何とも思うことはないけれど、黒子君にそんなこと言われたらっ、もうっ、なんだか色々としんどいわ。
黙ったままの黒子君。
やっぱり怒らせてしまったかしら……。
「あの、気分を悪くしたのなら、謝るわ。」
「いえ、ただその、凄いなって思ってたんです。
多々良さん、相談に乗っていただいて、本当にありがとうございました。」
「……私で、力になれたかしら?」
「とっても、力になりました。」
「それなら、よかったわ。」
珍しく少し微笑んで(黒子君は普段は常に無表情なのだ)お礼をした黒子君。
言葉通り、雰囲気も少し明るくなった気がする。
よかったわ、怒らなかったこともだけど、彼が感情に任せて怒鳴るような人間じゃなかったことも、本当によかった。
「あ、話しているうちに終わりましたね。」
「そうね、いつもよりもずっと早く終わった……。
今日は本当にありがとう、黒子君。」
「いえ、僕の方こそ。」
作業が早く終わったのは嬉しかったけど、彼との時間が終わってしまったことは残念でならない。
名残惜しい気持ちを隠しながら、作業の終えた本棚をざっと眺める。
特に問題もないようね……。
「あの、ついでにもうひとつ良いですか?」
「何かしら。」
黒子君に話し掛けられて、気持ちが一気に急浮上する。
「この本の続きを探していて……、多々良さん、知りませんか?」
見せてもらった本は「芥川全集1」。
確か2は、なかったはず。
なんでも司書の方にとって芥川という名はトラウマにも等しいらしくて、1だけ揃えるのが限界だったそうよ。
私には全く理解できない考えね。
「続きはないわ。
何よりこの図書館には芥川はあまりおいてないの。」
「そうなんですか……。」
「でも、文芸部の部室には確かあったと思うわ。
あなたがそれでよければ、貸しましょうか?」
「え、いいんですか?」
「もちろんよ。
あなたは本を雑に扱ったりはしないでしょうし。」
あまりにも残念そうに言うので、思わず手を差しのべてしまう。
これが計算だったとしたら、彼はとんでもない演技派である。
「是非お願いします。」
笑顔のタイミングまでバッチリ……。
いっそこのままお持ち帰りしてしまいたいわ。
まあ、冗談は置いておいて、そのまま文芸部の部室によることになった。
もう文芸部の部室の大掃除はしない。
いや、汚い女とは思われたくないから、黒子君に貸した本が返ってきたら家宝にしましょう。
あまり上手なわけでもなかったんですけど……、僕なりに、楽しくやっていました。」
二人で本を棚に戻しながら、彼の話を聞く。
「この学校に入ってからもバスケ部に入って……。
ですが僕はどれだけ努力しても二軍にも上がれないままです。
人よりも努力している自信があります。
でも、周りの人たちはどんどん僕を追い抜いて先に進んでいってしまう。
……先日は、三軍のコーチに退部を進められましたし。
これ以上、周りの人に迷惑をかけるくらいなら、僕は退部してしまった方が、良いのかもしれません。」
話を聞いて、私は大きく眉をしかめた。
コーチが部員に退部を進めたことに不満がある……訳ではない。
この学校……帝光のバスケ部といえば超強豪として広く知られている。
勿論、コーチ陣も優秀なはず。
そのコーチが退部を進めたのだ。
つまりそれは……
「これ以上は限界であると、言うことかしら?」
「そう、なりますね……。」
人として、生まれつきの才能としての限界だった。
反論の余地は今のところないのだろう。
そう、今のところは。
「黒子君、人には誰でも、何かしらの特技があると言うわ。
少なくとも私は、それは正しいと思っているわ。」
「はあ……。」
「でも、その特技が見つけづらい人がたくさんいる。
きっと、あなたもそう。」
「僕の、特技ですか……?」
「そう、特技。
それがバスケに活かせるかどうかはわからないけれど、あなたがその特技をちゃんと見つけられるまでは、諦めてはいけないと思う。」
「……ですが、」
「ですが、も何もないわ。
だってあなた、顔に書いてあるじゃない。
『まだまだバスケを続けたい』って。
そう思えるなら、まだ続けるべきよ。
……私の、個人的な意見だけれどもね。」
「……。」
………………。
…………ああっ!?
またやってしまった!!
私は一体何を偉そうにこんな上から目線で説教なんてしているの!?
他の人間……いいえ、雑草たちに説教して、偉そうだの何様だのと罵られても何とも思うことはないけれど、黒子君にそんなこと言われたらっ、もうっ、なんだか色々としんどいわ。
黙ったままの黒子君。
やっぱり怒らせてしまったかしら……。
「あの、気分を悪くしたのなら、謝るわ。」
「いえ、ただその、凄いなって思ってたんです。
多々良さん、相談に乗っていただいて、本当にありがとうございました。」
「……私で、力になれたかしら?」
「とっても、力になりました。」
「それなら、よかったわ。」
珍しく少し微笑んで(黒子君は普段は常に無表情なのだ)お礼をした黒子君。
言葉通り、雰囲気も少し明るくなった気がする。
よかったわ、怒らなかったこともだけど、彼が感情に任せて怒鳴るような人間じゃなかったことも、本当によかった。
「あ、話しているうちに終わりましたね。」
「そうね、いつもよりもずっと早く終わった……。
今日は本当にありがとう、黒子君。」
「いえ、僕の方こそ。」
作業が早く終わったのは嬉しかったけど、彼との時間が終わってしまったことは残念でならない。
名残惜しい気持ちを隠しながら、作業の終えた本棚をざっと眺める。
特に問題もないようね……。
「あの、ついでにもうひとつ良いですか?」
「何かしら。」
黒子君に話し掛けられて、気持ちが一気に急浮上する。
「この本の続きを探していて……、多々良さん、知りませんか?」
見せてもらった本は「芥川全集1」。
確か2は、なかったはず。
なんでも司書の方にとって芥川という名はトラウマにも等しいらしくて、1だけ揃えるのが限界だったそうよ。
私には全く理解できない考えね。
「続きはないわ。
何よりこの図書館には芥川はあまりおいてないの。」
「そうなんですか……。」
「でも、文芸部の部室には確かあったと思うわ。
あなたがそれでよければ、貸しましょうか?」
「え、いいんですか?」
「もちろんよ。
あなたは本を雑に扱ったりはしないでしょうし。」
あまりにも残念そうに言うので、思わず手を差しのべてしまう。
これが計算だったとしたら、彼はとんでもない演技派である。
「是非お願いします。」
笑顔のタイミングまでバッチリ……。
いっそこのままお持ち帰りしてしまいたいわ。
まあ、冗談は置いておいて、そのまま文芸部の部室によることになった。
もう文芸部の部室の大掃除はしない。
いや、汚い女とは思われたくないから、黒子君に貸した本が返ってきたら家宝にしましょう。