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雨降って地固まる。しかし固いものほど崩れやすい。
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話を聞き終えて、伊達先生は深く頷いた。
「うむ、取り合えず、なんでお前らオレに何にも言わなかった。
天誅!」
「いっ!」
「いたっ!」
「った!」
3人揃って頭にチョップを食らう。
地味に痛かった。
「てめぇ蛍の姐さんに何しやがんだ伊達ゴラァ!!」
「一ノ瀬君、騒ぐなら帰って。」
「息止めます。」
「ここで死なれたら困るわ。」
「っ!」
先生に掴み掛かろうとしたワンちゃんを端に追いやり、続きを促す。
ゴホンッと大袈裟に咳をして、先生は改めて話し出した。
「えー……で、だな。
まず、蘇芳については先生側から手を出すのは厳しいと思う。」
「金の力で揉み消されますか。」
「……残念ながら多々良の言う通りでな、オレから彼女に何かしたとしたら、たぶん首が飛ぶ。」
「っ……やっぱり。」
厳しい顔で呟いた桃井さん。
やっぱり、と言うのは、どういう意味なのかしら……。
「桃井さん、やっぱり、と言うのは?」
「……私もね、色々とあの子について調べてみたの。
確かにあの子、お金持ちのご令嬢で、そう言うことも簡単にできるんだろうなって。
それにさっき部活で……」
「また、何か言われたのね。」
「……。」
何も言わなかったが、桃井さんは小さく頷き、今日あったことを話してくれた。
「今日部活に行ったら、蘇芳さんに呼び出されたの。
二人っきりになるの、まずいと思って、テツくんに言って隠れてついてきてもらって……。」
「じゃあ、黒子君も一緒にいたのね?」
「はい。
蘇芳さんは酷く怒った様子で桃井さんに詰め寄っていって、胸ぐらを掴んで怒鳴ったんです。」
「『あれだけ言ったのにまだバスケ部に来るなんて、良い度胸ねぇ?』ってね。
美人が怒ると恐いって言うけど、もう恐いどころじゃなくて一種のホラーよね!
でも私もちょっと頭に来てて……、だから『誰かにちやほやされて得意になってるあんたの言うことなんて聞かない!』って言い返しちゃったの。」
「……強く出たわね。」
その時の桃井さん見たかったわ。
カッコ良かったんでしょうね。
「向こうもカチンと来たんでしょうね。
『覚悟して待ってなさいよぉ……!あなたの味方なんかぁ、誰もいないんだからねぇ?』って言って帰っていってしまって。」
「その後は何もなかったのが不気味で……。
嵐の前の静けさ、って言うのかな。
怖くなって、ついこんな押し掛けるような真似しちゃったの……。
ごめんね?」
「なぜあなたが謝るの。
謝る必要なんてないわ。
それより、『覚悟して待ってなさいよ』って言うのは、確かに不気味ね……。」
彼女が何をしでかそうとしているのか、彼女についての情報がほぼない今、予測をするのは難しい。
顎に手を当てて考え込んだ私は、ふと思い出してワンちゃんを見詰めた。
「そう言えばワ……一ノ瀬君も、何か報告があって来たのよね?」
「っ!っ!!」
「しゃべって良いわよ。」
「そうなんすよ!
あの蘇芳って女の跡つけてったら凄いところ見ちゃったんですよ!」
「……あの多々良さん、彼は?」
「え?……ああ、彼は……えーと。」
「オレは蛍さんの犬だ!」
「彼にはちょっとお手伝いしてもらってるだけよ。
ただの知人程度の関係。」
「見事に食い違ってますけど。」
「気にしちゃダメだぜ黒子。」
深く突っ込まれるのは嫌だったから先生の言葉は助かったけど、その残念なモノを見るような目は気に入らないわね。
何様のつもりかしら。
「で、何を見ちゃったの?」
「あの女、オレが昔絞めた不良とツルんでたっす。
しかもそいつら、最近ヤベーのがバックについてるとかで、オレも仲間に手ぇ出さないように言ってたんすよね。」
「……つまり蘇芳は、ヤクザの飼い犬とつるんでるってことかしら?」
「まだヤクザまで関わってるかはわかんねぇっすけど、どっちにしろ関わるのはまずいっすよ。
下手すりゃ東京湾にコンクリ詰めされてドボンですよ。」
「……一気にヤバさが増した感じね。」
しかし、これはかなりの収穫だ。
相手の危険度が少しずつ明らかになってきたわけだからね。
「なあワンコ君、蘇芳とその不良が何話してたのか、聞こえなかったか?」
「……それが、何か企んでるっぽいのはわかったけど、内容はほぼ聞こえなかったんだよな。」
「……ワンコ君って多々良とその他であからさまに態度違うよね。
教師には敬語使おうよ。」
「伊達さんは黙ってろよ!
蛍さん!その桃井ちゃんの話がマジだったら、ちょっとヤバいっすよ。」
「……ええ。」
ワガママお嬢様が、ワンちゃんでも関わるのを避ける人間と組んで何をする気なのか、想像して、吐き気がした。
先生もワンちゃんも、予想は付いたみたい。
顔付きが険しかった。
「桃井さん、あなたに幾つか守ってもらいたいことが出来たわ。」
「はい!何でしょうか隊長!」
「良い返事ね二等兵。
まず1つが、深夜の外出禁止。
例え誰かと一緒にいてもダメ。
一ノ瀬君か伊達先生となら、一応OKよ。」
「えっと、どうして?」
「……襲われるかも、知れないからですか?
彼の話していた不良達に。」
ピンと来ていない様子の桃井さんに、黒子君が言葉を付け足す。
それに頷いて、話を続けた。
「蘇芳瑠璃子の手先に襲われる可能性があるわ。
夜だけじゃなくて、人通りの少ないところは昼間でも絶対に通っちゃダメ。」
「わ、わかった……!」
「それと二つ目、絶対に蘇芳瑠璃子と二人きりにならないこと。」
「……蘇芳さんと私なら、私たぶん勝てるよ?」
「おバカ、力の問題じゃないの。
二人っきりの時間が出来てしまうことがそもそもまずいのよ。
虎の威を借る狐はいつだって狡猾な手段を取ってくる。
二人っきりになった時、あなたに殴られた、とか、脅されたとか噂を流されたら、それが原因であなたが孤立することになるかもしれないわ。
それを切っ掛けにいじめに発展する可能性もある。」
「っ!」
「二人っきりにならないこと。
わかった?」
「はい!」
とても真剣な顔で頷く桃井さんに、一先ずは安心。
そして私は最後の1つについて話す。
「最後に、出来るだけ一人きりの時間を作らないこと。」
「一人きりの時間?」
「要するにアリバイ作りね。
たまにいるのよ。
自分が悪いことしたのを、嫌いな奴に擦り付けようとする人。
若しくは、自分が被害者になりきって、嫌いな奴を犯人に仕立てあげようとしたり、ね。」
「そ、そんな……!」
「だからアリバイ作り。
ここにいる誰かと、なるべく一緒にいるようにすること。
それから、自分のクラスの人とも出来るだけ仲良くして行動を共にした方がいい。
それができなければ、なるべく人の多いところにいるようにすること。」
「……うん。」
「守ってほしいことは以上よ。」
「あはは、何か、大袈裟なことになってきちゃったね……?
迷惑じゃ、ないかなぁ……?」
3つの守ってほしいこと、それを言い終わると、桃井さんはちょっと困ったような顔でそう言った。
私は大きくため息をつく。
「そんなに心配なら、この労力分は後で他の形で返してもらおうかしら?」
「え……、どうすれば、良いかな?」
「……そう、ね。
文化祭のお手伝い、なんてどうかしら?」
「へ?文化祭?」
私は近くに置いてあった書類ケースの中から、ぴらっと紙を取り出す。
文化祭出店の申請書。
昨日、伊達先生が置いていったモノだった。
「お!多々良それ出るのか!?」
「せっかくですからね。
文芸部として、読書喫茶を開こうかと。
……桃井さんにウェイトレスをしてもらえたら、きっと評判も上がるわ。
どうかしら?」
「それで、……良いの?」
「それで、じゃないわ。
文芸部は私一人しかいないし、手伝いを頼めるとしても、ごく少人数よ。
とっても大変だわ。」
「是非!是非やらせてください!
私に手伝えることなら、なんでもやるよ!」
「……ありがとう、桃井さん。
だからこれで貸し借りはなし。
下らないことで、これ以上悩まないで。」
「うん!」
桃井さんの顔がパッと明るくなったのを見て、私は安心した。
人を元気付けるのって、苦手なんだもん。
でも、余程不安だったのか、桃井さんの目尻には涙の滴が付いていた。
その滴を人差し指で拭ってやり、気分を変えるように手を叩いた。
「さ、辛気くさい話は終わり。
夕飯、買ってきてくれたんですよね?
食べましょう。」
「多々良お前、イケメンだな。」
「は?」
「いや、何でもねぇよ。
うし、食おう!
食って面倒なことは一旦忘れよう!」
「……はい、それがいいですよね。
桃井さん、ご飯を食べましょう?」
「うん……!
皆さん、ありがとうございます!」
桃井さんがぺこっと頭を下げて、私達は少し遅めの夕飯を取ることにした。
「うむ、取り合えず、なんでお前らオレに何にも言わなかった。
天誅!」
「いっ!」
「いたっ!」
「った!」
3人揃って頭にチョップを食らう。
地味に痛かった。
「てめぇ蛍の姐さんに何しやがんだ伊達ゴラァ!!」
「一ノ瀬君、騒ぐなら帰って。」
「息止めます。」
「ここで死なれたら困るわ。」
「っ!」
先生に掴み掛かろうとしたワンちゃんを端に追いやり、続きを促す。
ゴホンッと大袈裟に咳をして、先生は改めて話し出した。
「えー……で、だな。
まず、蘇芳については先生側から手を出すのは厳しいと思う。」
「金の力で揉み消されますか。」
「……残念ながら多々良の言う通りでな、オレから彼女に何かしたとしたら、たぶん首が飛ぶ。」
「っ……やっぱり。」
厳しい顔で呟いた桃井さん。
やっぱり、と言うのは、どういう意味なのかしら……。
「桃井さん、やっぱり、と言うのは?」
「……私もね、色々とあの子について調べてみたの。
確かにあの子、お金持ちのご令嬢で、そう言うことも簡単にできるんだろうなって。
それにさっき部活で……」
「また、何か言われたのね。」
「……。」
何も言わなかったが、桃井さんは小さく頷き、今日あったことを話してくれた。
「今日部活に行ったら、蘇芳さんに呼び出されたの。
二人っきりになるの、まずいと思って、テツくんに言って隠れてついてきてもらって……。」
「じゃあ、黒子君も一緒にいたのね?」
「はい。
蘇芳さんは酷く怒った様子で桃井さんに詰め寄っていって、胸ぐらを掴んで怒鳴ったんです。」
「『あれだけ言ったのにまだバスケ部に来るなんて、良い度胸ねぇ?』ってね。
美人が怒ると恐いって言うけど、もう恐いどころじゃなくて一種のホラーよね!
でも私もちょっと頭に来てて……、だから『誰かにちやほやされて得意になってるあんたの言うことなんて聞かない!』って言い返しちゃったの。」
「……強く出たわね。」
その時の桃井さん見たかったわ。
カッコ良かったんでしょうね。
「向こうもカチンと来たんでしょうね。
『覚悟して待ってなさいよぉ……!あなたの味方なんかぁ、誰もいないんだからねぇ?』って言って帰っていってしまって。」
「その後は何もなかったのが不気味で……。
嵐の前の静けさ、って言うのかな。
怖くなって、ついこんな押し掛けるような真似しちゃったの……。
ごめんね?」
「なぜあなたが謝るの。
謝る必要なんてないわ。
それより、『覚悟して待ってなさいよ』って言うのは、確かに不気味ね……。」
彼女が何をしでかそうとしているのか、彼女についての情報がほぼない今、予測をするのは難しい。
顎に手を当てて考え込んだ私は、ふと思い出してワンちゃんを見詰めた。
「そう言えばワ……一ノ瀬君も、何か報告があって来たのよね?」
「っ!っ!!」
「しゃべって良いわよ。」
「そうなんすよ!
あの蘇芳って女の跡つけてったら凄いところ見ちゃったんですよ!」
「……あの多々良さん、彼は?」
「え?……ああ、彼は……えーと。」
「オレは蛍さんの犬だ!」
「彼にはちょっとお手伝いしてもらってるだけよ。
ただの知人程度の関係。」
「見事に食い違ってますけど。」
「気にしちゃダメだぜ黒子。」
深く突っ込まれるのは嫌だったから先生の言葉は助かったけど、その残念なモノを見るような目は気に入らないわね。
何様のつもりかしら。
「で、何を見ちゃったの?」
「あの女、オレが昔絞めた不良とツルんでたっす。
しかもそいつら、最近ヤベーのがバックについてるとかで、オレも仲間に手ぇ出さないように言ってたんすよね。」
「……つまり蘇芳は、ヤクザの飼い犬とつるんでるってことかしら?」
「まだヤクザまで関わってるかはわかんねぇっすけど、どっちにしろ関わるのはまずいっすよ。
下手すりゃ東京湾にコンクリ詰めされてドボンですよ。」
「……一気にヤバさが増した感じね。」
しかし、これはかなりの収穫だ。
相手の危険度が少しずつ明らかになってきたわけだからね。
「なあワンコ君、蘇芳とその不良が何話してたのか、聞こえなかったか?」
「……それが、何か企んでるっぽいのはわかったけど、内容はほぼ聞こえなかったんだよな。」
「……ワンコ君って多々良とその他であからさまに態度違うよね。
教師には敬語使おうよ。」
「伊達さんは黙ってろよ!
蛍さん!その桃井ちゃんの話がマジだったら、ちょっとヤバいっすよ。」
「……ええ。」
ワガママお嬢様が、ワンちゃんでも関わるのを避ける人間と組んで何をする気なのか、想像して、吐き気がした。
先生もワンちゃんも、予想は付いたみたい。
顔付きが険しかった。
「桃井さん、あなたに幾つか守ってもらいたいことが出来たわ。」
「はい!何でしょうか隊長!」
「良い返事ね二等兵。
まず1つが、深夜の外出禁止。
例え誰かと一緒にいてもダメ。
一ノ瀬君か伊達先生となら、一応OKよ。」
「えっと、どうして?」
「……襲われるかも、知れないからですか?
彼の話していた不良達に。」
ピンと来ていない様子の桃井さんに、黒子君が言葉を付け足す。
それに頷いて、話を続けた。
「蘇芳瑠璃子の手先に襲われる可能性があるわ。
夜だけじゃなくて、人通りの少ないところは昼間でも絶対に通っちゃダメ。」
「わ、わかった……!」
「それと二つ目、絶対に蘇芳瑠璃子と二人きりにならないこと。」
「……蘇芳さんと私なら、私たぶん勝てるよ?」
「おバカ、力の問題じゃないの。
二人っきりの時間が出来てしまうことがそもそもまずいのよ。
虎の威を借る狐はいつだって狡猾な手段を取ってくる。
二人っきりになった時、あなたに殴られた、とか、脅されたとか噂を流されたら、それが原因であなたが孤立することになるかもしれないわ。
それを切っ掛けにいじめに発展する可能性もある。」
「っ!」
「二人っきりにならないこと。
わかった?」
「はい!」
とても真剣な顔で頷く桃井さんに、一先ずは安心。
そして私は最後の1つについて話す。
「最後に、出来るだけ一人きりの時間を作らないこと。」
「一人きりの時間?」
「要するにアリバイ作りね。
たまにいるのよ。
自分が悪いことしたのを、嫌いな奴に擦り付けようとする人。
若しくは、自分が被害者になりきって、嫌いな奴を犯人に仕立てあげようとしたり、ね。」
「そ、そんな……!」
「だからアリバイ作り。
ここにいる誰かと、なるべく一緒にいるようにすること。
それから、自分のクラスの人とも出来るだけ仲良くして行動を共にした方がいい。
それができなければ、なるべく人の多いところにいるようにすること。」
「……うん。」
「守ってほしいことは以上よ。」
「あはは、何か、大袈裟なことになってきちゃったね……?
迷惑じゃ、ないかなぁ……?」
3つの守ってほしいこと、それを言い終わると、桃井さんはちょっと困ったような顔でそう言った。
私は大きくため息をつく。
「そんなに心配なら、この労力分は後で他の形で返してもらおうかしら?」
「え……、どうすれば、良いかな?」
「……そう、ね。
文化祭のお手伝い、なんてどうかしら?」
「へ?文化祭?」
私は近くに置いてあった書類ケースの中から、ぴらっと紙を取り出す。
文化祭出店の申請書。
昨日、伊達先生が置いていったモノだった。
「お!多々良それ出るのか!?」
「せっかくですからね。
文芸部として、読書喫茶を開こうかと。
……桃井さんにウェイトレスをしてもらえたら、きっと評判も上がるわ。
どうかしら?」
「それで、……良いの?」
「それで、じゃないわ。
文芸部は私一人しかいないし、手伝いを頼めるとしても、ごく少人数よ。
とっても大変だわ。」
「是非!是非やらせてください!
私に手伝えることなら、なんでもやるよ!」
「……ありがとう、桃井さん。
だからこれで貸し借りはなし。
下らないことで、これ以上悩まないで。」
「うん!」
桃井さんの顔がパッと明るくなったのを見て、私は安心した。
人を元気付けるのって、苦手なんだもん。
でも、余程不安だったのか、桃井さんの目尻には涙の滴が付いていた。
その滴を人差し指で拭ってやり、気分を変えるように手を叩いた。
「さ、辛気くさい話は終わり。
夕飯、買ってきてくれたんですよね?
食べましょう。」
「多々良お前、イケメンだな。」
「は?」
「いや、何でもねぇよ。
うし、食おう!
食って面倒なことは一旦忘れよう!」
「……はい、それがいいですよね。
桃井さん、ご飯を食べましょう?」
「うん……!
皆さん、ありがとうございます!」
桃井さんがぺこっと頭を下げて、私達は少し遅めの夕飯を取ることにした。