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恥の多い人生を……送っていません。
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数日後、私は調査結果をメモしたルーズリーフとにらめっこしていた。
ちなみに今は国語の授業中だが、私は内容を理解できているので心配は要らないのだ。
ただし良い子のみんなは真似をしてはいけない。
なんて言っても、大概の人はスローペースで進む教師の語りに、夢の国へと旅立ってしまっているようだけれど。
私は、窓際の席に座る例の彼を見やる。
名前は黒子。『黒子テツヤ』。
どうやらバスケ部に所属しているらしくて、三軍の選手として頑張っているそうだ。
趣味……かどうかはわからなかったが、休み時間にはよく本を読んでいる。
そして彼の一番の特徴と言えるのがその影の薄さ。
食い入るように観察していても、一瞬注意が逸れただけで見失うことがあった。
「難儀よの……。」
その影の薄さも相まって、とてつもなく彼は話し掛けづらかった。
もともと私は人付き合いが苦手なのだ。
先行きは不透明どころか、真っ暗闇である。
しかし、日頃の行いの良さか、はたまた神様の気紛れか、チャンスは突然に、思わぬ形で巡ってきたのだった。
* * *
「あ、君は……この間の。」
「く、ろこ君……?
えぇと、こんにちは?」
困った、ひっじょーうに困った。
私たちは再び、図書館で会った。
ここまでは良い。ここまでなら良いのだ。
ただそのタイミングが問題だった。
「あの、何をして……?」
「いや、その、司書の方のお手伝いをしていたのよ。」
ご存知でないだろうが私は文学部所属。
活動の一環として図書館の手伝いなども行っている。
今日もその手伝いとして、返却本を棚に戻したり、傷がついたり破れたりしている本の修繕をしたりと大忙しだった。
そして大量の本を持った私には必然、足元が見えなかった。
つまり、
「……大丈夫ですか?」
足元の段差に躓き無様に転んだところを黒子君に見られてしまったのだ。
なんたる不覚っ!!
私ともあろうものがこんな情けない姿を見られるだなんて……!
幸い本は無事だったのだが、このままでは私のプライドが無事ではないっ。
「こ、これは別に、転んだとかじゃないのよ……。
ちょっと、その、……そう休憩!
休憩をしていただけなの!!
心配する必要はないわ。」
「そ、そうですか……?」
私の言葉を聞いてもまだ心配そうにしてくれている黒子君はなんて優しい人なのだろうか……!
ああ、とにかく今は散らばった本を集めていい加減立ち上がらなくては。
そう思い、本を抱える。
「手伝いましょうか?」
「!そんな、悪いわ……。
私の仕事だし、これくらいなんてことないもの。」
「いえ、この間のお礼も兼ねて、手伝わせてください。」
「え、でも……。」
「半分持ちます。」
「あ、ありがとう……。」
彼は、ひょいっと半分……いや、3分の2ほどの量を、私の手から取り上げる。
……どうしよう、お付き合いを前提に結婚していただきたい。
うん?逆だろうか。
困った、かなり私は混乱しているらしい。
「どこに持っていけば良いですか?」
「ああ……、奥の、そこから2つ右の棚よ。」
「わかりました。」
軽々と運ぶ様子はやはり男の子だ。
どうしよう、どうしよう……。
私の顔は赤くないだろうか。
ポーカーフェイスには自信があるけれど、これは本当にまずい。
「あの、多々良さん。
この本、棚に戻すんですか?」
「え、……ああ、そうよ。
返却処理の終わった本なので、これから棚に戻すところだったの。」
「是非手伝わせてください。」
黒子君……罪作りな人ね!!
これ以上私を青春で一杯にしないでっ!
甘酸っぱさでおかしな声が出そうよ!!
「ありがとう……でも、時間とかは平気なの?」
「今日は部活が休みなので。」
「そうだったの。」
なんとか平然を装って会話を続ける。
またとないチャンスなのだ。
会話を……、会話をできるだけ長引かせるのよ私っ!!
「多々良さんは、部活には入っていないんですか?」
「文芸部に入っていて……、と言っても文芸部にはもう私しかいないのだけど。
部活の関係でよく図書館の仕事を手伝っているの。」
「そうだったんですか……。」
「……私の名前、知っていたの?」
「同じクラスですからね。
多々良さんも、僕の名前知っていたんですね。」
「……クラスメイトだからね。」
嘘です。
神様、私は今、嘘をつきました。
あなたと会ってから調べたんです許してください!
「え、と……この本は、」
「それは上から3段目ね。
右の方よ。」
「……覚えているんですか?」
「まあ、よく手伝っているから。」
大丈夫かしら、オタク女なんて思われてないかしら!?
「多々良さんは、凄いですね……。」
「そんなこと、ないわ。」
「僕はバスケ部なんですけど、いつまでたっても三軍のままですし……、尊敬します。」
「……?
三軍でも、目標を持って頑張っているのだから、私はその方が尊敬できると思うわ。」
「そんな……僕なんて。」
おや、黒子君は顔を俯けて目を伏せてしまった。
何か悩みごとだろうか。
少しでも力になりたくて、私は声をかけた。
アンニュイな顔も素敵だけど、やっぱり好きな子には笑っていてほしいわ。
「何か、悩みがあるなら話してみない?
勿論、無理にとは、言わないけれど。」
「……ありがとうございます。
片手間で構わないので、聞いていただけます、か……?」
いいえ、神経すべてを右耳に傾けさせていただくわ。
……かくして、黒子君の悩み相談が始まったのだった。
ちなみに今は国語の授業中だが、私は内容を理解できているので心配は要らないのだ。
ただし良い子のみんなは真似をしてはいけない。
なんて言っても、大概の人はスローペースで進む教師の語りに、夢の国へと旅立ってしまっているようだけれど。
私は、窓際の席に座る例の彼を見やる。
名前は黒子。『黒子テツヤ』。
どうやらバスケ部に所属しているらしくて、三軍の選手として頑張っているそうだ。
趣味……かどうかはわからなかったが、休み時間にはよく本を読んでいる。
そして彼の一番の特徴と言えるのがその影の薄さ。
食い入るように観察していても、一瞬注意が逸れただけで見失うことがあった。
「難儀よの……。」
その影の薄さも相まって、とてつもなく彼は話し掛けづらかった。
もともと私は人付き合いが苦手なのだ。
先行きは不透明どころか、真っ暗闇である。
しかし、日頃の行いの良さか、はたまた神様の気紛れか、チャンスは突然に、思わぬ形で巡ってきたのだった。
* * *
「あ、君は……この間の。」
「く、ろこ君……?
えぇと、こんにちは?」
困った、ひっじょーうに困った。
私たちは再び、図書館で会った。
ここまでは良い。ここまでなら良いのだ。
ただそのタイミングが問題だった。
「あの、何をして……?」
「いや、その、司書の方のお手伝いをしていたのよ。」
ご存知でないだろうが私は文学部所属。
活動の一環として図書館の手伝いなども行っている。
今日もその手伝いとして、返却本を棚に戻したり、傷がついたり破れたりしている本の修繕をしたりと大忙しだった。
そして大量の本を持った私には必然、足元が見えなかった。
つまり、
「……大丈夫ですか?」
足元の段差に躓き無様に転んだところを黒子君に見られてしまったのだ。
なんたる不覚っ!!
私ともあろうものがこんな情けない姿を見られるだなんて……!
幸い本は無事だったのだが、このままでは私のプライドが無事ではないっ。
「こ、これは別に、転んだとかじゃないのよ……。
ちょっと、その、……そう休憩!
休憩をしていただけなの!!
心配する必要はないわ。」
「そ、そうですか……?」
私の言葉を聞いてもまだ心配そうにしてくれている黒子君はなんて優しい人なのだろうか……!
ああ、とにかく今は散らばった本を集めていい加減立ち上がらなくては。
そう思い、本を抱える。
「手伝いましょうか?」
「!そんな、悪いわ……。
私の仕事だし、これくらいなんてことないもの。」
「いえ、この間のお礼も兼ねて、手伝わせてください。」
「え、でも……。」
「半分持ちます。」
「あ、ありがとう……。」
彼は、ひょいっと半分……いや、3分の2ほどの量を、私の手から取り上げる。
……どうしよう、お付き合いを前提に結婚していただきたい。
うん?逆だろうか。
困った、かなり私は混乱しているらしい。
「どこに持っていけば良いですか?」
「ああ……、奥の、そこから2つ右の棚よ。」
「わかりました。」
軽々と運ぶ様子はやはり男の子だ。
どうしよう、どうしよう……。
私の顔は赤くないだろうか。
ポーカーフェイスには自信があるけれど、これは本当にまずい。
「あの、多々良さん。
この本、棚に戻すんですか?」
「え、……ああ、そうよ。
返却処理の終わった本なので、これから棚に戻すところだったの。」
「是非手伝わせてください。」
黒子君……罪作りな人ね!!
これ以上私を青春で一杯にしないでっ!
甘酸っぱさでおかしな声が出そうよ!!
「ありがとう……でも、時間とかは平気なの?」
「今日は部活が休みなので。」
「そうだったの。」
なんとか平然を装って会話を続ける。
またとないチャンスなのだ。
会話を……、会話をできるだけ長引かせるのよ私っ!!
「多々良さんは、部活には入っていないんですか?」
「文芸部に入っていて……、と言っても文芸部にはもう私しかいないのだけど。
部活の関係でよく図書館の仕事を手伝っているの。」
「そうだったんですか……。」
「……私の名前、知っていたの?」
「同じクラスですからね。
多々良さんも、僕の名前知っていたんですね。」
「……クラスメイトだからね。」
嘘です。
神様、私は今、嘘をつきました。
あなたと会ってから調べたんです許してください!
「え、と……この本は、」
「それは上から3段目ね。
右の方よ。」
「……覚えているんですか?」
「まあ、よく手伝っているから。」
大丈夫かしら、オタク女なんて思われてないかしら!?
「多々良さんは、凄いですね……。」
「そんなこと、ないわ。」
「僕はバスケ部なんですけど、いつまでたっても三軍のままですし……、尊敬します。」
「……?
三軍でも、目標を持って頑張っているのだから、私はその方が尊敬できると思うわ。」
「そんな……僕なんて。」
おや、黒子君は顔を俯けて目を伏せてしまった。
何か悩みごとだろうか。
少しでも力になりたくて、私は声をかけた。
アンニュイな顔も素敵だけど、やっぱり好きな子には笑っていてほしいわ。
「何か、悩みがあるなら話してみない?
勿論、無理にとは、言わないけれど。」
「……ありがとうございます。
片手間で構わないので、聞いていただけます、か……?」
いいえ、神経すべてを右耳に傾けさせていただくわ。
……かくして、黒子君の悩み相談が始まったのだった。