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剣でなぐりつけるより、笑顔で蹴りつけろ
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朝、目覚まし時計の音で起きて、そそくさと着替えて朝食をとる。
床で大の字になって寝ているワンちゃんの脇腹を容赦なく蹴って起こして、私たちは学校に向かった。
「グスッ……蛍さん、まだ6時ですよ……。
人っ子一人いないじゃないすか。」
「ワンちゃんはこの先のゴミ捨て場で寝ていれば良いじゃない。
私はこのあと用事があるから、ついてきたりしたら承知しないわよ。」
「じゃあ1時間後に迎えにいくっす!!」
まっすぐゴミ捨て場に走っていったワンちゃんは一体どこに迎えに来るつもりなんだろうか。
というかゴミ捨て場で寝た後に近づいて来ないでもらいたいわ。
「……行くか。」
私はワンちゃんの行った方向とは別の道を歩いて、目的地へと向かった。
目的地は、とある人物のお宅であった。
「……出来た。」
出来たなんて言ったけど、やったのはただ、ドアノブに紙袋を提げただけ。
こんな早い時間に、家の人を起こすわけには行かないしね。
「さて、学校に行きますか。」
踵を返して門を出た時、背を向けたドアが開く音がした。
「……蛍ちゃんかい?」
「……おはようございます、花見川さん。」
「今朝も来てくれたんだね。」
出てきた30代後半の男性――花見川秀二に、挨拶をした。
彼は、私の父の、秘書をしている。
私が届けたのは、父への贈り物だ。
「お父さんへのお弁当だね。」
「……ええ。」
「また帰らなかったんだね、あの人は。」
「いつものことです。
でも、花見川さんにはご迷惑をおかけします。
申し訳ありません。」
「いいんだよ。
蛍ちゃんが気にすることじゃない。
じゃあ、これは私が持っていくからね。」
「お願いします。」
固くお辞儀をして去る私を、花見川さんがしばらく見詰めていた。
* * *
「あの蛍さん……?」
「五月蝿いわよワンちゃん、息しないで。」
「殺す気ですか!?」
登校中に合流したワンちゃんを強制的に黙らせた。
昨日の今日でまだ機嫌が悪いってのに、深夜に届いたメールが、更に私の頭を痛くさせていた。
「突然弁当を届けさせるなんて、頭おかしい。
さっさと隠居してくれれば良いのに。」
「……?
蛍さん、どこに行って来たんですか?
なんか嫌なことでもあったんですか?」
「父親にメールで、弁当届けろって言われたのよ。
娘には弁当一つ作ったことないくせに、良いご身分ね。
吐き気がするわ。」
「んなの、無視すれば良いじゃないっすか!」
「……あの家に住まわせてもらって、生活費まで支援してもらっているのよ。
下手な真似して機嫌損ねるのは避けたいの。
あの人、会社の社長だから私の行動一つで機嫌悪くさせて周りの人に迷惑掛けるのも嫌だし。
それに…………。」
イライラのまま、吐き散らかしていた言葉が止まる。
こんなこと、ワンちゃんに言ったって仕方ないんだから、黙ってるが吉のはず。
でも、ワンちゃんも答えを知りたそうにしているし、私だって、こんなこと溜め込んでおきたくなんかない。
スッと息を吸って、言った。
「あの人にとって、私は言うことを聞くのが当たり前の所有物でしかないのよ。」
「……は?」
「とりあえず飼っておいて、引き取り手が見付かったら渡す。
金さえ懸ければ自分で勝手に育つし、言うなれば、手間のかからないブリーダー業なのよ。
ホント……吐き気がする。」
もし私がその未来を受け入れて、言われるがままにするなら、将来はどこぞのボンボンと政略結婚させられて、あの人の都合が良いように使われるのでしょうね。
もし、私が言いなりになるならの話だけれど。
「なっ……!なんて嫌な奴っ!!
蛍さんはそんなくそ親父の言いなりになるってんですか!?」
「お馬鹿。
ワンちゃんには、私がそんな腑抜けに見えるのかしら?」
「会社ごと親父さんを潰しそうに見えます!!」
「正解よ。やるじゃない。
……必ず、あの人のことを潰すわ。
そのためにも、とにかくたくさんのことを学ばなきゃならないのよ。
だから、本を読むの。
本を読んで、たくさん知って、それを糧にしてあの人よりも高く登る。
あの人の悔しがる顔を想像しただけで、胸がドキドキするわ。」
「カッコいいです蛍さん……!!
惚れ直しました!!」
「惚れ直す必要はないからあなたさっさと自分の学校に行きなさい。
学校でまで付きまとわれると気持ち悪いわ。」
「酷いっす!でもそこが好きです!!」
「やだ、寒イボ。」
ワンちゃんと別れて、校門をくぐる。
花見川さんの家に寄ったけれど、それでもまだまだ、時間は早い。
部活の朝練に来ている生徒がちらほらといる程度だった。
楽しげに笑う生徒たちに、胸焼けがした。
床で大の字になって寝ているワンちゃんの脇腹を容赦なく蹴って起こして、私たちは学校に向かった。
「グスッ……蛍さん、まだ6時ですよ……。
人っ子一人いないじゃないすか。」
「ワンちゃんはこの先のゴミ捨て場で寝ていれば良いじゃない。
私はこのあと用事があるから、ついてきたりしたら承知しないわよ。」
「じゃあ1時間後に迎えにいくっす!!」
まっすぐゴミ捨て場に走っていったワンちゃんは一体どこに迎えに来るつもりなんだろうか。
というかゴミ捨て場で寝た後に近づいて来ないでもらいたいわ。
「……行くか。」
私はワンちゃんの行った方向とは別の道を歩いて、目的地へと向かった。
目的地は、とある人物のお宅であった。
「……出来た。」
出来たなんて言ったけど、やったのはただ、ドアノブに紙袋を提げただけ。
こんな早い時間に、家の人を起こすわけには行かないしね。
「さて、学校に行きますか。」
踵を返して門を出た時、背を向けたドアが開く音がした。
「……蛍ちゃんかい?」
「……おはようございます、花見川さん。」
「今朝も来てくれたんだね。」
出てきた30代後半の男性――花見川秀二に、挨拶をした。
彼は、私の父の、秘書をしている。
私が届けたのは、父への贈り物だ。
「お父さんへのお弁当だね。」
「……ええ。」
「また帰らなかったんだね、あの人は。」
「いつものことです。
でも、花見川さんにはご迷惑をおかけします。
申し訳ありません。」
「いいんだよ。
蛍ちゃんが気にすることじゃない。
じゃあ、これは私が持っていくからね。」
「お願いします。」
固くお辞儀をして去る私を、花見川さんがしばらく見詰めていた。
* * *
「あの蛍さん……?」
「五月蝿いわよワンちゃん、息しないで。」
「殺す気ですか!?」
登校中に合流したワンちゃんを強制的に黙らせた。
昨日の今日でまだ機嫌が悪いってのに、深夜に届いたメールが、更に私の頭を痛くさせていた。
「突然弁当を届けさせるなんて、頭おかしい。
さっさと隠居してくれれば良いのに。」
「……?
蛍さん、どこに行って来たんですか?
なんか嫌なことでもあったんですか?」
「父親にメールで、弁当届けろって言われたのよ。
娘には弁当一つ作ったことないくせに、良いご身分ね。
吐き気がするわ。」
「んなの、無視すれば良いじゃないっすか!」
「……あの家に住まわせてもらって、生活費まで支援してもらっているのよ。
下手な真似して機嫌損ねるのは避けたいの。
あの人、会社の社長だから私の行動一つで機嫌悪くさせて周りの人に迷惑掛けるのも嫌だし。
それに…………。」
イライラのまま、吐き散らかしていた言葉が止まる。
こんなこと、ワンちゃんに言ったって仕方ないんだから、黙ってるが吉のはず。
でも、ワンちゃんも答えを知りたそうにしているし、私だって、こんなこと溜め込んでおきたくなんかない。
スッと息を吸って、言った。
「あの人にとって、私は言うことを聞くのが当たり前の所有物でしかないのよ。」
「……は?」
「とりあえず飼っておいて、引き取り手が見付かったら渡す。
金さえ懸ければ自分で勝手に育つし、言うなれば、手間のかからないブリーダー業なのよ。
ホント……吐き気がする。」
もし私がその未来を受け入れて、言われるがままにするなら、将来はどこぞのボンボンと政略結婚させられて、あの人の都合が良いように使われるのでしょうね。
もし、私が言いなりになるならの話だけれど。
「なっ……!なんて嫌な奴っ!!
蛍さんはそんなくそ親父の言いなりになるってんですか!?」
「お馬鹿。
ワンちゃんには、私がそんな腑抜けに見えるのかしら?」
「会社ごと親父さんを潰しそうに見えます!!」
「正解よ。やるじゃない。
……必ず、あの人のことを潰すわ。
そのためにも、とにかくたくさんのことを学ばなきゃならないのよ。
だから、本を読むの。
本を読んで、たくさん知って、それを糧にしてあの人よりも高く登る。
あの人の悔しがる顔を想像しただけで、胸がドキドキするわ。」
「カッコいいです蛍さん……!!
惚れ直しました!!」
「惚れ直す必要はないからあなたさっさと自分の学校に行きなさい。
学校でまで付きまとわれると気持ち悪いわ。」
「酷いっす!でもそこが好きです!!」
「やだ、寒イボ。」
ワンちゃんと別れて、校門をくぐる。
花見川さんの家に寄ったけれど、それでもまだまだ、時間は早い。
部活の朝練に来ている生徒がちらほらといる程度だった。
楽しげに笑う生徒たちに、胸焼けがした。