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人の夢で儚い。人が言えば信じられる。
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放課後、裏庭。
私は大勢の男女に囲まれていた。
大きな溜め息を吐く。
幸せが裸足で逃げ出していくわ……。
「お前かぁ?
うちのミサに手ぇ上げたって女は?」
「……ミサ?」
「あんた朝私のこと転ばしたじゃない!?
忘れたなんて言わせないわよ!!」
「ああ、あなたか。」
男に捨てられる~とか言ったけど、女を使うだけの脳ミソも無さそうなバカ面ね……。
こんなおバカさんに、私の貴重な時間を潰されているのかと思うと、怒りを通り越して、ただの苦痛ね。
「で、用件は何かしら。」
「お前よぉ、オレの女に怪我させといてただで済むと思ってんのかぁ?
怪我させたんならよぉ、ちゃんと責任とれっつーの!!」
「責任ねぇ……?」
「そーそー責任っ!!
金払えっつってんだよ。
おじょーさまならもってんだろぉ?」
結局そこに落ち着くのか。
と、いうか今朝のあれは正当防衛じゃないかしらね。
バカには、正当防衛って言葉はわからないのかも、しれないけれど。
「悪いけれど、怪我をしたのなら、証拠を見せていただけないかしら?」
「あん?」
「証拠。
医師の証明書か、せめて怪我そのものを見せなさい。
怪我をさせたのなら、勿論それ相応の責任はとるけれど、今朝の様子を見るに、怪我をした様子は見られなかったわ。
怪我もしてないのに、責任も何もないわよ。」
「ごちゃごちゃとうるせぇぞ!
ミサが怪我させられたって泣いてんだよ!!
ヘリクツこねてねーで金出せやゴルァ!!」
「屁理屈じゃないわ、正論よ。」
「うるせぇ!!テメーら、やっちまえ!!」
いやね、言葉の通じない猿って。
人間なら話し合いで解決できるところを、暴力で解決しようとするんだもの。
男の合図で、下衆です!と顔に書いてあるような低能そうなやつらが私の周りを囲む。
さて、困った。
じりじりと後退し、壁に背中をつける。
男が、1、2、3……全部で7人。
んー……ちょっとまずいかしら。
不良君たちがジリジリと輪を狭めてくる。
だが、最初の一人が拳を振り上げたときだった。
「ちょっと待ってください!!」
声が聞こえた。
遠くからじゃない。
ごくごく近く、私の、目の前、から。
あんぐりと口を開けてしまった。
私だけじゃなく、不良たちもみんな、驚いている。
まさか、そんな……!
なんでいるのよ……。
「く、黒子君っ!?」
「お昼に、あなたの机に何かを入れてる人を見たんです。
放課後に、あなたが裏庭に向かったので何かあると思って……。」
つけてきちゃったのね……!
その優しさは、そしてその勇気はとてつもなく嬉しい限り……むしろ惚れ直すレベルなんだけど、これじゃあ被害者が二人に増えるだけじゃあないの!?
黒子君は驚愕にまだ動きを止めたままの不良たちに向かって口を開いた。
「女の子一人に寄ってたかって……しかも暴力を振るうだなんて最低です。」
「なっ!テメー何者だ!?
今どこから……!!」
そうよね、最近より影の薄くなった黒子君だから、気を付けてないとどこにいるのかわからないし、突然話し掛けられると吃驚するわよね!!
「く、黒子君……。
どうする気なの?」
「それは……、どうしましょう?」
か、考えてなかったの!?
向こう見ずにも程があるわよ!?
というかバスケ部一軍が暴力沙汰起こしちゃダメじゃない!!
この人たちに言葉による説得が通じるとは思えないしっ!!
「わ、わかったわ……。
とりあえず、出てきちゃったのね?」
「多々良さんが危ないと思って……。
すみません。」
嬉しいこと言ってくれるのね!
シュンとした表情も可愛いわ!!
思わず思考が斜め45度上を行くけれど、そんなこと考えている場合じゃなかったわ。
こちらに策がないことを向こうはわかったらしくて、ニヤニヤしながら再び拳を振り上げる。
黒子君に怪我させたくないけれど、黒子君の前で派手な立ち回りもちょっと……。
ううっ!どうする、アイフル!!
ええい、こうなれば荒業!!
「……黒子君、私の言う通りにしてね。」
「え?」
私の言葉に彼は疑問符を浮かべる。
それを無視して私はバッと不良たちの後ろを指差した。
「……………………あっ、先生!!」
「はっ!?」
全員の目が私から逸れる。
今よ……!
黒子君の手を取り走り出す。
不良君たちの間をすり抜け、不良少女と猿男にぶつかりつつ、裏庭を脱出した。
コレだから単純バカは扱いが簡単で良いわ!!
「黒子君早く走ってっ!」
「は、はい!」
慌てて追いかけてくる不良たちを見て、黒子君を急かす。
バスケ部一軍、良いとこ見せろ!
「待てやコルァ!!」
「待てと言われて待つバカはいないわ!」
文学少女なめないで!
いつも重たい本の束を持ち歩いているせいで体力は人一倍よ!!
「多々良さん、こっちです!!」
でもやっぱり現役バスケ部には勝てないようね。
あっという間に前に出た黒子君に引っ張られるようにして、職員室に飛び込んだ。
「し、失礼しますっ!!」
「伊達先生はいらっしゃいますかっ!?」
飛び込んだ私たちを大勢の教師が瞠目して見る。
ちなみに伊達先生は私たちのクラスの担任。
一応私の家の事情も話しているのでこういうことがあると助けてもらったりしている。
性格はお人好し。
女の子に「伊達さんって優しいけど付き合うとしたらちょっと……」と言われる良い人で終わるタイプの人である。
「お、お前らどうしたんだっ!?」
「不良に、絡まれたので、逃げて、きました。」
「え、珍しいな多々良……。
いつもは不良に絡まれても倍返しに」
「いつもいつも伊達先生にはお世話になっています。
今日もしばらく匿ってください。」
「え?うん、良いけど。」
あ、危ない危ない。
黒子君の前で、いつもは不良を伸して事後処理を頼んでいるなんてことを話されたら立ち直れない傷を負ってしまいかねないわ。
「……お前ら、仲良いんだな。」
「え?」
突然、意味のわからないことを言われて、首を傾げる。
仲が良いと思われることは良いけれど、なんで突然に?
「いや、だってほら……手。」
伊達先生の指差す先を目で追って確認する。
そこには仲良く繋がれた手が……、っ!?
「ご、ごめんなさい!!」
「あ、いえ。
僕こそごめんなさい。」
慌てて手を離す。
そ、そう言えば逃げ出すときに繋いでそのままだった……。
は、恥ずかしい……!
斎じゃないけど、恥ずか死ねるわ……。
「えーと、とりあえず応接室で話聞くか?」
「はい。
すぐに出てくとまた捕まるかも知れないですし。」
応接室は同じ階である。
職員室を出たとき、廊下の角に誰かがいた気がした。
恐らくさっきの不良のうちの誰か……。
すぐに帰ろうとしなくて良かったわ。
「なあ、多々良……。
なんで黒子がいるの?」
「なんでも良いじゃないですか。」
「付き合ってんのか?」
「そんなわけないじゃないですか。
先生、また女性にフラれたこと言い触らされたいんですか?」
「な、何故それをっ!?」
前を歩く黒子君の後ろから、ヒソヒソと伊達先生が話し掛けてくる。
鬱陶しい。
「とりあえずコレ、渡しておきますね。」
「……生徒手帳?」
「逃げる際にちょろっと。」
「手癖わりぃなぁ……。」
渡したのは不良少女の生徒手帳である。
ぶつかったときにちょろまかしたのだ。
生活指導の先生とは私に絡む不良を差し出す代わりに私の正当防衛を見逃してもらうというギブアンドテイクな関係だ。
今回もお世話になることになるだろう。
「よし、中に入ってしばらく待ってろ。
走って疲れたろ?
今お茶入れてくるからな。」
「ありがとうございます。」
黒子君と二人、向かい合わせに椅子に座り、先生はそのまま奥の簡易キッチンに向かう。
応接室はお客様にお茶を出すこともあるから、キッチンが備え付けられているのだ。
「あの、黒子君、大丈夫?」
「え?」
「突然巻き込まれて、驚いたでしょう?」
「……驚きましたが、多々良さんの機転のお陰で、助かりました。
僕が勝手に首を突っ込んだのに、助けられるなんて、なんだか身も蓋もないですね。」
「そ、そんなことはないわ……!
とても心強かったもの。
黒子君がいなかったら逃げ切れたかどうかも怪しいもの。」
そこで会話が途切れる。
このパターン何回目よ……。
誰か私にコミュニケーション力を……!
「……多々良さん、こういうこと、よくあるんですか?」
「え?」
「不良に囲まれていた時、あまり焦ってなかったように見えて……。」
「……そうね、私の父親がちょっとした会社の社長で、少しお金持ちだから、お金を狙った不良に絡まれることは、たまにあるわ。」
「そんな……。」
きゅっと手を強く握った黒子君が少しうつ向く。
わ、私なんかの為に傷付いてくれているの……!?
良い子!本当に良い子!!
私が感動で言葉を詰まらせていると、伊達先生が帰ってきた。
そう言えばお茶を入れるとか言ってたわね。
もう少しゆっくりしてくればよかったのよタイミング悪いわね。
「ほら、お茶入れてきたぞ~。」
「ちっ、……ありがとうございます先生。
はい、黒子君、どうぞ。」
「ありがとうございます多々良さん。」
「え、あれ?オレは?
オレお茶入れてきたのにおかしくない?」
騒がしいわね伊達……先生。
視線を向けると、萎縮して先生は私の隣の席に落ち着いた。
あら、そんなに私の視線は怖かったかしら。
「えー、とりあえずお前ら、さっきあったことを話してくれるか?」
「はい。」
促され、私と黒子君が交互に話した。
私は朝のことから。
黒子君は昼に見たことから。
「……ふーん。
二人の話と不良たちの特徴からすると……そりゃあ最近生活指導の先生が目ぇ付けてる奴らだな。」
「そうなんですか……。」
「集団で襲ってくるからなぁ。
被害者もビビっちゃってなかなか話してくれないから証拠もなくて……。
とりあえず、報復の可能性もあるから今日は二人とも、オレが車で送ってく。」
「助かります。」
こういうときは本当に彼が担任で良かったと思う。
飲んだ湯飲みを片して、私たちは伊達先生の車に乗った。
私は大勢の男女に囲まれていた。
大きな溜め息を吐く。
幸せが裸足で逃げ出していくわ……。
「お前かぁ?
うちのミサに手ぇ上げたって女は?」
「……ミサ?」
「あんた朝私のこと転ばしたじゃない!?
忘れたなんて言わせないわよ!!」
「ああ、あなたか。」
男に捨てられる~とか言ったけど、女を使うだけの脳ミソも無さそうなバカ面ね……。
こんなおバカさんに、私の貴重な時間を潰されているのかと思うと、怒りを通り越して、ただの苦痛ね。
「で、用件は何かしら。」
「お前よぉ、オレの女に怪我させといてただで済むと思ってんのかぁ?
怪我させたんならよぉ、ちゃんと責任とれっつーの!!」
「責任ねぇ……?」
「そーそー責任っ!!
金払えっつってんだよ。
おじょーさまならもってんだろぉ?」
結局そこに落ち着くのか。
と、いうか今朝のあれは正当防衛じゃないかしらね。
バカには、正当防衛って言葉はわからないのかも、しれないけれど。
「悪いけれど、怪我をしたのなら、証拠を見せていただけないかしら?」
「あん?」
「証拠。
医師の証明書か、せめて怪我そのものを見せなさい。
怪我をさせたのなら、勿論それ相応の責任はとるけれど、今朝の様子を見るに、怪我をした様子は見られなかったわ。
怪我もしてないのに、責任も何もないわよ。」
「ごちゃごちゃとうるせぇぞ!
ミサが怪我させられたって泣いてんだよ!!
ヘリクツこねてねーで金出せやゴルァ!!」
「屁理屈じゃないわ、正論よ。」
「うるせぇ!!テメーら、やっちまえ!!」
いやね、言葉の通じない猿って。
人間なら話し合いで解決できるところを、暴力で解決しようとするんだもの。
男の合図で、下衆です!と顔に書いてあるような低能そうなやつらが私の周りを囲む。
さて、困った。
じりじりと後退し、壁に背中をつける。
男が、1、2、3……全部で7人。
んー……ちょっとまずいかしら。
不良君たちがジリジリと輪を狭めてくる。
だが、最初の一人が拳を振り上げたときだった。
「ちょっと待ってください!!」
声が聞こえた。
遠くからじゃない。
ごくごく近く、私の、目の前、から。
あんぐりと口を開けてしまった。
私だけじゃなく、不良たちもみんな、驚いている。
まさか、そんな……!
なんでいるのよ……。
「く、黒子君っ!?」
「お昼に、あなたの机に何かを入れてる人を見たんです。
放課後に、あなたが裏庭に向かったので何かあると思って……。」
つけてきちゃったのね……!
その優しさは、そしてその勇気はとてつもなく嬉しい限り……むしろ惚れ直すレベルなんだけど、これじゃあ被害者が二人に増えるだけじゃあないの!?
黒子君は驚愕にまだ動きを止めたままの不良たちに向かって口を開いた。
「女の子一人に寄ってたかって……しかも暴力を振るうだなんて最低です。」
「なっ!テメー何者だ!?
今どこから……!!」
そうよね、最近より影の薄くなった黒子君だから、気を付けてないとどこにいるのかわからないし、突然話し掛けられると吃驚するわよね!!
「く、黒子君……。
どうする気なの?」
「それは……、どうしましょう?」
か、考えてなかったの!?
向こう見ずにも程があるわよ!?
というかバスケ部一軍が暴力沙汰起こしちゃダメじゃない!!
この人たちに言葉による説得が通じるとは思えないしっ!!
「わ、わかったわ……。
とりあえず、出てきちゃったのね?」
「多々良さんが危ないと思って……。
すみません。」
嬉しいこと言ってくれるのね!
シュンとした表情も可愛いわ!!
思わず思考が斜め45度上を行くけれど、そんなこと考えている場合じゃなかったわ。
こちらに策がないことを向こうはわかったらしくて、ニヤニヤしながら再び拳を振り上げる。
黒子君に怪我させたくないけれど、黒子君の前で派手な立ち回りもちょっと……。
ううっ!どうする、アイフル!!
ええい、こうなれば荒業!!
「……黒子君、私の言う通りにしてね。」
「え?」
私の言葉に彼は疑問符を浮かべる。
それを無視して私はバッと不良たちの後ろを指差した。
「……………………あっ、先生!!」
「はっ!?」
全員の目が私から逸れる。
今よ……!
黒子君の手を取り走り出す。
不良君たちの間をすり抜け、不良少女と猿男にぶつかりつつ、裏庭を脱出した。
コレだから単純バカは扱いが簡単で良いわ!!
「黒子君早く走ってっ!」
「は、はい!」
慌てて追いかけてくる不良たちを見て、黒子君を急かす。
バスケ部一軍、良いとこ見せろ!
「待てやコルァ!!」
「待てと言われて待つバカはいないわ!」
文学少女なめないで!
いつも重たい本の束を持ち歩いているせいで体力は人一倍よ!!
「多々良さん、こっちです!!」
でもやっぱり現役バスケ部には勝てないようね。
あっという間に前に出た黒子君に引っ張られるようにして、職員室に飛び込んだ。
「し、失礼しますっ!!」
「伊達先生はいらっしゃいますかっ!?」
飛び込んだ私たちを大勢の教師が瞠目して見る。
ちなみに伊達先生は私たちのクラスの担任。
一応私の家の事情も話しているのでこういうことがあると助けてもらったりしている。
性格はお人好し。
女の子に「伊達さんって優しいけど付き合うとしたらちょっと……」と言われる良い人で終わるタイプの人である。
「お、お前らどうしたんだっ!?」
「不良に、絡まれたので、逃げて、きました。」
「え、珍しいな多々良……。
いつもは不良に絡まれても倍返しに」
「いつもいつも伊達先生にはお世話になっています。
今日もしばらく匿ってください。」
「え?うん、良いけど。」
あ、危ない危ない。
黒子君の前で、いつもは不良を伸して事後処理を頼んでいるなんてことを話されたら立ち直れない傷を負ってしまいかねないわ。
「……お前ら、仲良いんだな。」
「え?」
突然、意味のわからないことを言われて、首を傾げる。
仲が良いと思われることは良いけれど、なんで突然に?
「いや、だってほら……手。」
伊達先生の指差す先を目で追って確認する。
そこには仲良く繋がれた手が……、っ!?
「ご、ごめんなさい!!」
「あ、いえ。
僕こそごめんなさい。」
慌てて手を離す。
そ、そう言えば逃げ出すときに繋いでそのままだった……。
は、恥ずかしい……!
斎じゃないけど、恥ずか死ねるわ……。
「えーと、とりあえず応接室で話聞くか?」
「はい。
すぐに出てくとまた捕まるかも知れないですし。」
応接室は同じ階である。
職員室を出たとき、廊下の角に誰かがいた気がした。
恐らくさっきの不良のうちの誰か……。
すぐに帰ろうとしなくて良かったわ。
「なあ、多々良……。
なんで黒子がいるの?」
「なんでも良いじゃないですか。」
「付き合ってんのか?」
「そんなわけないじゃないですか。
先生、また女性にフラれたこと言い触らされたいんですか?」
「な、何故それをっ!?」
前を歩く黒子君の後ろから、ヒソヒソと伊達先生が話し掛けてくる。
鬱陶しい。
「とりあえずコレ、渡しておきますね。」
「……生徒手帳?」
「逃げる際にちょろっと。」
「手癖わりぃなぁ……。」
渡したのは不良少女の生徒手帳である。
ぶつかったときにちょろまかしたのだ。
生活指導の先生とは私に絡む不良を差し出す代わりに私の正当防衛を見逃してもらうというギブアンドテイクな関係だ。
今回もお世話になることになるだろう。
「よし、中に入ってしばらく待ってろ。
走って疲れたろ?
今お茶入れてくるからな。」
「ありがとうございます。」
黒子君と二人、向かい合わせに椅子に座り、先生はそのまま奥の簡易キッチンに向かう。
応接室はお客様にお茶を出すこともあるから、キッチンが備え付けられているのだ。
「あの、黒子君、大丈夫?」
「え?」
「突然巻き込まれて、驚いたでしょう?」
「……驚きましたが、多々良さんの機転のお陰で、助かりました。
僕が勝手に首を突っ込んだのに、助けられるなんて、なんだか身も蓋もないですね。」
「そ、そんなことはないわ……!
とても心強かったもの。
黒子君がいなかったら逃げ切れたかどうかも怪しいもの。」
そこで会話が途切れる。
このパターン何回目よ……。
誰か私にコミュニケーション力を……!
「……多々良さん、こういうこと、よくあるんですか?」
「え?」
「不良に囲まれていた時、あまり焦ってなかったように見えて……。」
「……そうね、私の父親がちょっとした会社の社長で、少しお金持ちだから、お金を狙った不良に絡まれることは、たまにあるわ。」
「そんな……。」
きゅっと手を強く握った黒子君が少しうつ向く。
わ、私なんかの為に傷付いてくれているの……!?
良い子!本当に良い子!!
私が感動で言葉を詰まらせていると、伊達先生が帰ってきた。
そう言えばお茶を入れるとか言ってたわね。
もう少しゆっくりしてくればよかったのよタイミング悪いわね。
「ほら、お茶入れてきたぞ~。」
「ちっ、……ありがとうございます先生。
はい、黒子君、どうぞ。」
「ありがとうございます多々良さん。」
「え、あれ?オレは?
オレお茶入れてきたのにおかしくない?」
騒がしいわね伊達……先生。
視線を向けると、萎縮して先生は私の隣の席に落ち着いた。
あら、そんなに私の視線は怖かったかしら。
「えー、とりあえずお前ら、さっきあったことを話してくれるか?」
「はい。」
促され、私と黒子君が交互に話した。
私は朝のことから。
黒子君は昼に見たことから。
「……ふーん。
二人の話と不良たちの特徴からすると……そりゃあ最近生活指導の先生が目ぇ付けてる奴らだな。」
「そうなんですか……。」
「集団で襲ってくるからなぁ。
被害者もビビっちゃってなかなか話してくれないから証拠もなくて……。
とりあえず、報復の可能性もあるから今日は二人とも、オレが車で送ってく。」
「助かります。」
こういうときは本当に彼が担任で良かったと思う。
飲んだ湯飲みを片して、私たちは伊達先生の車に乗った。