×鳴門

この世界の科学技術は、あまり発達してないようだ。
電話がないし、テレビもない。
車もないし、電車もない。
ただ、ガスや電気は通っているし、人々の活動範囲は里内に限られているから、大して不便もない、ってところか。

「ひのくに、このはがくれのさと?」
「そう!火の国、木の葉隠れの里!」

地図を見ながら母さんが説明してくれるには、ここはそういう名前の土地らしい。
忍者が多い里で、一般人は少ない。
隠れ里ってだけはあるな。
そんで忍者の仕事は、要人の暗殺から畑の草むしりまで多種多様。
そして忍者の住む隠れ里は、ここの他にも幾つかあるらしい。

「えっと、水の国、と、土と雷と、風?」
「そう!それぞれの国に隠れ里があるの。あとは他の小さな国にもちらほらとね」
「火の国、大きいんだな」
「そうね、五大国の1つだからね」
「ふぅん……」

地図は全国を写したこれと、火の国の地図だけらしい。
見たところ、日本とも似つかねぇし、アメリカやヨーロッパらしきものはない。
ここの住民達に知られていないだけか、それとも本当にないのか……。
外来語らしき言葉は、度々聞くんだがなぁ。

「いつか、いろんな国に旅行に行ってみたいわねぇ」
「……母さん、他の国に行ったことねーのか?」
「この国から出たことないわね……」

危険な血、とやらのせいなのか。
危険なものを、国外に出したくはねーしな。
……でも、一体何がそんなに危険なのか。
聞きたいけれど、そんなことを聞いて母さんに悲しい顔をさせるのは嫌だから、なかなか切り出せないでいる。

「いつか、二人で行きましょうね!」
「んっ」

行くのなら、まず水の国に行ってみたい。
そこの隠れ里が血霧の里などという物騒な名前で呼ばれていることを知らなかったオレは、ただ純粋にそう思っていた。
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