×鳴門
輪廻とは――回転する車輪がきわまりないように、衆生(しゅじょう)が死後、迷妄の世界である三界・六道の間で生死をくり返すこと。インドでカルマ(業)の思想とともに発達した考えで、仏教の基本概念。流転。「輪廻転生」。明鏡国語辞典より。
「輪廻転生……ってか」
「コウヤちゃん?どうかした?」
「なんでもねー!」
ボソッと呟いた声が聞こえてしまったのか、不思議そうに問い掛けられる。
オレこと、鬼崎コウヤ、現在3歳と5ヶ月。
妖の跋扈するあの世界で、うっかり殺されたオレは、気付けば再び、赤子の姿へと戻っていた。
どうやらオレは、転生を繰り返しているようだ。
理由は不明。
だが、転生しちまったものは仕方ねぇ。
無難に生き抜く、しかないのだろう。
「コウヤちゃーん、お母さんとお買い物行こう!」
「ん!」
なんと今世のオレには、母親がいるのだ。
今までは、母親と会話した記憶は全くないからな。
だから母親と一緒に見る世界は、全部が全部新鮮で、毎日幸せに暮らしている。
母親ってすごいんだな。
その言動の全てに愛情が満ちていて、その凛とした態度は強かで美しい。
オレは母親に愛されたことも、母親になったこともねーから、こんな経験は初めてだった。
「コウヤちゃん、今日のお夕飯は何が良いかしら?」
「んー、マグロ」
「コウヤちゃんはお魚好きねー」
マグロ美味いだろ。
良いじゃねぇか、こんな子供らしくしてみるのも。
ホントはカルパッチョが食べたいんだが、ここにはカルパッチョはないらしい。
今日もたぶん、ハンバーグか秋刀魚の塩焼きとかになるんじゃねーかな。
マグロだって安くはないのだし。
「なー、母さん」
「なあにー?」
「今日はどこ行くんだ?」
「んー、お魚屋さんとー、八百屋さんかしらねー」
「楽しみだなっ」
「そうねっ!」
八百屋も魚屋も、商店街にある。
商店街か……。
本音を言えば、あそこにはあまり行きたくない。
チラリと母さんを見る。
母さんの色は白い。
オレも白い。
髪も、肌も、陶器みたいに真っ白だ。
目は白っつうより銀灰色。
オレは髪が少し銀色がかっているが、これは遺伝だそうだ。
オレは母さんと同じ色だから、気に入っている。
だが周りは違う。
周りの奴ら……、里の奴らはオレたちのことを嫌っているようだった。
この白さを、そしてこの白さを伝える血を。
「またあの親子だ」
「さっさと里を出ていってくれれば良いものを」
「あんなに白いなんて……、化け物のようじゃないか」
「化け物なんだよ。外身も中身も」
ぼそぼそと陰口を言う声が聞こえる。
オレは耳が良いから、一言漏らさず聞こえている。
母さんが、陰口に耐えて唇を噛んでいるのが痛々しかった。
「母さん、さっさと帰って、一緒に夕飯作ろうぜ!!」
「コウヤちゃん……、そうね!一緒に美味しいごはん作ろうね!!」
オレを見て、花が咲くように微笑んでくれる母さんに心が暖かくなった。
ザンザス、ディーノ。
オレ達が過ごしたあの世界からは遠く離れたところまで来ちまったが、オレは今、ちゃんと幸せだぜ。
お前達は今、どうしてるんだろうな……。
いつかまた、会えることを祈ってる。
見上げた空は、オレ達親子の白を染め上げてしまいそうな位、深く美しい夕焼け色だった。
「輪廻転生……ってか」
「コウヤちゃん?どうかした?」
「なんでもねー!」
ボソッと呟いた声が聞こえてしまったのか、不思議そうに問い掛けられる。
オレこと、鬼崎コウヤ、現在3歳と5ヶ月。
妖の跋扈するあの世界で、うっかり殺されたオレは、気付けば再び、赤子の姿へと戻っていた。
どうやらオレは、転生を繰り返しているようだ。
理由は不明。
だが、転生しちまったものは仕方ねぇ。
無難に生き抜く、しかないのだろう。
「コウヤちゃーん、お母さんとお買い物行こう!」
「ん!」
なんと今世のオレには、母親がいるのだ。
今までは、母親と会話した記憶は全くないからな。
だから母親と一緒に見る世界は、全部が全部新鮮で、毎日幸せに暮らしている。
母親ってすごいんだな。
その言動の全てに愛情が満ちていて、その凛とした態度は強かで美しい。
オレは母親に愛されたことも、母親になったこともねーから、こんな経験は初めてだった。
「コウヤちゃん、今日のお夕飯は何が良いかしら?」
「んー、マグロ」
「コウヤちゃんはお魚好きねー」
マグロ美味いだろ。
良いじゃねぇか、こんな子供らしくしてみるのも。
ホントはカルパッチョが食べたいんだが、ここにはカルパッチョはないらしい。
今日もたぶん、ハンバーグか秋刀魚の塩焼きとかになるんじゃねーかな。
マグロだって安くはないのだし。
「なー、母さん」
「なあにー?」
「今日はどこ行くんだ?」
「んー、お魚屋さんとー、八百屋さんかしらねー」
「楽しみだなっ」
「そうねっ!」
八百屋も魚屋も、商店街にある。
商店街か……。
本音を言えば、あそこにはあまり行きたくない。
チラリと母さんを見る。
母さんの色は白い。
オレも白い。
髪も、肌も、陶器みたいに真っ白だ。
目は白っつうより銀灰色。
オレは髪が少し銀色がかっているが、これは遺伝だそうだ。
オレは母さんと同じ色だから、気に入っている。
だが周りは違う。
周りの奴ら……、里の奴らはオレたちのことを嫌っているようだった。
この白さを、そしてこの白さを伝える血を。
「またあの親子だ」
「さっさと里を出ていってくれれば良いものを」
「あんなに白いなんて……、化け物のようじゃないか」
「化け物なんだよ。外身も中身も」
ぼそぼそと陰口を言う声が聞こえる。
オレは耳が良いから、一言漏らさず聞こえている。
母さんが、陰口に耐えて唇を噛んでいるのが痛々しかった。
「母さん、さっさと帰って、一緒に夕飯作ろうぜ!!」
「コウヤちゃん……、そうね!一緒に美味しいごはん作ろうね!!」
オレを見て、花が咲くように微笑んでくれる母さんに心が暖かくなった。
ザンザス、ディーノ。
オレ達が過ごしたあの世界からは遠く離れたところまで来ちまったが、オレは今、ちゃんと幸せだぜ。
お前達は今、どうしてるんだろうな……。
いつかまた、会えることを祈ってる。
見上げた空は、オレ達親子の白を染め上げてしまいそうな位、深く美しい夕焼け色だった。