×ぬら孫
「京にはらせんの封印が施されている」
「らせんの封印?」
「二条城を中心に、京都の寺社仏閣を利用した、名前の通り螺旋状の封印だ。我は呪避けの石をもらっておったから、この封印には関係なく結界の中を動けた。だが、普通の妖怪ではこの封印の中には入れない」
「つまり、乙女達は手始めに、らせんの封印を解くために動くんだなぁ?」
「ああ、彼らの目的は、二条城での鵺の出産。必ず羽衣狐様は封印を解いて、部下と共に京の中心に侵攻してくる。そしてその最中、霊力の高い人の子を拐い続けるだろう。それを止めるために、花開院の連中も動き出すはずだ。何より、らせんの封印は花開院の人間が守っておるしなぁ」
「……花開院と乙女との喧嘩に、手や口出す気はねぇ。乙女が子を産みたいと思う気持ちも、分かる。だが、一般人を襲わせるわけにはいかねぇ。……奴らが動くのは夜だぁ。オレに出来る限りで良い。止めるぞ」
「ふむ、まあお前に付き合うのも悪くない。手伝ってやるさ」
「……ふ、助かるぜぇ、紫紺」
黄昏の京都、地平線だけがほんのり赤く染まっている。
オレと紫紺は、伏見の駅近い路地裏を散策しながら、話していた。
らせんの封印の一番外側、伏見稲荷神社の前には、妖気が満ちていた。
これから直ぐにでも、乙女達京妖怪が侵攻してくるはずだ。
そしてこの神社にいる、まだ若い花開院の守護者は、恐らく彼らに殺される。
それを止める気はない。
そのくらいも覚悟せずに、守護者を名乗っている方が悪いんだ。
相手の実力も知らないで、鷹を括ってる奴を助けてやる義理はない。
つぅか、ここに来る前に花開院本家に『羽衣狐が動き出した』って矢文射ってきたのに、それで逃げないバカ、オレが助ける必要ないし。
「む、来たなぁ……」
「……ああ、雑魚が散らばり始めている。オレ達も動くぞぉ」
「ああ」
近くに何人か人間がいる。
恐らくは夜遊びをしている、バカなガキどもだろうけど、夜遊びの対価が死とは、あまりにも釣り合わない。
「アーロ、コルヴォ、ファルコ、お前らも行け」
「我はどうすれば良い?」
「お前はオレと行動だぁ。あいつらと違って、オレ達は死んだらそこで終わり……。あいつらみたいに、壊れても直せるわけじゃあねぇからなぁ」
「ふむ、なるほど」
アーロ達はあくまで、機械、武器だ。
壊れても直せる。
だがオレ達は生身だ。
もしバラバラになった時に、どちらかが傷を負っても、助けにいけないかもしれない。
「いやぁぁあああっ!!」
「っ!向こうかぁ!!」
暗い路地の奥から、女性の悲鳴が聞こえる。
微かに、男のわめき声も聞こえる。
そしておびただしい妖気が……。
「死ね」
「ぃぎゃぁあああ!?」
「ひぃい!?な、何!?」
「ま、また何か来やがったー!!」
怯えるカップルを見てため息を吐く。
まあ、今のオレは、昔やってたアクーラ……ガットネロとか呼ばれてた時と同じ格好だから、怪しいことこの上ないだろうが、助けてやってそれってどうなんだ……。
オレは少し考えると、被っていたヘルメットを脱いだ。
長い銀髪が零れ落ちる。
どうせ普段は黒髪のカツラを被って、カラコンを入れてるから、素顔見られたって問題ないだろ。
「ぇ……わ……綺麗……」
「な、なんだよぉ……!お前も、化け物なのか!?」
「……一応これでも人間だぁ」
で、脱いだら脱いだで女は見とれてるし、男は余計に怖がるし、オレにどうしろと言うんだ。
まあともかく、オレは二人の手を引いて明るい道まで連れていく。
「あの……、あなたは……」
「オレが送れるのはここまでだぁ」
「は?」
「明るい道を通っていけ。そうすれば襲われない。……もう夜道は出歩くなぁ」
「ちょっと待ってくだ……あっ!!」
言いたいことだけ言って、オレはさっさと姿を消す。
コイツらにだけ構っている暇はない。
「髪、仕舞わないでも良いのか?」
「ま、一々気にするのも面倒くせぇしなぁ。時間も惜しい」
「むぅ、確かになぁ」
そしてオレ達は、他の雑魚妖怪を潰すためにまた走り出す。
遠くで、大きな妖気が封印から解放されたのを感じた。
「らせんの封印?」
「二条城を中心に、京都の寺社仏閣を利用した、名前の通り螺旋状の封印だ。我は呪避けの石をもらっておったから、この封印には関係なく結界の中を動けた。だが、普通の妖怪ではこの封印の中には入れない」
「つまり、乙女達は手始めに、らせんの封印を解くために動くんだなぁ?」
「ああ、彼らの目的は、二条城での鵺の出産。必ず羽衣狐様は封印を解いて、部下と共に京の中心に侵攻してくる。そしてその最中、霊力の高い人の子を拐い続けるだろう。それを止めるために、花開院の連中も動き出すはずだ。何より、らせんの封印は花開院の人間が守っておるしなぁ」
「……花開院と乙女との喧嘩に、手や口出す気はねぇ。乙女が子を産みたいと思う気持ちも、分かる。だが、一般人を襲わせるわけにはいかねぇ。……奴らが動くのは夜だぁ。オレに出来る限りで良い。止めるぞ」
「ふむ、まあお前に付き合うのも悪くない。手伝ってやるさ」
「……ふ、助かるぜぇ、紫紺」
黄昏の京都、地平線だけがほんのり赤く染まっている。
オレと紫紺は、伏見の駅近い路地裏を散策しながら、話していた。
らせんの封印の一番外側、伏見稲荷神社の前には、妖気が満ちていた。
これから直ぐにでも、乙女達京妖怪が侵攻してくるはずだ。
そしてこの神社にいる、まだ若い花開院の守護者は、恐らく彼らに殺される。
それを止める気はない。
そのくらいも覚悟せずに、守護者を名乗っている方が悪いんだ。
相手の実力も知らないで、鷹を括ってる奴を助けてやる義理はない。
つぅか、ここに来る前に花開院本家に『羽衣狐が動き出した』って矢文射ってきたのに、それで逃げないバカ、オレが助ける必要ないし。
「む、来たなぁ……」
「……ああ、雑魚が散らばり始めている。オレ達も動くぞぉ」
「ああ」
近くに何人か人間がいる。
恐らくは夜遊びをしている、バカなガキどもだろうけど、夜遊びの対価が死とは、あまりにも釣り合わない。
「アーロ、コルヴォ、ファルコ、お前らも行け」
「我はどうすれば良い?」
「お前はオレと行動だぁ。あいつらと違って、オレ達は死んだらそこで終わり……。あいつらみたいに、壊れても直せるわけじゃあねぇからなぁ」
「ふむ、なるほど」
アーロ達はあくまで、機械、武器だ。
壊れても直せる。
だがオレ達は生身だ。
もしバラバラになった時に、どちらかが傷を負っても、助けにいけないかもしれない。
「いやぁぁあああっ!!」
「っ!向こうかぁ!!」
暗い路地の奥から、女性の悲鳴が聞こえる。
微かに、男のわめき声も聞こえる。
そしておびただしい妖気が……。
「死ね」
「ぃぎゃぁあああ!?」
「ひぃい!?な、何!?」
「ま、また何か来やがったー!!」
怯えるカップルを見てため息を吐く。
まあ、今のオレは、昔やってたアクーラ……ガットネロとか呼ばれてた時と同じ格好だから、怪しいことこの上ないだろうが、助けてやってそれってどうなんだ……。
オレは少し考えると、被っていたヘルメットを脱いだ。
長い銀髪が零れ落ちる。
どうせ普段は黒髪のカツラを被って、カラコンを入れてるから、素顔見られたって問題ないだろ。
「ぇ……わ……綺麗……」
「な、なんだよぉ……!お前も、化け物なのか!?」
「……一応これでも人間だぁ」
で、脱いだら脱いだで女は見とれてるし、男は余計に怖がるし、オレにどうしろと言うんだ。
まあともかく、オレは二人の手を引いて明るい道まで連れていく。
「あの……、あなたは……」
「オレが送れるのはここまでだぁ」
「は?」
「明るい道を通っていけ。そうすれば襲われない。……もう夜道は出歩くなぁ」
「ちょっと待ってくだ……あっ!!」
言いたいことだけ言って、オレはさっさと姿を消す。
コイツらにだけ構っている暇はない。
「髪、仕舞わないでも良いのか?」
「ま、一々気にするのも面倒くせぇしなぁ。時間も惜しい」
「むぅ、確かになぁ」
そしてオレ達は、他の雑魚妖怪を潰すためにまた走り出す。
遠くで、大きな妖気が封印から解放されたのを感じた。