×ぬら孫
「乙女、ケーキ食わねぇか?」
「けぇき?食べるに決まっておろうが。行くぞ狂骨、着いて参れ」
「はい、お姉様!」
なんて具合に二人を誘い出して、よく3人でお茶をするバルコニーに連れていく。
そこまではよくある光景なんだが、今日はいつもとはちょっとだけ違う。
その日のケーキは、実はオレの手作りだったりするわけで、そう言えばこの世に生を受けて初めて作ったことになるそのケーキは、結構気合いの入ったものになっていた。
「じゃん。オレ特製のシフォンケーキだ」
「え?これ鮫弥が作ったの!?」
「見た目は悪くないのう」
「味も結構自信あるぜぇ」
プレーンに紅茶、抹茶、ココアやレーズンなどなど。
色んな味のケーキを作った。
言い換えるなら作りすぎた。
生クリームとミントの葉が添えられたケーキを二人の前に差し出す。
フォークで掬われたシフォンケーキが、二人の口に入る。
感想を期待して二人を見詰めていると、乙女がふぅ、とアンニュイな吐息を漏らして言った。
「悪くないが……いつもの店には劣るのう。どれ、こちらのここあももらうぞ」
「鮫弥、美味しい!あんた意外と料理出来るのね!」
「……おう」
いつもの店には劣る、とか言いながらパクパクとケーキを蹂躙していく乙女も失礼だが、意外と、とか悪気もなく言う狂骨も失礼だよな。
これでも女の子な訳だし?淑女の嗜みだぜ?
……ってのは、戯れ言か。
「……ま、美味しく食べてくれてるみてぇだし、良いか」
「この抹茶の美味しいですよお姉様!」
「ここあも悪くないのぅ。鮫弥、次に何かを作るときはこれ以上のモノを作ってくるのじゃぞ?」
「……リクエストとかあるか?」
「そうじゃな……、がとぉしょこらが食べたい」
「ん゙、了解」
「鮫弥、私も!私くれぇぷが食べたい!この間テレビでやってたの!」
「じゃあ今度作ろうなぁ」
ガッツリリクエストまで頂いて、今度はガトーショコラとクレープを作ることに決まったのだった。
ガトーショコラは兎も角として、クレープなら一緒に作れるかな。
子供ならきっと喜ぶはず。
というか狂骨は、一体どこでテレビなんて見たんだろう。
乙女の部屋に、テレビはなかったと思うけど。
「じゃあ今度の休みには、一緒にクレープとガトーショコラ作って……、あ゙、でも今度の休みはパーティーに呼ばれてたんだっけかぁ」
「ぱーてぃー?」
「あ゙~……金持ち同士の懇親会みたいなのっつーか、まあオレは顔合わせが目当てなんだけどよぉ」
「ほぉ、ならたっぷりとおめかししていかねばなぁ?」
「ぜっっってーヤダ」
ニヤニヤと意地の悪い笑みで言ってくる乙女に、オレは顔をしかめて拒絶を返した。
だって乙女はオレの性別知ってるし、あの笑い方は間違いなく、女物の服を着せてからかう気だ。
色んな意味で困るんだよソレ。
「ドレスは何色が良いかのう?妾のお薦めは黒だが……お主にはまだ早いかもしれんのぅ。緋色はどうじゃ?」
「だっから、ドレスは着ねぇって!オレはタキシードか何か着てくんだよ」
「そうですよお姉様。鮫弥は男ですから、……確かにドレスも似合いそうですけど、女物は着ませんよ?」
……そうだった、狂骨は知らないんだった。
別にバラされても困ることはないが……、気分的には、何か嫌だな。
「……狂骨よ、この阿呆は」
「誰が阿呆だ誰がぁ!」
「この馬鹿は正真正銘、歴とした女子よ。家の都合で男の振りをしとるだけじゃ」
「……」
「え?……え?やだなぁお姉様ったら!鮫弥が女な訳ないじゃないですかぁ~!」
「妾は嘘なぞ吐かぬ」
阿呆だの馬鹿だのと酷いことを言いながら、あっさりとオレの正体をバラした阿呆乙女は、混乱する狂骨を前にしれっとした態度で紅茶を啜る。
狂骨と目が合うよりも早く、オレは彼女から顔を背けてため息を吐いた。
ああ、面倒くせぇ……。
「あんた……女なの!?」
「…………まあ」
「全然気付かなかった……」
「……」
嬉しいのだか悲しいのだか……。
「じゃあおめかししないと駄目じゃない!」
「いや……男ってことになってるから」
「?でも、女なんでしょ?」
「女だけど男なんだ」
「ん?」
狂骨の混乱は深まり、乙女が楽しそうに笑っている。
ああ~、こうなるから面倒なんだよ。
狂骨はとりあえず、お茶でも飲ませて落ち着かせて、オレはイスに深く腰掛けて再びため息を吐いた。
早く部屋に帰って、紫紺に愚痴を聞いてもらいたい……。
そしてその後、オレを着せ替え人形にしようとする二人から全力で逃げ、1時間後、オレは無事自室へと生還を果たしたのだった。
「けぇき?食べるに決まっておろうが。行くぞ狂骨、着いて参れ」
「はい、お姉様!」
なんて具合に二人を誘い出して、よく3人でお茶をするバルコニーに連れていく。
そこまではよくある光景なんだが、今日はいつもとはちょっとだけ違う。
その日のケーキは、実はオレの手作りだったりするわけで、そう言えばこの世に生を受けて初めて作ったことになるそのケーキは、結構気合いの入ったものになっていた。
「じゃん。オレ特製のシフォンケーキだ」
「え?これ鮫弥が作ったの!?」
「見た目は悪くないのう」
「味も結構自信あるぜぇ」
プレーンに紅茶、抹茶、ココアやレーズンなどなど。
色んな味のケーキを作った。
言い換えるなら作りすぎた。
生クリームとミントの葉が添えられたケーキを二人の前に差し出す。
フォークで掬われたシフォンケーキが、二人の口に入る。
感想を期待して二人を見詰めていると、乙女がふぅ、とアンニュイな吐息を漏らして言った。
「悪くないが……いつもの店には劣るのう。どれ、こちらのここあももらうぞ」
「鮫弥、美味しい!あんた意外と料理出来るのね!」
「……おう」
いつもの店には劣る、とか言いながらパクパクとケーキを蹂躙していく乙女も失礼だが、意外と、とか悪気もなく言う狂骨も失礼だよな。
これでも女の子な訳だし?淑女の嗜みだぜ?
……ってのは、戯れ言か。
「……ま、美味しく食べてくれてるみてぇだし、良いか」
「この抹茶の美味しいですよお姉様!」
「ここあも悪くないのぅ。鮫弥、次に何かを作るときはこれ以上のモノを作ってくるのじゃぞ?」
「……リクエストとかあるか?」
「そうじゃな……、がとぉしょこらが食べたい」
「ん゙、了解」
「鮫弥、私も!私くれぇぷが食べたい!この間テレビでやってたの!」
「じゃあ今度作ろうなぁ」
ガッツリリクエストまで頂いて、今度はガトーショコラとクレープを作ることに決まったのだった。
ガトーショコラは兎も角として、クレープなら一緒に作れるかな。
子供ならきっと喜ぶはず。
というか狂骨は、一体どこでテレビなんて見たんだろう。
乙女の部屋に、テレビはなかったと思うけど。
「じゃあ今度の休みには、一緒にクレープとガトーショコラ作って……、あ゙、でも今度の休みはパーティーに呼ばれてたんだっけかぁ」
「ぱーてぃー?」
「あ゙~……金持ち同士の懇親会みたいなのっつーか、まあオレは顔合わせが目当てなんだけどよぉ」
「ほぉ、ならたっぷりとおめかししていかねばなぁ?」
「ぜっっってーヤダ」
ニヤニヤと意地の悪い笑みで言ってくる乙女に、オレは顔をしかめて拒絶を返した。
だって乙女はオレの性別知ってるし、あの笑い方は間違いなく、女物の服を着せてからかう気だ。
色んな意味で困るんだよソレ。
「ドレスは何色が良いかのう?妾のお薦めは黒だが……お主にはまだ早いかもしれんのぅ。緋色はどうじゃ?」
「だっから、ドレスは着ねぇって!オレはタキシードか何か着てくんだよ」
「そうですよお姉様。鮫弥は男ですから、……確かにドレスも似合いそうですけど、女物は着ませんよ?」
……そうだった、狂骨は知らないんだった。
別にバラされても困ることはないが……、気分的には、何か嫌だな。
「……狂骨よ、この阿呆は」
「誰が阿呆だ誰がぁ!」
「この馬鹿は正真正銘、歴とした女子よ。家の都合で男の振りをしとるだけじゃ」
「……」
「え?……え?やだなぁお姉様ったら!鮫弥が女な訳ないじゃないですかぁ~!」
「妾は嘘なぞ吐かぬ」
阿呆だの馬鹿だのと酷いことを言いながら、あっさりとオレの正体をバラした阿呆乙女は、混乱する狂骨を前にしれっとした態度で紅茶を啜る。
狂骨と目が合うよりも早く、オレは彼女から顔を背けてため息を吐いた。
ああ、面倒くせぇ……。
「あんた……女なの!?」
「…………まあ」
「全然気付かなかった……」
「……」
嬉しいのだか悲しいのだか……。
「じゃあおめかししないと駄目じゃない!」
「いや……男ってことになってるから」
「?でも、女なんでしょ?」
「女だけど男なんだ」
「ん?」
狂骨の混乱は深まり、乙女が楽しそうに笑っている。
ああ~、こうなるから面倒なんだよ。
狂骨はとりあえず、お茶でも飲ませて落ち着かせて、オレはイスに深く腰掛けて再びため息を吐いた。
早く部屋に帰って、紫紺に愚痴を聞いてもらいたい……。
そしてその後、オレを着せ替え人形にしようとする二人から全力で逃げ、1時間後、オレは無事自室へと生還を果たしたのだった。