×鰤市
「い"っ!?ぁい"だだだ!!」
「ええい喚くな!」
「じゃあ髪を引っ張るなぁ!!」
虚に攻撃しようとした瞬間、オレは後ろから髪を引っ張られ、退却を余儀なくされた。
突然のことに呆然とする虚を置き去りに、オレ達は再び逃走を始める。
朽木ルキアはオレの美髪をむんずと掴みやがりやがったまま、全速力で走っている。
メチャクチャ痛い上に物凄く走りづらい。
「ちゃんと走るから手ぇ離せ!」
「チッ!もたもたするな!良いか?あ奴と正面から戦おうなどと決して思うな!拳を潰すだけで済んだのは奇跡だ!奇跡が二度と起こるとは思うな!」
「でもよぉ……」
「文句を言うな!」
こんな調子で、髪は離してもらったものの、ずっと叱られ続けるのにも飽きてきた。
何より、あのいけ好かねぇ虚をぶっ飛ばさない限り、落ち着かない。
「逃げるにしろ倒すにしろ、このままがむしゃらに走ってるだけじゃあ、いつかは追い付かれて殺されんじゃねぇのかぁ」
「ム……それは確かに……」
「ぐっ……それは、そうだが……。だが一護が戻ってくればきっと……!」
「……黒崎が?」
まあ、死神の力を持つアイツなら、倒せるのかもしれない。
つーか、白蘭いわく倒せるけども、黒崎なんぞにあの虚を渡すよりも、まず一発自分で殴らなければスッキリしねぇ。
「……よし、(一発殴ったら)黒崎に任せよう」
「わ、わかってくれたか。ならば一護の奴が来るまで、大人しく……」
「お前らは逃げろぉ。オレが囮になる。」
「逃げ……何を言ってるんだ貴様は!?」
「チャド、お前はシバタと朽木を守れ」
「……わかった」
「貴様も何を言ってる!おい待て……」
「待たねぇよ!」
朽木の気持ちは、まあわかる。
だが、このまま逃げていても黒崎が来る前に追い付かれるだろうし、どこかでやはり、誰かが足止めをしなければならんだろう。
それなら、怪我をしているチャドや、力を失っている朽木ではなく、オレが出るべきだろう。
何より、アイツは一発殴りたい。
「……よお、帰ってきたぜぇクソ野郎」
「ヒヒッ……お前、さては馬鹿だろ?せっかくオレから逃げ出したってのに、わざわざ自分から帰ってくるとはなぁ?」
「馬鹿で結構……。てめぇの面ぁぶっ飛ばせるなら、それで十分……」
そう、オレがすべきは、こいつを倒すことじゃあなく、こいつから朽木達を守ること。
守り、そして次へと繋げること。
オレは殺してはならない。
未来を歪めないよう、ただ、少し直してやるだけ。
だから、オレは、
「てめぇを殴る、それだけだぁ」
「ヒヒャハ!面白ぇ!!」
虚が振りかぶった腕が、コンクリートの地面を砕いた。
* * *
飛んできた蛭を鉄パイプで弾き飛ばし、隙だらけの虚目掛けてそれを突き立てる。
しかしそもそも、オレと虚ではリーチの差が大分違う。
弾かれた鉄パイプは無惨にも、折られたポッキーみたいに、上と下で真っ二つにされてしまっていた。
「ヒヒッ……、お前じゃオレには勝てそうにねぇなぁ人間!」
「……そう思うかぁ?」
勝つことは簡単だ。
奴の首を切り落とせばそれで終わる。
オレが攻めあぐねているのは、この雑魚を殺さないように、一発殴り飛ばす方法を選んでいるからである。
いっちょ前に小さな虚の子分を引き連れて戦うでけぇクソ虚は、先程からオレを寄せ付けないようにか、距離をとったまま蛭の形の爆弾を投げつけてきている。
これじゃあ埒が明かねぇ。
子分虚を避けて転がり、オレは折られて落ちたままだった鉄パイプの片割れを拾う。
二刀流……つっても、この長さじゃ少しキツいか?
だが、これで行くしかない。
オレは二本のパイプを構えて、カス虚に向けて飛び出した。
「ぶっ……飛ばす!!」
「やっちまえ!」
命令を受けて、子分達が一斉に襲い掛かってくる。
使ってもバレにくい念を使い、凝で敵の動きを見極める。
そしてほんの少しだけ手足にオーラを纏い、向かってくるチビどもへと鉄パイプを突き出した。
「鮫の牙(ザンナ・ディ・スクアーロ)ォ!!!」
「な、なん、だと!?」
オレのいる場所を中心に、子分虚どもが吹き飛ばされる。
その場で落ちた奴もいたし、子分虚がやられても、奴らの持つ蛭は生きているから、危険、ではある。
しかし打ち飛ばした虚のほとんどが、本体の方へと飛んでいったのもあり、爆発が起こされることはなかった。
自分で傷を負う覚悟もない癖に、子どもを肉体的、精神的に傷付けるカス野郎なのだと思うと、余計に苛立ちが増してくる。
「お"お"お"お"お"!!!!!」
「ひっ!?来るなぁ!!」
横に凪ぐように振るわれた腕を飛んで避け、奴の仮面に手をかける。
理想は、真正面から殴ることだが、殺さないようにってなると、仮面のせいで加減のしにくい前よりも、後頭部の方が狙いやすい。
大きく張り出した骨のような仮面の隙間を狙って、虚の柔らかい後頭部目掛けて、渾身の拳を食らわせたのだった。
「ええい喚くな!」
「じゃあ髪を引っ張るなぁ!!」
虚に攻撃しようとした瞬間、オレは後ろから髪を引っ張られ、退却を余儀なくされた。
突然のことに呆然とする虚を置き去りに、オレ達は再び逃走を始める。
朽木ルキアはオレの美髪をむんずと掴みやがりやがったまま、全速力で走っている。
メチャクチャ痛い上に物凄く走りづらい。
「ちゃんと走るから手ぇ離せ!」
「チッ!もたもたするな!良いか?あ奴と正面から戦おうなどと決して思うな!拳を潰すだけで済んだのは奇跡だ!奇跡が二度と起こるとは思うな!」
「でもよぉ……」
「文句を言うな!」
こんな調子で、髪は離してもらったものの、ずっと叱られ続けるのにも飽きてきた。
何より、あのいけ好かねぇ虚をぶっ飛ばさない限り、落ち着かない。
「逃げるにしろ倒すにしろ、このままがむしゃらに走ってるだけじゃあ、いつかは追い付かれて殺されんじゃねぇのかぁ」
「ム……それは確かに……」
「ぐっ……それは、そうだが……。だが一護が戻ってくればきっと……!」
「……黒崎が?」
まあ、死神の力を持つアイツなら、倒せるのかもしれない。
つーか、白蘭いわく倒せるけども、黒崎なんぞにあの虚を渡すよりも、まず一発自分で殴らなければスッキリしねぇ。
「……よし、(一発殴ったら)黒崎に任せよう」
「わ、わかってくれたか。ならば一護の奴が来るまで、大人しく……」
「お前らは逃げろぉ。オレが囮になる。」
「逃げ……何を言ってるんだ貴様は!?」
「チャド、お前はシバタと朽木を守れ」
「……わかった」
「貴様も何を言ってる!おい待て……」
「待たねぇよ!」
朽木の気持ちは、まあわかる。
だが、このまま逃げていても黒崎が来る前に追い付かれるだろうし、どこかでやはり、誰かが足止めをしなければならんだろう。
それなら、怪我をしているチャドや、力を失っている朽木ではなく、オレが出るべきだろう。
何より、アイツは一発殴りたい。
「……よお、帰ってきたぜぇクソ野郎」
「ヒヒッ……お前、さては馬鹿だろ?せっかくオレから逃げ出したってのに、わざわざ自分から帰ってくるとはなぁ?」
「馬鹿で結構……。てめぇの面ぁぶっ飛ばせるなら、それで十分……」
そう、オレがすべきは、こいつを倒すことじゃあなく、こいつから朽木達を守ること。
守り、そして次へと繋げること。
オレは殺してはならない。
未来を歪めないよう、ただ、少し直してやるだけ。
だから、オレは、
「てめぇを殴る、それだけだぁ」
「ヒヒャハ!面白ぇ!!」
虚が振りかぶった腕が、コンクリートの地面を砕いた。
* * *
飛んできた蛭を鉄パイプで弾き飛ばし、隙だらけの虚目掛けてそれを突き立てる。
しかしそもそも、オレと虚ではリーチの差が大分違う。
弾かれた鉄パイプは無惨にも、折られたポッキーみたいに、上と下で真っ二つにされてしまっていた。
「ヒヒッ……、お前じゃオレには勝てそうにねぇなぁ人間!」
「……そう思うかぁ?」
勝つことは簡単だ。
奴の首を切り落とせばそれで終わる。
オレが攻めあぐねているのは、この雑魚を殺さないように、一発殴り飛ばす方法を選んでいるからである。
いっちょ前に小さな虚の子分を引き連れて戦うでけぇクソ虚は、先程からオレを寄せ付けないようにか、距離をとったまま蛭の形の爆弾を投げつけてきている。
これじゃあ埒が明かねぇ。
子分虚を避けて転がり、オレは折られて落ちたままだった鉄パイプの片割れを拾う。
二刀流……つっても、この長さじゃ少しキツいか?
だが、これで行くしかない。
オレは二本のパイプを構えて、カス虚に向けて飛び出した。
「ぶっ……飛ばす!!」
「やっちまえ!」
命令を受けて、子分達が一斉に襲い掛かってくる。
使ってもバレにくい念を使い、凝で敵の動きを見極める。
そしてほんの少しだけ手足にオーラを纏い、向かってくるチビどもへと鉄パイプを突き出した。
「鮫の牙(ザンナ・ディ・スクアーロ)ォ!!!」
「な、なん、だと!?」
オレのいる場所を中心に、子分虚どもが吹き飛ばされる。
その場で落ちた奴もいたし、子分虚がやられても、奴らの持つ蛭は生きているから、危険、ではある。
しかし打ち飛ばした虚のほとんどが、本体の方へと飛んでいったのもあり、爆発が起こされることはなかった。
自分で傷を負う覚悟もない癖に、子どもを肉体的、精神的に傷付けるカス野郎なのだと思うと、余計に苛立ちが増してくる。
「お"お"お"お"お"!!!!!」
「ひっ!?来るなぁ!!」
横に凪ぐように振るわれた腕を飛んで避け、奴の仮面に手をかける。
理想は、真正面から殴ることだが、殺さないようにってなると、仮面のせいで加減のしにくい前よりも、後頭部の方が狙いやすい。
大きく張り出した骨のような仮面の隙間を狙って、虚の柔らかい後頭部目掛けて、渾身の拳を食らわせたのだった。