×鰤市
さて、そんなちょっと慌ただしい日の、昼休みのことである。
「あ、スク、屋上に飯食いに行かね?」
「あ゛ん?屋上?」
浅野に昼食のお誘いを受けた。
「一護の奴、さっき屋上行ったっぽいし、一緒に食べようぜ!」
「そうだな、そんなら一緒に行ってやってもいい」
「そんならって……まさかスクさん、オレと二人でなら断ってたのかーっ!?」
「…………別にそんなことはねぇぞ?」
「嘘だ!間が長い!!」
まあいつも通りに浅野をいじり倒しながら、屋上に向かう。
黒崎が屋上にいるなら、たぶん朽木も一緒だろう。
ある意味あいつら、セットみてぇなもんだし。
朽木と話をするのは初めてになるが……、オレ達の介入に気付いているかどうか、少し探っておきたいし、ちょうど良いな。
教室を出る前、石田の意味ありげな視線を感じたが、何も言ってこなかったので、そのままスルー。
そして屋上のドアを開けると、予想通り、そこには黒崎と朽木がいる。
それと、何となく予想していた通り、小島も一緒にいた。
「おーす、いっしょしてイイっスかー」
「よぉ、いっしょに昼飯食おうぜ」
「おー、ケイゴ、スクアーロ」
黒崎が反応してこちらを見る。
何か悩んでる様子とか、怪しんでる様子とかは見受けられない、本当にいつも通りな感じ。
……必要以上に、気にする必要はないだろうか。
「ややっ!そこにあるは美少女転入生の朽木さん!!どうしてここに!?」
屋上に入ってすぐに、チャドがいないことに首を傾げていた浅野だったが、すぐに朽木の存在に気が付いたらしい。
一護に絡んだり朽木に絡んだりと忙しいバカは放っておいて、オレは朽木にさりげなく近寄る。
「バカがうるさくてわりぃなぁ」
「あ、いえ……。えーっと、あなたは確か……」
「スクアーロだぁ。ま、来たばかりで大変だと思うが、わからない事とかあったら気軽に聞けよなぁ」
「ありがとう。あの、早速なんですけれども……」
朽木も、特に変わった様子はない。
霊圧の高さは、今は隠してあるのだが(絶でオーラを隠すのと同じ要領だ)、特に気が付いた様子はない。
これなら、昨日の式神にも気付いちゃいねぇだろう。
朽木が何かを聞こうとするのを、オレは少し首を傾げて聞いていた。
……と、言うのに。
「あー!スクアーロまた口説いてるー!!」
「誰が口説いてるだぁ。話してるだけじゃあねぇかぁ、阿呆」
「気を付けてね朽木さん、この人タラシっぽい顔して本当にタラシだから」
「小島ぁ、テメーも変なこと吹き込んでんじゃねぇぞ」
「わりと本当のことだと思うけどな」
「黒崎まで言うのかぁ?」
オレはただ、女性に優しくの騎士道精神でいるだけである。
別にタラシじゃあねぇし、何より相手は恋愛対象外だ。
「あー……で?何か聞きたいことあったんだろぉ?」
「あ、はい」
気を取り直して、もう一度質問。
しかし朽木が口を開けたその瞬間、またしても邪魔が入った。
ドアが開く微かな音。
オレが振り向くより早く、ドア付近に突っ立ってた浅野の背中から、鈍い打撃音が聞こえた。
「おうッ!?っ痛ーな!!なにす……る……」
突然の痛みに怒鳴った浅野の言葉は、しかし尻すぼみに消えていく。
奴の後ろに立ってたのは、うちのクラスでも有名な問題児の……名前は忘れたが、不良二人組である。
不良っつっても粋がってるだけの弱い連中だ。
オレが覚えておく必要もないような小者である。
「……で、何が聞きたいんだぁ?」
「え?あ、その、これの飲み方が分からなくて」
不良が黒崎に絡んでいったのを見届けて、オレは朽木にもう一度問いかけた。
あんな雑魚は、相手にするだけ時間の無駄だ。
「飲んだことねぇのかぁ?」
「え、ええ!そうなの!」
「ふぅん」
誤魔化したがってるって感じがありありと伝わってくる。
あの世には、紙パックとかはないのか。
彼女の持っているストローをちょっと借りて、使い方を実演してみる。
「これはこうやって伸ばしてから、ここの丸いところに刺して使うんだぁ」
「……あ、なるほど」
「ちょっ、スクアーロさーんっ!!オレらがピンチな時に何やってんすかーっ!?」
「人助け」
「こっちを助けてー!」
適当に答えながら、かったるかったが、仕方なく助けてやろうと振り返る。
しかしどうやら、オレが出る幕はなさそうだ。
不良の背後を指さしながら声を掛ける。
「おい不良、お前、もうちょっと自分の後ろに気を配った方が良いぜぇ」
「ああ!?」
「だから、後ろ」
オレがわざわざ注意してやったというのに、後ろを振り向くこともしなかった不良。
その拳を、背後から現れた大きな手がガッシリと掴んで、力任せにぶん投げた。
「おぶッ!おべべべべべぱふ!!」
「レイちゃん!!」
綺麗に弧を描いて不良が飛ぶ。
奇声を上げて遠くまで吹っ飛ばされた不良の安否を気にしているのは、子分らしき野郎一人だけだ。
オレ達は奴を投げ飛ばした大男――チャドに目を向けた。
「チャド……!」
「ム……」
さて、これで入学初日職員室行きのメンバーは揃ったか。
なぜか怪我をしていたチャドに事情を聞くと、昨晩には鉄骨が落ちてきて、さらに先程オートバイとぶつかったらしい。
それで平気な顔して立って歩いてるとか……こいつの体、一体何でできてるんだよ。
まあしかし、それはともかくとして、オレが気になったのはそこではない。
チャドが徐に、ガシャリと床に置いた籠。
その中に入っていたインコから、仄かに血の匂いがした……ような気がする。
霊がついているのか?
虚……ではなさそうだが、こういったものを放置しておいたら、後々悪いことが起こる、と思う。
チラリと様子を窺った感じでは、黒崎達も気付いてはいるようだった。
なら、平気か。
そう思ったところに、タイミングよくケータイが鳴る。
この着信音は……ユニからのメールか。
『インコの霊を追っている虚に注意してあげてください。チャドさんを狙っています』
その文を読んで、気付かれないようにため息。
ついこの間までは何もなかったのに、次から次へと忙しないな……。
了解、とメールを返して、何事もなかったかのように話の輪へと加わった。
「あ、スク、屋上に飯食いに行かね?」
「あ゛ん?屋上?」
浅野に昼食のお誘いを受けた。
「一護の奴、さっき屋上行ったっぽいし、一緒に食べようぜ!」
「そうだな、そんなら一緒に行ってやってもいい」
「そんならって……まさかスクさん、オレと二人でなら断ってたのかーっ!?」
「…………別にそんなことはねぇぞ?」
「嘘だ!間が長い!!」
まあいつも通りに浅野をいじり倒しながら、屋上に向かう。
黒崎が屋上にいるなら、たぶん朽木も一緒だろう。
ある意味あいつら、セットみてぇなもんだし。
朽木と話をするのは初めてになるが……、オレ達の介入に気付いているかどうか、少し探っておきたいし、ちょうど良いな。
教室を出る前、石田の意味ありげな視線を感じたが、何も言ってこなかったので、そのままスルー。
そして屋上のドアを開けると、予想通り、そこには黒崎と朽木がいる。
それと、何となく予想していた通り、小島も一緒にいた。
「おーす、いっしょしてイイっスかー」
「よぉ、いっしょに昼飯食おうぜ」
「おー、ケイゴ、スクアーロ」
黒崎が反応してこちらを見る。
何か悩んでる様子とか、怪しんでる様子とかは見受けられない、本当にいつも通りな感じ。
……必要以上に、気にする必要はないだろうか。
「ややっ!そこにあるは美少女転入生の朽木さん!!どうしてここに!?」
屋上に入ってすぐに、チャドがいないことに首を傾げていた浅野だったが、すぐに朽木の存在に気が付いたらしい。
一護に絡んだり朽木に絡んだりと忙しいバカは放っておいて、オレは朽木にさりげなく近寄る。
「バカがうるさくてわりぃなぁ」
「あ、いえ……。えーっと、あなたは確か……」
「スクアーロだぁ。ま、来たばかりで大変だと思うが、わからない事とかあったら気軽に聞けよなぁ」
「ありがとう。あの、早速なんですけれども……」
朽木も、特に変わった様子はない。
霊圧の高さは、今は隠してあるのだが(絶でオーラを隠すのと同じ要領だ)、特に気が付いた様子はない。
これなら、昨日の式神にも気付いちゃいねぇだろう。
朽木が何かを聞こうとするのを、オレは少し首を傾げて聞いていた。
……と、言うのに。
「あー!スクアーロまた口説いてるー!!」
「誰が口説いてるだぁ。話してるだけじゃあねぇかぁ、阿呆」
「気を付けてね朽木さん、この人タラシっぽい顔して本当にタラシだから」
「小島ぁ、テメーも変なこと吹き込んでんじゃねぇぞ」
「わりと本当のことだと思うけどな」
「黒崎まで言うのかぁ?」
オレはただ、女性に優しくの騎士道精神でいるだけである。
別にタラシじゃあねぇし、何より相手は恋愛対象外だ。
「あー……で?何か聞きたいことあったんだろぉ?」
「あ、はい」
気を取り直して、もう一度質問。
しかし朽木が口を開けたその瞬間、またしても邪魔が入った。
ドアが開く微かな音。
オレが振り向くより早く、ドア付近に突っ立ってた浅野の背中から、鈍い打撃音が聞こえた。
「おうッ!?っ痛ーな!!なにす……る……」
突然の痛みに怒鳴った浅野の言葉は、しかし尻すぼみに消えていく。
奴の後ろに立ってたのは、うちのクラスでも有名な問題児の……名前は忘れたが、不良二人組である。
不良っつっても粋がってるだけの弱い連中だ。
オレが覚えておく必要もないような小者である。
「……で、何が聞きたいんだぁ?」
「え?あ、その、これの飲み方が分からなくて」
不良が黒崎に絡んでいったのを見届けて、オレは朽木にもう一度問いかけた。
あんな雑魚は、相手にするだけ時間の無駄だ。
「飲んだことねぇのかぁ?」
「え、ええ!そうなの!」
「ふぅん」
誤魔化したがってるって感じがありありと伝わってくる。
あの世には、紙パックとかはないのか。
彼女の持っているストローをちょっと借りて、使い方を実演してみる。
「これはこうやって伸ばしてから、ここの丸いところに刺して使うんだぁ」
「……あ、なるほど」
「ちょっ、スクアーロさーんっ!!オレらがピンチな時に何やってんすかーっ!?」
「人助け」
「こっちを助けてー!」
適当に答えながら、かったるかったが、仕方なく助けてやろうと振り返る。
しかしどうやら、オレが出る幕はなさそうだ。
不良の背後を指さしながら声を掛ける。
「おい不良、お前、もうちょっと自分の後ろに気を配った方が良いぜぇ」
「ああ!?」
「だから、後ろ」
オレがわざわざ注意してやったというのに、後ろを振り向くこともしなかった不良。
その拳を、背後から現れた大きな手がガッシリと掴んで、力任せにぶん投げた。
「おぶッ!おべべべべべぱふ!!」
「レイちゃん!!」
綺麗に弧を描いて不良が飛ぶ。
奇声を上げて遠くまで吹っ飛ばされた不良の安否を気にしているのは、子分らしき野郎一人だけだ。
オレ達は奴を投げ飛ばした大男――チャドに目を向けた。
「チャド……!」
「ム……」
さて、これで入学初日職員室行きのメンバーは揃ったか。
なぜか怪我をしていたチャドに事情を聞くと、昨晩には鉄骨が落ちてきて、さらに先程オートバイとぶつかったらしい。
それで平気な顔して立って歩いてるとか……こいつの体、一体何でできてるんだよ。
まあしかし、それはともかくとして、オレが気になったのはそこではない。
チャドが徐に、ガシャリと床に置いた籠。
その中に入っていたインコから、仄かに血の匂いがした……ような気がする。
霊がついているのか?
虚……ではなさそうだが、こういったものを放置しておいたら、後々悪いことが起こる、と思う。
チラリと様子を窺った感じでは、黒崎達も気付いてはいるようだった。
なら、平気か。
そう思ったところに、タイミングよくケータイが鳴る。
この着信音は……ユニからのメールか。
『インコの霊を追っている虚に注意してあげてください。チャドさんを狙っています』
その文を読んで、気付かれないようにため息。
ついこの間までは何もなかったのに、次から次へと忙しないな……。
了解、とメールを返して、何事もなかったかのように話の輪へと加わった。