×鰤市
探し人は、意外にも向こうからやって来た。
高校が始まる前、街を散策がてら、見覚えのある顔がないか探していたとき、道の反対側からオレの名を呼ぶ人がいた。
「あ!スクアーロさん!!」
「あ、本当だ。スクちゃーん、こっちこっちー!」
「……ユニ、と、白蘭!」
慌てて横断歩道を渡り、二人の元に駆け寄った。
一体、何十年ぶりだろうか……いや、もう百年以上経っているのか……。
過ぎた年月の膨大さに、目眩がしそうだ。
オレが横断歩道を渡り終えると、待っていたユニが抱き着いてきた。
それを受け止めて、ユニの後ろでにこにこと笑う白蘭に顔を向ける。
「やっと会えたね、スクちゃん」
「……その口ぶりから察するに、オレとここで会うことはユニが予知してたのかぁ」
「はい、その通りです。スクアーロさん、会えて良かった……。ずっと、待っていたんです」
胸元に顔を埋めるユニの声は、涙ぐんで震えていた。
彼女のそんな声を聞くと、申し訳ないような気持ちになる。
どこにいるのか知らなかったとは言え、もう少し早く会いに来れたら、なんて。
形の良い頭を何度か撫でてやり、二人に提案をした。
「こんな所じゃ難だ、移動しようぜぇ」
「そうだね、なら、ボクらの家に行こうか」
「お゙う……ん?僕らの?」
「うん、ボク達、今生では兄妹だからね♪」
「……お前が兄貴とか、悪夢かぁ」
「ひっどーい!」
衝撃の事実も、感動の出会いも、全て流れ流れて、オレ達は空座町内にある彼ら2人の住居へ向かうことになったのだった。
* * *
「なかなか良いところに住んでんじゃねぇかぁ」
「でしょ?ボクらの親、旧家の跡取りだからね。ボクらも良い暮らしさせてもらってるのさ♪︎」
「両親には、感謝してもし足りません」
2人の家は、高層マンションの最上階。
兄妹2人だけで住むには、少し広すぎる部屋だった。
「開放的?」
「ふふ♪スクちゃんらしい感想だね。まあ、そこら辺に座ってよ」
「コーヒー淹れましょうね」
ソファーに座ると、ユニがコーヒーを淹れてきてくれ……あ、インスタントだ……、ちょっと残念。
嬉しそうな様子の2人が目の前に座り、まずユニが口火を切った。
「私達は、あの世界で生命の炎に包まれて死にました」
「……」
「次に目を覚ましたとき、私は知らない場所にいました。赤子の姿になって……」
「ボクも、同じだよ。気付けば一人ぼっちで、知らない世界に生まれ落ちていた」
「……オレも、そうだった。骸も……六道骸も同じだと言っていた」
「やっぱり、骸君にはもう、違う世界で会っていたんだね」
ユニは、目を閉じて、祈るように両手を組んだ。
彼女には今、何が見えているのだろうか。
目を開いたユニの瞳は、真っ直ぐにオレの姿を映して輝いた。
「私は、転生してすぐに夢を見ました。私達は、何度もの転生を繰り返しながら、引かれ合い、集い、そしていつの日か、全員が揃ったその時、転生の業は解け、元の輪廻へと戻ることが出来る……」
「ユニちゃんの夢の通り、僕とユニちゃんは前世で出会った。そしてこの世界には、君と、骸クンがいる」
「予知夢ってことだなぁ」
「はい」
ならば、それが現実になるのは、ほぼ確実と言えよう。
「様々な、困難が訪れるでしょう。死にたいと、もう生きていけないと、思うこともあるでしょう。何度も苦しい死を、生を、繰り返すことでしょう。それでも、スクアーロさん、私達と共に、生きてくれますか?」
「……んなもん、当たり前だろぉが。ユニ、例えどんな世界に生まれても、例えどんな敵に出会っても、オレはこの生命が本当の終わりを迎えるまで、この生を全うする。つーかお前らがいるとかいねぇとか関係ねぇよ。オレがオレである限り、この歩みを止めるつもりはねぇ。」
立ち上がってユニの手を取る。
「ったく、ちゃんと側に居てやるから、そんな泣きそうな顔してんなよ、馬鹿」
「……スクアーロさんは、フラフラとどこかへ離れていってしまいそうで、不安だったんです」
そんなイメージ持たれてたのか……。
安心したのか、目尻に涙を溜めて笑うユニの頬を手で挟んで、むにっと潰す。
「ちゃんといる。だから大丈夫だろぉ、ユニ」
「はい。大丈夫です。ちゃんと、ここに貴女がいます」
ユニの細い手が、オレの頭を挟むように添えられて、わしゃわしゃと髪を掻き回す。
目の涙を拭ってやった後にユニの手を外すと、白蘭の不満げな声が背中に掛かった。
「2人とも、ボクのこと忘れてない?」
「んなわけねぇだろ、白蘭。お前ら2人、どんな世界で生きてきた?どんな人に出会ってきた?久々の再会なんだぁ、ゆっくり、話をしようぜ」
「はい!」
嬉しそうなユニと、昔と変わらず飄々としている白蘭と、日が暮れるまで話していた。
ちなみに白蘭は同い年、ユニは中学2年生だそうだ。
残念ながら白蘭とは学校が別になるが、これからもちょくちょくと会うことになった。
高校が始まる前、街を散策がてら、見覚えのある顔がないか探していたとき、道の反対側からオレの名を呼ぶ人がいた。
「あ!スクアーロさん!!」
「あ、本当だ。スクちゃーん、こっちこっちー!」
「……ユニ、と、白蘭!」
慌てて横断歩道を渡り、二人の元に駆け寄った。
一体、何十年ぶりだろうか……いや、もう百年以上経っているのか……。
過ぎた年月の膨大さに、目眩がしそうだ。
オレが横断歩道を渡り終えると、待っていたユニが抱き着いてきた。
それを受け止めて、ユニの後ろでにこにこと笑う白蘭に顔を向ける。
「やっと会えたね、スクちゃん」
「……その口ぶりから察するに、オレとここで会うことはユニが予知してたのかぁ」
「はい、その通りです。スクアーロさん、会えて良かった……。ずっと、待っていたんです」
胸元に顔を埋めるユニの声は、涙ぐんで震えていた。
彼女のそんな声を聞くと、申し訳ないような気持ちになる。
どこにいるのか知らなかったとは言え、もう少し早く会いに来れたら、なんて。
形の良い頭を何度か撫でてやり、二人に提案をした。
「こんな所じゃ難だ、移動しようぜぇ」
「そうだね、なら、ボクらの家に行こうか」
「お゙う……ん?僕らの?」
「うん、ボク達、今生では兄妹だからね♪」
「……お前が兄貴とか、悪夢かぁ」
「ひっどーい!」
衝撃の事実も、感動の出会いも、全て流れ流れて、オレ達は空座町内にある彼ら2人の住居へ向かうことになったのだった。
* * *
「なかなか良いところに住んでんじゃねぇかぁ」
「でしょ?ボクらの親、旧家の跡取りだからね。ボクらも良い暮らしさせてもらってるのさ♪︎」
「両親には、感謝してもし足りません」
2人の家は、高層マンションの最上階。
兄妹2人だけで住むには、少し広すぎる部屋だった。
「開放的?」
「ふふ♪スクちゃんらしい感想だね。まあ、そこら辺に座ってよ」
「コーヒー淹れましょうね」
ソファーに座ると、ユニがコーヒーを淹れてきてくれ……あ、インスタントだ……、ちょっと残念。
嬉しそうな様子の2人が目の前に座り、まずユニが口火を切った。
「私達は、あの世界で生命の炎に包まれて死にました」
「……」
「次に目を覚ましたとき、私は知らない場所にいました。赤子の姿になって……」
「ボクも、同じだよ。気付けば一人ぼっちで、知らない世界に生まれ落ちていた」
「……オレも、そうだった。骸も……六道骸も同じだと言っていた」
「やっぱり、骸君にはもう、違う世界で会っていたんだね」
ユニは、目を閉じて、祈るように両手を組んだ。
彼女には今、何が見えているのだろうか。
目を開いたユニの瞳は、真っ直ぐにオレの姿を映して輝いた。
「私は、転生してすぐに夢を見ました。私達は、何度もの転生を繰り返しながら、引かれ合い、集い、そしていつの日か、全員が揃ったその時、転生の業は解け、元の輪廻へと戻ることが出来る……」
「ユニちゃんの夢の通り、僕とユニちゃんは前世で出会った。そしてこの世界には、君と、骸クンがいる」
「予知夢ってことだなぁ」
「はい」
ならば、それが現実になるのは、ほぼ確実と言えよう。
「様々な、困難が訪れるでしょう。死にたいと、もう生きていけないと、思うこともあるでしょう。何度も苦しい死を、生を、繰り返すことでしょう。それでも、スクアーロさん、私達と共に、生きてくれますか?」
「……んなもん、当たり前だろぉが。ユニ、例えどんな世界に生まれても、例えどんな敵に出会っても、オレはこの生命が本当の終わりを迎えるまで、この生を全うする。つーかお前らがいるとかいねぇとか関係ねぇよ。オレがオレである限り、この歩みを止めるつもりはねぇ。」
立ち上がってユニの手を取る。
「ったく、ちゃんと側に居てやるから、そんな泣きそうな顔してんなよ、馬鹿」
「……スクアーロさんは、フラフラとどこかへ離れていってしまいそうで、不安だったんです」
そんなイメージ持たれてたのか……。
安心したのか、目尻に涙を溜めて笑うユニの頬を手で挟んで、むにっと潰す。
「ちゃんといる。だから大丈夫だろぉ、ユニ」
「はい。大丈夫です。ちゃんと、ここに貴女がいます」
ユニの細い手が、オレの頭を挟むように添えられて、わしゃわしゃと髪を掻き回す。
目の涙を拭ってやった後にユニの手を外すと、白蘭の不満げな声が背中に掛かった。
「2人とも、ボクのこと忘れてない?」
「んなわけねぇだろ、白蘭。お前ら2人、どんな世界で生きてきた?どんな人に出会ってきた?久々の再会なんだぁ、ゆっくり、話をしようぜ」
「はい!」
嬉しそうなユニと、昔と変わらず飄々としている白蘭と、日が暮れるまで話していた。
ちなみに白蘭は同い年、ユニは中学2年生だそうだ。
残念ながら白蘭とは学校が別になるが、これからもちょくちょくと会うことになった。