×狩人

ハンター試験、それは数多の若者達が夢を抱き集まる試験。
そして、そんな若者達を容赦なく絶望の底に突き落とす、過酷な試験でもある。

「にしても……、今年は多いなぁ」
「ええ、これは楽しみです」

ハンター試験の、一次試験会場。
公選ハンターとして選ばれた試験官であるサトツの隣で、オレは唸る。
まだ開始時間までは結構あるのに、会場には既に多くの人間が集まっていた。
何人か面白そうな奴がいるが、毎年のように面倒事を起こす奴も来ている。

「あのオッサン、今年も来てんのかぁ?飽きねぇなぁ……」
「ああ、あのトンパとか言う……」
「それに、あのヒソカも。まったく、まだ2時間前なのに、どんだけ殺気立ってるんだよ」
「あなたを誘っているんでしょう」
「……ふざけた野郎だ」

大きなため息を1つ吐き出す。
今年の仕事もまた、苦労しそうだった。
ハンター試験、オレ達フィアンマ自警団にとっては、年に一度の大仕事の時でもある。
一次試験以降の受験者全員の警護。
無茶苦茶な仕事だ。
だが必要なことではある。

「オレの仕事は、快楽殺人者の相手じゃあねぇ。そんなクソ野郎でも、受験者である内は命を守る、それが仕事だぁ」
「ぶれませんね」
「オレがぶれていたら、うちの自警団はとっくに潰れている」
「それもそうです」

淡々と会話を紡ぎ、受験者一人一人をじっくりと観察しながら、開始時間を待つ。
既に仲間達の配置は済んでいる。
その為、試験が始まるまでは、こうして受験生を観察するくらいしかすることがないのだ。
まあ、大事なことではあるが。

「……ん゙、また来たな。今度はグループかぁ」
「一人はまだ子供のようですが」
「オレが試験を受けたときもあれくらいだったよ」
「……それは初耳ですね」

最後の方、3人の若者のグループが試験会場に現れた。
一人は20代くらいか?
金髪の少年は十代半ば、そして残ったもう一人は、十代前半といったところ。
確かに、周りの受験者と比べると大分若い。
だがまあ、それだけの話だ。
才能に年齢は関係ない。
この世界では、それが特に顕著である。

「おや、トンパが近付いていきましたね」
「また毒入りジュースを飲ませるつもりなんだろぉ」

下らない奴だ。
そう言えばさっき、同じく新人の銀髪の坊主が毒入りジュースを飲んでいたっけか。
まあ、あの様子じゃあ少しもダメージはないだろうな。
そんなことを考えていたら、突然殺気が強まるのを感じた。
さっと手を伸ばして、夜の炎で殺気を飛ばしてきた奴の腕を抑えた。

「チッ!やっぱりやりやがったかぁ」
「どことなく止められて喜んでいるようにも見えますが」
「喜んでるんだろぉ。気色わりぃなぁ」

どうやらヒソカが、因縁をつけてきた受験者の腕を切り落とそうとしていたらしい。
下らない仕事ばかり増やしやがって……、本当にムカつく。
炎を消して奴を解放すると、キョロキョロと首を回して、オレを探し始める。
ちなみに、奴らの番号札には全てに、オレの夜の炎を扱う際に必要な、印を書いた札を仕込ませてある。
受験生をワープさせるためには、こうでもしねぇとな。

「どうやらあなたの居場所は割れていないようですね。毎度ながら、鮮やかな技です」
「誉めたところでなにもでねぇぞ?それより、トンパの阿呆がジュース渡してやがるぜ」
「こちらも毎度ながら、嫌らしい手口です。まあ、この程度にやられるようなら、あの新人達もまた、それまでの人間だったと言うことでしょうね」

サトツの言う通り、あの程度にやられるようじゃあ、ハンターにはとてもじゃないが成れはしない。
果たして、少年達はトンパからジュースを受け取り、そして真っ先に飲んだちびっ子は、速攻でそれを吐き出した。

「ふはっ!」
「む、あの毒に気付くとはなかなか……」
「今年は楽しくなりそうじゃねぇかぁ」

そうして、ハンター試験が始まったのであった。
13/30ページ
スキ