×狩人
「あ、有り得ないわさ……。たった3日で、念を完全にコントロールするなんて……!」
ハンター試験を終えた後、『あんたみたいな優秀な原石を磨けるなんてラッキーだわさ……!』などと、ヨダレでも垂らしそうな顔をして言ったビスケに連れられ、『念』というものを教えられた。
体に宿るエネルギーの事をオーラと呼び、それを使いこなす力を念と呼ぶらしい。
死ぬ気の炎とか、チャクラみたいなモノかとも思ったが、念はそれよりもだいぶ使い勝手が良さそうだ。
リングがなくても出せるし、印を結ばないでも色々出来る。
基本は、纏、絶、練、発。
オーラを纏うのが、纏。
オーラを発する精孔を閉じて絶つのが絶。
オーラを練って通常以上のオーラを出すのが、練。
そして練ったオーラを使って固有の技を発揮するのが、発。
応用技として、周、隠、凝、堅、円、硬、流。
自分の触れるものをオーラで覆う周。
発を隠すことの出来る隠。
隠を見破ることの出来る凝。
練状態を維持し防御を特別固くする堅。
一部にオーラを集めて攻撃力を上げる硬。
オーラを移動させ攻防を自在に操る流。
特にお気に入りは円だ。
オーラを広げて見えないところにあるものも感じ取れる技。
まあ、前世にてチャクラコントロールが気持ち悪いくらい精密、と言われたオレにとっては念のコントロールなんて大して難しい事じゃない。
唖然としているビスケに、ピースサインを送った。
チョロいぜ。
「天才的だとは思ってたけど……ここまでなんて……」
「よくド器用って言われてたしな」
「でも3日目で発まで完成させるなんて!元々のオーラの所有量も含めて、あんた何かもう気持ち悪いわさ!!」
「……ああ、そう」
発、というのは言わば、その人だけが使える固有技みたいなモノ、らしい。
発には、死ぬ気の炎のように系統がある。
強化系、放出系、操作系、特質系、具現化系、変化系、この6つだ。
自分がどの系統に属するのかは、水見式という方法で調べる。
コップに水を入れ、その上に葉っぱを浮かべ、コップに向かって練をする。
強化系ならば水嵩が増え、放出系なら色が変わる。
操作系は葉っぱが動き、具現化系は水中に不純物が現れ、変化系なら水の味が変わる。
オレはそのどれでもない反応が現れた。
コップに練をすると、コップの中に炎が燃え上がった。
青、赤、藍、それらが混ざり合い、銀色になったり、真っ黒になったりと、常にその色は変わり続けている。
どの系統にも当てはまらない反応。
つまり特質系の反応だった。
「裏ハンター試験でも異例の早さだわさ!!」
「裏ハンター試験……?」
「そ!念を習得することで本当のプロハンターとして認められんの!念が使えなきゃ、プロハンターになったところですぐに殺されるのが落ちだものね」
「ならオレは今やっと、プロとして認められたってことかぁ」
「そーゆーこと!」
そーゆーこと、らしい。
なら、ビスケの弟子、と言うのも今日で卒業だろうか。
この3日間を思い出したスクアーロの顔が、ゲッソリと疲れたものになる。
料理を作れば、味が気に入ったとかでやれアレを作れだのコレを作れだのと無茶な注文をされ、発を見た後は炎をビンに入れて保存すると、オーラが尽きるまで付き合わされ、おやつ時には毎回違うスイーツを要求された。
ザンザスも乙女もかなりのわがまま放題だったが、ビスケはまた別の面倒臭さがある。
「なら、ビスケとも今日でお別れか」
「何言ってんのよ?念こそ習得したけど、あんたにはまだハンターのいろはを教えなきゃならないんだからね!それにあんたがいなくなったら、ご飯もおやつも誰が作るのよさ!」
「後半が本音だろぉ!!オレはあんたの専属料理人じゃねぇぞぉ!!」
「えー!?」
不満そうに言われるが、オレはもう裏ハンター試験とやらに合格してプロになったわけだし、ハンターのいろはとかはおいおい知っていけば良いし、今すぐ姿くらましたって良いんだぞ?
「でもあんた、親も身寄りもなくてコレからどうやって生きてくのよさ。あんたみたいなガキんちょ雇ってくれる仕事場なんてないのよ?」
「んー、そりゃまあ、何とかするぜ。食べる金が無くなったら、適当な森にでも籠って動物狩って生きてきゃ良い」
「あんた……どんな野生児よ!今までどうやって生きてきたのよさ!?」
「?フツーに?」
ビスケの顔が、そんなわけあるかっ!と語っていたが、……うん、今生ではフツーに生きてきたしな。
嘘は吐いてねーぜ?
「私が暫くあんたの保護者になってやるんだから、大人しく保護されなさい!!」
「逆じゃねーのか」
「なんで私が、あんたに保護されなきゃならないのよさ!?」
というか見た目年齢ほぼ一緒なのに、保護者て……。
実際は見た目通りの年齢ではないらしいことは、彼女自身や周囲の人間の言動を見ていればわかるが、でも精神年齢オレより下に見えてしかたねぇんだが、それってどうなんだ。
……あれ?でも考えてみりゃオレももう精神的には相当な高齢……なのか?
最初に死んだのが40半ばで、次もその次も半世紀も生きれやしなかったっつか、前世はかなり早世だったわけだが、それでももう100年以上は生きて、る……!?
スクアーロがひっそりと衝撃の事実に驚愕している横で、プンプンと怒りながら、ビスケは無理矢理に結論を出す。
「少なくとも!後1ヶ月は私の元で鍛練を重ねること!!いくら念コントロールが気持ち悪いくらい出来てたってあんたまだ実戦経験ないんだから、私の見てるとこで経験を重ねることよ!」
「えー……」
「えー、じゃない!返事は!?」
「押忍」
「ハイでしょ!ハイ!!」
口喧しいぜ……。
おざなりにハイハイと頷いて、次は夕飯の支度をしろと迫るビスケに、望みのメニューを聞いた。
ボルシチを作れと言われ、無茶言うなと怒っているその時のオレは、後に彼女の側にいたことを感謝する、という事を知らない。
ハンター試験を終えた後、『あんたみたいな優秀な原石を磨けるなんてラッキーだわさ……!』などと、ヨダレでも垂らしそうな顔をして言ったビスケに連れられ、『念』というものを教えられた。
体に宿るエネルギーの事をオーラと呼び、それを使いこなす力を念と呼ぶらしい。
死ぬ気の炎とか、チャクラみたいなモノかとも思ったが、念はそれよりもだいぶ使い勝手が良さそうだ。
リングがなくても出せるし、印を結ばないでも色々出来る。
基本は、纏、絶、練、発。
オーラを纏うのが、纏。
オーラを発する精孔を閉じて絶つのが絶。
オーラを練って通常以上のオーラを出すのが、練。
そして練ったオーラを使って固有の技を発揮するのが、発。
応用技として、周、隠、凝、堅、円、硬、流。
自分の触れるものをオーラで覆う周。
発を隠すことの出来る隠。
隠を見破ることの出来る凝。
練状態を維持し防御を特別固くする堅。
一部にオーラを集めて攻撃力を上げる硬。
オーラを移動させ攻防を自在に操る流。
特にお気に入りは円だ。
オーラを広げて見えないところにあるものも感じ取れる技。
まあ、前世にてチャクラコントロールが気持ち悪いくらい精密、と言われたオレにとっては念のコントロールなんて大して難しい事じゃない。
唖然としているビスケに、ピースサインを送った。
チョロいぜ。
「天才的だとは思ってたけど……ここまでなんて……」
「よくド器用って言われてたしな」
「でも3日目で発まで完成させるなんて!元々のオーラの所有量も含めて、あんた何かもう気持ち悪いわさ!!」
「……ああ、そう」
発、というのは言わば、その人だけが使える固有技みたいなモノ、らしい。
発には、死ぬ気の炎のように系統がある。
強化系、放出系、操作系、特質系、具現化系、変化系、この6つだ。
自分がどの系統に属するのかは、水見式という方法で調べる。
コップに水を入れ、その上に葉っぱを浮かべ、コップに向かって練をする。
強化系ならば水嵩が増え、放出系なら色が変わる。
操作系は葉っぱが動き、具現化系は水中に不純物が現れ、変化系なら水の味が変わる。
オレはそのどれでもない反応が現れた。
コップに練をすると、コップの中に炎が燃え上がった。
青、赤、藍、それらが混ざり合い、銀色になったり、真っ黒になったりと、常にその色は変わり続けている。
どの系統にも当てはまらない反応。
つまり特質系の反応だった。
「裏ハンター試験でも異例の早さだわさ!!」
「裏ハンター試験……?」
「そ!念を習得することで本当のプロハンターとして認められんの!念が使えなきゃ、プロハンターになったところですぐに殺されるのが落ちだものね」
「ならオレは今やっと、プロとして認められたってことかぁ」
「そーゆーこと!」
そーゆーこと、らしい。
なら、ビスケの弟子、と言うのも今日で卒業だろうか。
この3日間を思い出したスクアーロの顔が、ゲッソリと疲れたものになる。
料理を作れば、味が気に入ったとかでやれアレを作れだのコレを作れだのと無茶な注文をされ、発を見た後は炎をビンに入れて保存すると、オーラが尽きるまで付き合わされ、おやつ時には毎回違うスイーツを要求された。
ザンザスも乙女もかなりのわがまま放題だったが、ビスケはまた別の面倒臭さがある。
「なら、ビスケとも今日でお別れか」
「何言ってんのよ?念こそ習得したけど、あんたにはまだハンターのいろはを教えなきゃならないんだからね!それにあんたがいなくなったら、ご飯もおやつも誰が作るのよさ!」
「後半が本音だろぉ!!オレはあんたの専属料理人じゃねぇぞぉ!!」
「えー!?」
不満そうに言われるが、オレはもう裏ハンター試験とやらに合格してプロになったわけだし、ハンターのいろはとかはおいおい知っていけば良いし、今すぐ姿くらましたって良いんだぞ?
「でもあんた、親も身寄りもなくてコレからどうやって生きてくのよさ。あんたみたいなガキんちょ雇ってくれる仕事場なんてないのよ?」
「んー、そりゃまあ、何とかするぜ。食べる金が無くなったら、適当な森にでも籠って動物狩って生きてきゃ良い」
「あんた……どんな野生児よ!今までどうやって生きてきたのよさ!?」
「?フツーに?」
ビスケの顔が、そんなわけあるかっ!と語っていたが、……うん、今生ではフツーに生きてきたしな。
嘘は吐いてねーぜ?
「私が暫くあんたの保護者になってやるんだから、大人しく保護されなさい!!」
「逆じゃねーのか」
「なんで私が、あんたに保護されなきゃならないのよさ!?」
というか見た目年齢ほぼ一緒なのに、保護者て……。
実際は見た目通りの年齢ではないらしいことは、彼女自身や周囲の人間の言動を見ていればわかるが、でも精神年齢オレより下に見えてしかたねぇんだが、それってどうなんだ。
……あれ?でも考えてみりゃオレももう精神的には相当な高齢……なのか?
最初に死んだのが40半ばで、次もその次も半世紀も生きれやしなかったっつか、前世はかなり早世だったわけだが、それでももう100年以上は生きて、る……!?
スクアーロがひっそりと衝撃の事実に驚愕している横で、プンプンと怒りながら、ビスケは無理矢理に結論を出す。
「少なくとも!後1ヶ月は私の元で鍛練を重ねること!!いくら念コントロールが気持ち悪いくらい出来てたってあんたまだ実戦経験ないんだから、私の見てるとこで経験を重ねることよ!」
「えー……」
「えー、じゃない!返事は!?」
「押忍」
「ハイでしょ!ハイ!!」
口喧しいぜ……。
おざなりにハイハイと頷いて、次は夕飯の支度をしろと迫るビスケに、望みのメニューを聞いた。
ボルシチを作れと言われ、無茶言うなと怒っているその時のオレは、後に彼女の側にいたことを感謝する、という事を知らない。