×狩人

数時間後、元の部屋には、息を切らしてへたり込む男達の姿があった。
軟弱な奴らだぜ……。

「くそっ!あの餓鬼なんで涼しい顔していやがるんだよ……!!」

何人かは元気に喚いている余裕があるみたいだな。
そしてもう何人か、既に息を整えて見定めるように他の受験者を睨んでいる奴もいる。
他の受験者……というか、オレだ。

「……」
「……」

気まずいな……。
そんなに餓鬼が一番だったことが気に食わなかったのか。
カスのくせに生意気だぜ。

「さて、他の受験者はギブアップのようね!!んじゃあ、あんた達に一次試験合格を言い渡すだわさ!!」
「よっしゃぁああ!!」

にわかに盛り上がる男たち。
一次試験でバテバテなくせにこのあと大丈夫なのかオイ。
そして天井から颯爽と現れた二次試験の試験官が現れ、オレ達は次の試験会場に移動するために立ち上がった。
ビスケとスレ違うとき、一瞬鋭い視線を投げ掛けられた。
……なんなんだよ、一体。

「それでは二次試験について説明する!ルールは簡単だ。目隠しした状態でのバトルロイヤル!!自分以外の受験者を戦闘不能にしろ。10人までに削るぜ!!目隠しをつけろ」

配られた布を目に当てて、後頭部できつく縛る。
暗くなった視界、逆に研ぎ澄まされる残りの感覚。

「それでは、始めっ!!」

試験官の掛け声が聞こえたその瞬間、オレは地を蹴り、そして、そして……。


 * * *


「……バカな」

愕然として、試験官が呟いた。
オレは目隠しを外して、少しだけ乱れた髪を整える。
試験が開始されてから、僅か数分。
その場に立っているのは、オレと試験官の2人だけだった。
……いや、もう一人いるのか。

「私の見立て以上だわね……」
「び、ビスケさん!!」
「まさか開始3分で、他の受験生21人を軽々と伸しちゃうなんてね」

着いてきていたらしい。
ビスケは真剣な顔で、気絶した受験者達を観察している。
ビスケさん、と二次試験の試験官が言っていた事から、もしかしたらビスケは、ハンターの中でもそれなりに地位のある人物なのかもしれない。

「全員、きれいに急所を突かれているわね。あんた、何者なのさ?」
「……何者」

何者、と言われても困る。
生まれや育ちは、ごく普通の一般家庭の子供でしかないし。
だからといって、オレの前世のことまで話すつもりは更々ない。

「ちょっと強いだけの子供、じゃあ、ダメか……?」
「……つまり答える気はないってことだわね。今日はそれで許すわ」
「今日は……?」

なんだそれは……、まるでこの先もそれなりに親密な関係を続けていくみたいな……、いやそんなまさか。

「――ビスケさん!!ハンター協会から許可が降りました!!」
「そう。それじゃあ受験番号46番!!あんたは今回のハンター試験に見事合格だわさ!!そしてたった今から、私の弟子としてたっぷりしごいてやるわさ!!わかったわね?」
「は……はあ!?」

というわけで、オレは二次試験でハンター試験を終了し、一人前ハンターになるべくビスケの元で修行を積むことになったのであった。
そんな馬鹿な。
5/30ページ
スキ